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秋になって窓を開けた拍子に、平たい虫が部屋の中へ入ってきた——カーテンや天井にとまったまま動かず、近づくのも触るのもためらってしまう方は多いはずです。とっさに殺虫剤を探しても、売り場には屋内用・屋外用・凍らせるタイプ・吊り下げるタイプが並んでいて、どれを買えばよいのか判断がつきません。
カメムシに使える市販の殺虫剤はありますが、「カメムシ向け」と大きく書かれていれば何でも同じ、というわけではありません。製品には適用害虫と使ってよい場所が表示されていて、そこから外れた使い方は事故につながることが公的な資料でも指摘されています。
この記事では、厚生労働省の手引き、独立行政法人国民生活センターの解説、堺市・京都市・札幌市・千葉市・名古屋市の衛生害虫のページ、農林水産省の省令、石川県の病害虫防除資料を当メディア編集部が読み取り、タイプごとの違いと室内で使うときの注意を整理しました。製品の順位付けや「最強」の比較は行いません。虫の写真も使わず、侵入口と時期は線画の図解だけで示します。


- 01【一言でいうと】カメムシの殺虫剤は「適用害虫」と「使える場所」の表示で選ぶ
- 02カメムシが室内に入ってくる時期と経路|10〜11月に越冬場所を探して飛来する
- 03市販の殺虫剤は何を見て選ぶ?|製品表示の「適用害虫」と「使用場所」
- 04タイプ別の違いと向き不向き|スプレー・凍らせる・屋外散布・吊り下げ・くん煙剤
- 05室内で使うときの注意|換気・火気・食器・ペット・小さな子ども
- 06殺虫剤を使う前にできること|潰さずに捕まえる・すき間をふさぐ
- 07家庭菜園や庭木のカメムシに、家庭用の殺虫剤は使えない
- 08殺虫剤が効かないと感じたときに確認すること
- 09自分でやらないほうがよい場面と相談先|高所・集合住宅の共用部
- 10カメムシの殺虫剤のよくある質問(FAQ)
- 11まとめ
【一言でいうと】カメムシの殺虫剤は「適用害虫」と「使える場所」の表示で選ぶ

カメムシ用として売られている製品は、目的も使ってよい場所もそれぞれ違います。選ぶときに見るのは価格やパッケージの印象ではなく、裏面に書かれた適用害虫にカメムシがあるかどうかと、その製品が屋内用か屋外用かの2点です。
堺市の健康福祉局保健所生活衛生課は、カメムシを見つけた場合の対処として「潰さないようにガムテープや紙を利用して、そっと捕獲するか、即効性のある市販のカメムシ殺虫剤で駆除することをお勧めします」と案内しています。つまり殺虫剤は選択肢のひとつで、捕まえて外に出す方法と並んでいる、という位置づけです。
| タイプ | 主に使う場所 | 何をするための製品か | 買う前に確認すること |
|---|---|---|---|
| 直接噴射するスプレー(エアゾール剤) | 製品の表示による(屋内用/屋外用の別あり) | 目の前にいる個体に噴射する | 適用害虫にカメムシがあるか/室内で使ってよい製品か |
| 殺虫成分を使わない冷却タイプ | 製品の表示による | 冷気で動きを止める | 適用害虫の記載/人やペットに向けない旨の注意 |
| 屋外に散布しておくタイプ(液剤・粉剤) | 外壁・窓まわり・換気口の周囲など屋外 | 飛来した個体を寄せ付けにくくする | 屋外用であること/近隣・ペット・草花への飛散 |
| 吊り下げ・置き型(蒸散剤) | 玄関・軒下など製品の指定する場所 | 成分を蒸散させて寄せ付けにくくする | 適用種にカメムシが含まれるか(別の虫向けの製品が多い) |
| くん煙剤 | 締め切った室内 | 煙・霧を部屋に充満させる | 適用害虫/火災警報器の養生/退避と換気の時間 |
| 農作物用の農薬 | 畑・家庭菜園・果樹 | 作物への被害を防ぐ | 農林水産省の登録があり、育てている作物が適用範囲か |
※剤型の区分は厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課化学物質安全対策室「家庭用不快害虫用殺虫剤 安全確保マニュアル作成の手引き(改訂版)」、屋外散布の考え方は京都市・堺市の公開情報をもとに当メディア編集部が整理したもの(2026年8月時点)。実際の使い方は必ず手元の製品の表示に従ってください。
カメムシが室内に入ってくる時期と経路|10〜11月に越冬場所を探して飛来する
製品を選ぶ前に、なぜ今その虫が家の中にいるのかを押さえておくと、噴射する以外の手当ても見えてきます。カメムシが室内に現れる時期はおおむね決まっています。

秋に飛んでくるのは越冬場所を探しているから
京都市はカメムシについてのページで、「10~11月頃、越冬場所を探して屋内に入り込むこともあり、人目につくところで見かけることが多い身近な昆虫です」と説明しています。札幌市保健福祉局保健所生活環境課のカメムシのページでも、「10月中旬頃、越冬のため屋内へ侵入します。春先になると、越冬を終えて野外に戻ります」と時期が示されています。
相談の多い種のひとつであるクサギカメムシについては、石川県の病害虫防除室がクサギカメムシという資料で、体長は約15ミリメートル、「冬季が寒冷な地域では、越冬のために屋内に侵入し、刺激を感じると強い悪臭を放つ衛生害虫でもあります」と記しています。室内に入ってくるのは餌を求めてではなく、冬を越す場所を探しているからだと考えられています。
名古屋市もカメムシ類(2)のページで、クサギカメムシについて「越冬のため家屋内に集団で侵入すること、刺激を受けると悪臭を放つことから、不快害虫としての問題も大きい」と記しています。マルカメムシについては「成虫で越冬するが、秋に越冬場所を求めて移動するときに、家屋に入ったり、干してある洗濯物や布団に付着して悪臭被害を発生させる」と説明されており、種によって家に入ってくる事情が少しずつ違うことが分かります。
2〜3ミリのすき間から入る|窓・換気扇口・給排気口・洗濯物
京都市の同ページは侵入の流れを「日当たりのよい建物の外壁面に次々に飛来し、隙間を見つけて潜り込む行動を繰り返し、やがて窓の隙間や換気扇口、給排気口などから室内に侵入してきます」と説明し、「洗濯物に付着し、知らずに取り込んでしまうこともあります」と付け加えています。
すき間の大きさについて、堺市はカメムシのページで「カメムシは、2~3ミリメートル程度の隙間があれば屋内に侵入してきますので、網戸や窓の隙間を隙間テープでふさぐとよいでしょう」としています。京都市も同様に3ミリ程度のすき間で入ってくるとしており、網戸を閉めていたのに入られた、という状況は珍しくありません。
においは腹部から出る|刺激すると強い臭気になる
京都市は臭気について「においは腹部から出され、少量では『集合フェロモン』として作用し、多量では危険を知らせて仲間を分散させる『警戒フェロモン』として作用します」と説明したうえで、「カメムシは刺激を受けることで強烈な悪臭を放ちます」としています。堺市も「不意に触れてしまうと、少しの刺激でとても臭い分泌液を出します」と注意を促しています。
千葉市保健福祉局医療衛生部保健所環境衛生課のカメムシのページは、「死んだカメムシに触れても独特の臭いがつくので、素手ではさわらないようにしましょう」と記しています。動かなくなった後も素手で扱わない、という点は覚えておきたいところです。
市販の殺虫剤は何を見て選ぶ?|製品表示の「適用害虫」と「使用場所」

売り場にはカメムシの絵が描かれた製品が何種類も並びますが、絵柄と適用害虫の記載が一致しているとは限りません。ここは公的機関がくり返し注意している論点です。
「不快害虫用」に書かれた虫の名前にカメムシがあるか
厚生労働省 医薬局 医薬品審査管理課化学物質安全対策室がまとめた家庭用不快害虫用殺虫剤 安全確保マニュアル作成の手引き(改訂版)(令和7年3月14日改訂)は、家庭用不快害虫用殺虫剤を「薬機法、農取法の適用対象外製品であって、家庭用に販売される不快害虫防除を目的とした殺虫剤である」と定義しています。そして不快害虫の例示のなかに、ケムシやチャタテムシなどと並んでカメムシが挙げられています。
薬機法や農薬取締法の枠外にある製品だからこそ、判断のよりどころは製品の表示そのものになります。独立行政法人国民生活センターはつり下げタイプの虫よけ、効く虫は?という解説で、「パッケージの説明書をよく読み、適用害虫を確認しましょう」と呼びかけ、家庭用の害虫防除剤には「医薬品・医薬部外品」とそれに当てはまらない雑品扱いのものがあるため、「パッケージを丁寧に読み、製品の範囲や限界を理解して選ぶことが求められます」と述べています。
屋内用と屋外用は別に書かれている
同じブランドでも、室内で使える製品と外壁に散布する製品は別に設計されています。厚生労働省の前掲手引きは、使用及び保管場所に関する検討項目として「トイレ、浴室等の狭い空間で使用される可能性がある」「換気設備や換気口となる窓がない空間で使用される可能性がある」を挙げ、屋外で使う場合は「使用した場所の環境汚染や付近の水系生物に対して影響を及ぼす可能性がある」と整理しています。
屋外用として設計された製品を室内の壁に噴いてしまう、という誤りは実際に起きています。表示に「屋外専用」「室内では使用しない」と書かれていれば、その1行が判断の分かれ目です。
誤使用による事故は、症状が出た割合が高い
前掲の手引きには、公益財団法人日本中毒情報センターが2019年1月1日から2023年12月31日までの5年間に受信した問い合わせのうち、不快害虫用殺虫剤に関する1,906件を解析した結果が載っています。不慮の事故1,890件のうち5歳以下の誤飲等が1,194件(63.2%)、誤使用による事故(対象害虫・使用場所・使用量等の誤り)が478件(25.3%)でした。
このうち誤使用による事故478件では、何らかの症状を認めたのが384件(有症率80.3%)と報告されています。剤型別ではベイト剤1,023件、エアゾール剤659件の順に多く、誤使用による事故ではエアゾール剤が84.5%を占めたとされています。数字が示しているのは、「対象の虫・場所・量を外した使い方」が事故の主要な入口になっているという事実です。
タイプ別の違いと向き不向き|スプレー・凍らせる・屋外散布・吊り下げ・くん煙剤

ここからはタイプごとの性格を見ていきます。順位を付けることはせず、公開されている資料に載っている範囲だけを並べます。どれを選んでも、実際の使い方は手元の製品の表示に従ってください。
直接噴射するスプレー(エアゾール剤)
目の前の1匹に対応するタイプです。厚生労働省の前掲手引きはエアゾール剤の暴露経路を「吸入、皮膚・眼粘膜に接触」とし、留意点として「狭い場所で噴霧される場合があるので、ガスや溶剤の成分の暴露にも注意が必要である」「火気の近く等高温等の過酷条件下で破裂する可能性があることに注意する必要がある」と挙げています。
手軽に見えて、実は室内での扱いに一番気を使うタイプでもあります。窓を閉め切った小さな部屋や、コンロのそばでの使用は避けたい場面です。
殺虫成分を使わない冷却タイプ
凍らせて動きを止めるタイプは、殺虫成分を含まない製品があります。たとえばフマキラー株式会社が公開する凍殺ジェット 300mlの製品ページには、適用害虫として「ムカデ、カメムシ、クモ、ヤスデ、ゲジ、ダンゴムシ、アリ、ガ、ケムシ」が示され、「殺虫剤不使用。殺虫剤を使用していないので、お子様やペットのいるご家庭にもおすすめです」と記載されています。
同ページのよくある質問には、食べ物や食器にかかった場合について「多量にかかると食品が凍ることがあります。大量にかかり食品が凍った場合、味や食感等の品質に影響が出る場合があります」との説明があります。これは当該製品のページに載っている内容であり、冷却タイプ全般に同じことが言えるとは限りません。手元の製品の表示を必ず確認してください。
屋外の壁や窓まわりに散布しておくタイプ
飛来してくる前に手を打つ考え方です。京都市は前掲ページで「忌避性と即効性に優れたピレスロイド剤を用いて飛来する外壁の表面全体に残留散布するとともに、アルミサッシ枠など窓周辺部や換気扇口などに重点的に塗布すると効果的です」としています。
堺市も「殺虫剤の多くはピレスロイド系の殺虫成分が入っていて、カメムシを寄せつけない効果があり、壁に散布や窓周辺部、換気扇口に塗布することで忌避剤としても使用できます」と説明しています。札幌市は時期の観点から「家屋への侵入が始まる前に、大きな穴をふさぎ、窓枠や溝、換気口の周囲などに専用の殺虫剤を散布しておくとよいでしょう」としており、侵入が始まってからでは打ち手が限られることがうかがえます。
吊り下げ・置き型(蒸散剤)
玄関や軒下に吊るすタイプは、厚生労働省の前掲手引きでは蒸散剤(吊り下げ型等)として分類され、暴露経路は「吸入、皮膚・眼粘膜に接触」、留意点は「狭い場所で使用された場合、発生した成分を吸入したり、皮膚や目に接触する可能性がある」とされています。
このタイプで特に注意したいのが適用種です。国民生活センターの前掲解説は、パッケージのイラストからは害虫全般に効きそうに見えても、裏面には「適用種:ユスリカ・チョウバエ」といった限定が書かれている例を挙げています。カメムシの名前がないなら、カメムシ向けの製品ではありません。
くん煙剤
札幌市は前掲ページで、「多数侵入された時は、くん煙剤を利用し、すき間に潜入しているカメムシを室内に追い出して捕まえる方法もあります」と紹介しています。倒すためではなく、隠れている個体を出てこさせて捕まえるための使い方として説明されている点が特徴です。
使用時の準備も見落とせません。住宅用火災警報器のメーカーであるホーチキ株式会社はくん煙殺虫剤を使う時の住宅用火災警報器対応についてというFAQで、「取り付けた状態のまま、警報器内部に煙がはいらないようにビニール袋で警報器全体を覆い、根元を輪ゴムなどで止めます」「くん煙殺虫剤終了後には必ずビニール袋を外し、テストを行ってください」と案内しています。厚生労働省の手引きもくん煙剤について「使用から一定時間経過後に入室することとされているが、発生した成分を吸入したり、皮膚や目に接触する可能性がある」と留意点を挙げています。退避する時間と再入室前の換気は、製品ごとに指定が違うため、必ずその製品の説明書に従ってください。
室内で使うときの注意|換気・火気・食器・ペット・小さな子ども

室内で使うと決めたら、噴射する前の数分が事故を分けます。厚生労働省の前掲手引きが挙げている事故の例は、そのまま準備のチェック項目になります。
使う前に片づけるもの・出すもの
同手引きは、使用中に起こりうる事故として「飲食物、食器、玩具、ペット類、観賞植物等に薬剤がかかった」「子供がそばにいて薬剤がかかった、薬剤に触れた」を挙げています。食卓の上のものやコップ、子どものおもちゃは、噴く前に別の部屋へ移すか覆っておくと安心です。
ペットについては、水槽や鳥かごのように動かせないものをどうするかが問題になります。移動できないなら、その部屋では使わないという選択も含めて考えてください。台所で使うときは、コンロの火を消してからにします。同手引きは「溶剤や噴射剤等可燃性の成分が多く含まれている製品を台所等の火気のある空間で使用すると引火、爆発の可能性がある」と明記しています。
使ったあとの換気と、残った製品の置き場所
同手引きは、記載された使用方法を逸脱した事故の例として「使用量の目安を大幅に超えて使用した」「長時間連続して使用した」「狭く、換気が悪い等密閉度の高い状態にある室内で使用した」を挙げています。噴いた後は窓を開けて空気を入れ替え、しばらくその部屋に留まらないようにします。
保管も同じ資料の守備範囲です。「直射日光があたったり、暖房器具の傍に置かれた場合、高温のために成分が変質したり、エアゾール剤では缶の内圧が上昇し、最悪の場合には容器が破裂する可能性がある」とされています。子どもの手が届かない、日の当たらない場所にしまってください。万一、吸い込んで具合が悪くなった、目や皮膚に入ったといったときは、自分で判断せず医療機関に相談してください。
殺虫剤を使う前にできること|潰さずに捕まえる・すき間をふさぐ

1匹だけなら、噴射せずに外へ出すほうが臭いも薬剤も残りません。行政のページで案内されているのは、刺激を与えずに捕まえる方法です。
見つけたときの手順
1素手で触らない準備をする
千葉市は「死んだカメムシに触れても独特の臭いがつくので、素手ではさわらないようにしましょう」としています。厚手の紙や粘着テープ、使い捨ての手袋を先に用意します。
2潰さないように、そっと覆う
堺市は「潰さないようにガムテープや紙を利用して、そっと捕獲する」ことを案内しています。京都市によれば臭気は刺激を受けたときに強く出るため、追い回さず、動きが止まっているうちに近づきます。
3包んだまま屋外へ運ぶ
札幌市は「ガムテープなどでつぶさないように捕まえ、処分しましょう」としています。包みを開かずにそのまま屋外へ持ち出し、自治体のごみの区分に従って処分します。
4窓と網戸をすぐ閉める
外へ出す動作のあいだに次の個体が入ることがあります。開けた窓は最小限の時間にとどめ、作業が終わったらすぐ閉めます。
5とまっていた場所を確認する
同じ場所に集まる傾向があるとされるため、カーテンの裏やサッシの溝も見ておきます。臭いが残った場合の落とし方については、確かな方法を示した公的な資料が見当たらないため、本記事では断定しません。
入られる前にふさぐ|すき間・網戸・照明
侵入そのものを減らす手当ては、殺虫剤より確実に効いてきます。堺市は「網戸や窓の隙間を隙間テープでふさぐとよいでしょう」とし、あわせて「10~11月は、外干しをやめて室内干しするとカメムシの付着を防ぐ効果があります」と洗濯物についても案内しています。
明かりの見直しも挙げられています。京都市は「建物の入口や窓、集合住宅の廊下などは、消してもよい照明を落とすなどして光量を下げましょう。照明を近紫外線の出ない防虫用ランプに交換したり、近紫外線遮光フィルムを窓に貼ることにより、飛来を抑制できます」と説明しています。堺市も夜間の照明を最低限にし、防虫ランプに交換する方法を紹介しています。網戸に破れやゆがみがあるなら、テープでふさぐより張り替えのほうが早いこともあります。
家庭菜園や庭木のカメムシに、家庭用の殺虫剤は使えない

ここは室内の話と切り分けが必要な部分です。家の中で使っている不快害虫用の殺虫剤を、そのままベランダの野菜や庭の果樹に噴くことはできません。
「野菜に使える」と書かれていない製品を野菜に使わない
厚生労働省の前掲手引きが示すとおり、家庭用不快害虫用殺虫剤は農薬取締法の適用対象外の製品です。一方、農作物に使う薬剤は農薬取締法の登録を受けたものに限られ、使い方も定められています。
農林水産省が公開する農薬を使用する者が遵守すべき基準を定める省令は、食用農作物等に農薬を使用するときの基準として「適用農作物等の範囲に含まれない食用農作物等に当該農薬を使用しないこと」「規則第七条第二項第三号に規定する使用時期以外の時期に当該農薬を使用しないこと」「総使用回数を超えて当該農薬を使用しないこと」などを挙げています。育てている作物の名前がラベルの適用範囲に書かれていなければ、その薬剤はその作物には使えません。
独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)も登録・失効農薬情報のページで、「農薬の使用や防除指導等に際しては、農薬のラベルを必ずご確認ください。」と案内しています。
住宅地で散布するときは飛散を防ぐ
前掲の省令は住宅地等における農薬の使用について、「住宅の用に供する土地及びこれに近接する土地において農薬を使用するときは、農薬が飛散することを防止するために必要な措置を講じるよう努めなければならない」と定めています。隣家の洗濯物や庭、通行する人への配慮が求められる場面です。
なお石川県の前掲資料は、クサギカメムシの被害としてウメ・モモ・ナシ・リンゴ・カキ・カンキツ・ブドウ・豆類・キュウリを挙げ、防除について「飛来性の害虫なので防除可能な時期は、ほ場侵入時に限られます」としています。作物側の対策は、家の中の1匹に対応するのとはまったく別の話だということが分かります。
殺虫剤が効かないと感じたときに確認すること

「買ったのに手応えがない」と感じたとき、原因は製品の力だけとは限りません。まず確かめたいのは次の5点です。効く・効かないを断定できる立場ではないため、当メディアでは確認事項として整理します。
- 適用害虫にカメムシが入っているか(別の虫向けの製品を使っていないか)
- 屋内用か屋外用か(表示された使用場所と、実際に使った場所が合っているか)
- 使用量・噴射する距離・使用回数が製品の表示どおりか
- その製品が「寄せ付けにくくする」ものか「目の前の個体に使う」ものか
- 侵入口が開いたままで、次々に新しい個体が入ってきていないか
国民生活センターは前掲の解説で、家庭用の害虫防除剤について「効果がよく分からないものをムリに選ばない、店員に詳細を尋ねるというのも方法です」と述べています。表示を読んでも判断がつかないときは、売り場で確かめるという道もあります。
もうひとつ見落としやすいのが、そもそもの数の問題です。堺市・京都市が示すように2〜3ミリのすき間から入ってくる相手なので、入口をふさがないまま室内で対処を続けても、状況は変わりにくくなります。
自分でやらないほうがよい場面と相談先|高所・集合住宅の共用部

外壁全体への散布は、脚立や梯子を使う高所の作業になります。無理な姿勢で薬剤を扱うと、転落と吸入の両方のリスクが重なります。手が届く範囲を超えるなら、そこで打ち切るのが安全です。
集合住宅では、ベランダや外廊下、外壁が専有部分ではなく共用部分として扱われていることがあります。管理規約に定めが置かれている場合もあるため、外まわりに薬剤をまく前に管理会社や管理組合に確認してください。個別の物件でどこまで認められるかは、当メディアでは判断できません。
虫そのものについての一般的な相談は、保健所が窓口になっている自治体があります。千葉市の住居衛生相談(害虫、室内環境など)のページには、「保健所では、ゴキブリやダニをはじめとした衛生害虫や室内の化学物質、ダニアレルゲンなどの住居衛生に関する相談を受け付けています」とあります。お住まいの自治体に同様の窓口があるか確認してみてください。
数が多すぎる、天井裏や壁の中から出てくるといった状況で業者に依頼する段になったら、料金の決まり方や見積もりの読み方を先に押さえておくと判断しやすくなります。屋外で接する不快害虫の考え方は、蜘蛛の巣の記事とも重なります。
カメムシの殺虫剤のよくある質問(FAQ)
※本記事は厚生労働省、独立行政法人国民生活センター、農林水産省、独立行政法人農林水産消費安全技術センター、堺市、京都市、札幌市、千葉市、名古屋市、石川県、フマキラー株式会社、ホーチキ株式会社が公開する情報(2026年8月時点)を当メディア編集部が整理したものです。殺虫剤・農薬の適用害虫、使用場所、使用量、使用回数はすべて手元の製品の表示に従ってください。効果は使用条件によって異なり、当メディアは特定の結果を保証するものではありません。体調に異変を感じたときは自己判断せず、医療機関にご相談ください。
まとめ
カメムシの殺虫剤選びは、「どれが強いか」ではなく「その製品の適用害虫にカメムシがあるか」「使ってよい場所が自分の場面と合っているか」の2点から始まります。誤使用による事故は、対象の虫・場所・量を外したところで起きていることが公的な解析でも示されています。
室内で使うなら、食器や玩具を片づけ、火を消し、ペットと子どもを別室へ。1匹だけなら、潰さずに紙やテープで包んで外に出すという選択肢もあります。そして家庭菜園や庭木には、家庭用の不快害虫用殺虫剤ではなく、その作物に登録のある農薬をラベルの範囲で使う——ここが混ざらないようにしてください。
飛来が始まる前に、網戸と窓のすき間をふさぎ、夜の明かりを見直しておくと、来年の秋の負担はかなり変わってきます。手が届かない高所や集合住宅の共用部は無理をせず、管理会社や自治体の窓口、専門の業者に相談してください。