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「終活」という言葉を40代で見かけると、少し身構えると思います。親の世代の話だと思っていたのに、自分の年齢と並べて語られると、急に何かを迫られているような気持ちになります。
ただ、40代でこの言葉に出会うのには、気分の問題ではない理由があります。介護保険の被保険者になるのが40歳からであること、そして2025年4月から、勤務先が40歳前後の従業員に介護と仕事の両立制度を案内するようになったこと。制度の側が、この年代に向けて情報を送り始めているのです。
この記事では、当メディア編集部が厚生労働省・法務省・金融庁・独立行政法人国民生活センターなどの公開資料を調べ、40代という年代に固有の事情に絞って、今やる意味があることと、急がなくていいことを分けて整理しました。エンディングノートの書き方、片付けの手順、相続や保険の個別の判断は扱いません。


【一言でいうと】40代の終活は「人生の締めくくりの準備」より「今の暮らしの棚卸し」から

40代の終活は、お墓や葬儀を決めることではありません。自分に何かあったとき、家族が「どこに何があるか分からない」で止まってしまう部分を、今のうちに分かる状態にしておくこと。ここに絞ると、やることは驚くほど少なくなります。
逆に、50代・60代向けの終活リストをそのまま持ってくると、住宅ローンを返済中で子どもがまだ独立前、という40代の実情とかみ合いません。まず、今やる意味があることと、急がなくていいことを分けておきます。
| 区分 | やること | 40代でこの扱いになる理由 |
|---|---|---|
| 今やる意味がある | スマホ・パソコンとネット上の契約の整理 | 契約数が多い年代で、家族が存在を把握しづらい |
| 今やる意味がある | 口座・保険・ローンの「所在」の一覧化 | 転職・引っ越しのたびに増えた口座や書類が散らばりやすい |
| 今やる意味がある | 親の介護について話すきっかけづくり | 勤務先から介護と仕事の両立制度の案内が届き始める時期 |
| 急がなくていい | 遺言書の作成 | 制度の存在と費用を知っておけば足りる段階 |
| 急がなくていい | お墓・葬儀の具体的な準備 | 家族構成も住む場所も、これから変わりうる |
| 急がなくていい | 本格的な生前整理・断捨離 | 生活が動いている時期は「捨てる」より「分かる」が先 |
※当メディア編集部が公的機関の公開資料をもとに整理したものです(2026年8月時点)。
上の3つに共通しているのは、一度やれば当分は書き換えが要らない、という点です。残高や金額のように毎年変わるものを追いかけ始めると続かないので、40代のうちは「所在」だけを固めます。
40代で「終活」という言葉に出会う理由|制度の側から届く2つの節目

40代で終活の広告や記事が目に入りやすくなるのは、偶然ではありません。公的な制度のほうが、この年齢を節目として扱っているからです。まずそこを知っておくと、必要以上に焦らずに済みます。
40歳から介護保険の第2号被保険者になる
厚生労働省は「介護保険制度について(40歳になられた方(第2号被保険者)向け)」というページで、多言語対応のリーフレットを公開しています。同ページは第2号被保険者を「40歳から64歳までの医療保険加入者」と説明しています。
つまり40代は、介護を「まだ先の話」と感じていても、制度の上ではすでに介護保険を支える側に入っている年代です。給与明細の控除欄が変わったことで初めて意識した、という方も多いと思います。
勤務先から「40歳の年度」に介護と仕事の両立制度の案内が届くようになった
もうひとつが、勤務先からの情報提供です。厚生労働省の介護休業制度特設サイト「法改正のポイント」によると、2025年(令和7年)4月1日から、介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供が事業主の義務になりました。
同ページは情報提供の期間を「労働者が40歳に達する日(誕生日前日)の属する年度(1年間)」と「労働者が40歳に達する日の翌日(誕生日)から1年間」と示しています。内容は、介護休業に関する制度と介護両立支援制度等、その申出先、介護休業給付金に関することの3つで、あわせて介護保険制度について周知することが望ましい、とも書かれています。
社内の研修案内やメールで介護の制度の話が回ってきたなら、それはこの改正によるものかもしれません。読み飛ばさずに保存しておくと、必要になったときに探し直さずに済みます。
それでも「早く始めた人が得をする」とは書かない理由
同じ介護休業制度特設サイトのトップページには、「雇用労働者のうち、55~59歳の10人に1人以上が介護に直面しています」と書かれており、出典として総務省「令和4年就業構造基本調査」が挙げられています。
介護に直面する人が目立って増えるのは、40代よりもう少し先ということです。制度が40歳を節目にしているのは、直面する前に知っておいてもらうためであって、40代のうちに何かを終わらせなければならないという意味ではありません。この記事でも、急がなくていいことは急がなくていい、と書きます。
今やる意味があること① スマホとパソコンの「デジタル終活」

40代で最初に手をつける価値が高いのが、スマホとパソコンまわりです。理由は単純で、スマホでインターネットを使うのが当たり前の世代であり、そこにぶら下がっている契約を家族が把握していないからです。
公的機関に寄せられている困りごとは「手続きができない」こと
独立行政法人国民生活センターは2024年11月20日に今から考えておきたい「デジタル終活」を公表し、消費生活センター等に寄せられた相談事例を紹介しています。挙げられているのは、故人が利用していたネット銀行の手続きをしたくてもスマホが開けず契約先が分からない、コード決済サービス事業者の相続手続きが1カ月以上たっても終わらない、故人が契約したサブスクの請求を止めたいがIDとパスワードが分からない、の3件です。
同ページは相談事例からみる特徴として、故人のスマホやパソコン等のパスワードが分からない場合は第三者がロック解除することは困難であること、ネット上の資産は本人以外が実態を把握することが難しく相続手続きに時間がかかることがあること、サブスクは解約手続きをしない限り請求が続いてしまうことを挙げています。
この話が40代に効く理由も、同じページに書かれています。スマートフォンでインターネットを利用する人は「20〜59歳の各年齢層で約9割」と紹介されており(同ページは出典として総務省の令和5年通信利用動向調査の結果を示しています)、40代はまさにその真ん中にいる世代です。
40代のうちにできる4つのこと
同ページが「デジタル遺品の処理で困らないための事前の対策」として挙げているのは、次の4つです。どれも今日から始められて、一度やれば当分は書き換えが要りません。
- 万が一の際に遺族がスマホやパソコンのロック解除ができるようにしておく
- ネット上の資産やサブスクの契約は、サービス名・ID・パスワードを整理しておく
- エンディングノートの活用も検討する
- 自分自身に何かあったときに備えて、スマホ等のアカウントにアクセスできる人を指名できるサービスを活用する
4つ目にある「アカウントにアクセスできる人を指名できるサービス」は、端末やアカウントの提供事業者が用意している機能を指します。名称も設定場所も事業者によって異なるので、自分が使っている端末やアカウントの設定画面を一度のぞいてみてください。
なお、一覧を作るときは保管場所のほうに気を配ってください。紙に書くなら、家族が見つけられて、来客の目には触れない場所を選ぶ。それだけで扱いはずいぶん変わります。エンディングノートに何を書くか、どこで手に入れるかは、こちらの記事で扱っています。
今やる意味があること② お金まわりは「どこに何があるか」を1枚にする

40代は、就職・転職・引っ越し・結婚といった節目のたびに口座や契約が増えていく時期です。増えること自体は問題ではありませんが、家族が存在を知らないまま置かれている口座や保険は、後から探すのに手間がかかります。
使っていない口座は「無くなる」わけではないが、手間は増える
金融庁の「長い間、お取引のない預金等はありませんか?」のページによると、休眠預金等活用法に基づき、2009年1月1日以降の取引から10年以上その後の取引のない預金等(休眠預金等)は、民間公益活動に活用されます。
同ページは、休眠預金等となった後も引き続き取引のあった金融機関で引き出すことが可能であること、引き出す期限はないこと、通帳などを紛失していても本人確認書類などがあれば引き出せること、預金者が亡くなった場合は所定の手続を経て相続人が引き出せることを、Q&A形式で説明しています。
一方で同ページは、長い間取引がない預金等の引き出しは、そうでないものと比べて時間がかかること、ATMではなく金融機関の窓口などで手続を行う必要があることが想定される、とも書いています。お金が消えるわけではないけれど、手間は確実に増えるということです。40代で価値があるのは、この手間を先に減らしておくことのほうです。
保険は「契約があること」を家族が確かめられるかどうか
生命保険協会は、生命保険契約照会制度として、親族等が死亡した場合または認知判断能力が低下した場合(医師による診断が必要)に、その方が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無を、同会の会員会社である生命保険会社に確認する制度を案内しています。利用料は、調査対象となる親族等1名につきWEB申請6,000円・書面申請7,000円です(2026年8月時点。ただし同協会はシステムの不備によりWEB申請を停止しており、書面申請のみの受付となっています。受付方法や利用料は変わることがあるため、利用前に同協会のページをご確認ください)。
ここで注目したいのは、同協会が申請前に確認することとして「生命保険証券を探す」「生命保険会社から定期的に送付される通知物を探す」「預金通帳の保険料の口座振替履歴等を確認する」を挙げ、まずは家族で調べたうえで申請の要否を検討するよう案内している点です。
裏を返せば、証券と通知物の置き場所を家族が知っていれば、この制度を使う場面そのものが減るということになります。40代でできるのは、そこまでです。
一覧にするときに書かないほうがよいこと
一覧に書くのは「どこに、何があるか」までで十分です。残高や解約返戻金の額まで書き込むと、状況が変わるたびに書き換えが必要になり、たいてい途中で止まります。
暗証番号やパスワードそのものを同じ紙にまとめるのも避けたほうが無難です。金融機関名・支店名・保険会社名と、書類のありかが書いてあれば、家族は窓口までたどり着けます。
住宅ローンを返済中なら、借入先と返済予定表、関係する書類の置き場所を共有しておくだけでも違います。契約の中身をどうするかは、金融機関や専門家と相談して決める話であって、終活として今結論を出すことではありません。
今やる意味があること③ 親のことを話すきっかけとして使う

40代の終活が50代以降と違うのは、「自分の備え」と「親のこと」が同じ時期に重なることです。しかも順番としては、親のほうが先に来る可能性があります。ここで手がかりになるのが、勤務先から届く両立支援制度の案内です。
介護休業は「自分が介護をする休み」ではないと説明されている
厚生労働省の介護休業のページは、介護休業を「対象家族1人につき3回、通算93日まで」休業できる制度とし、休業開始予定日の2週間前までに書面等により事業主へ申し出ると案内しています。対象家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。
同ページは活用のポイントとして、「休業期間中は、自分が介護を行うのではなく、仕事と介護を両立できる体制を整えるための準備期間と捉え、一人で抱え込まずに、制度やサービスを活用しましょう」と記しています。相談先としては、市区町村、地域包括支援センター、ケアマネジャーなどへの相談が挙げられています。
93日は介護そのものをする期間ではなく、体制をつくる期間として説明されている——この位置づけを知っているかどうかで、いざというときの動き方はかなり変わると思います。
スポットで使える介護休暇という制度もある
まとまって休むほどではないけれど、通院の付添いや手続きで半日抜けたい。そういう場面には介護休暇があります。厚生労働省の介護休暇のページによると、対象家族が1人の場合は1年間に5日まで、2人以上の場合は1年間に10日まで取得でき、1日または時間単位で取れます。
同ページには、労働基準法の年次有給休暇とは別に取得させなければならないこと、期間中を有給とするか無給とするかは会社の規定によることも明記されています。また、2025年(令和7年)4月1日から、継続雇用6か月未満の労働者を労使協定で対象外とする要件は廃止されました。
実際の申請方法や上乗せの有無は勤務先の就業規則によって違います。40代のうちに一度だけ社内規程に目を通しておくと、必要になったときに探すところから始めずに済みます。
実家の物の話は、今はしなくてよい
親と話すといっても、いきなり「家の物をどうするか」から入るのは難しいものです。まずは、かかりつけの病院、加入している保険、通帳や印鑑のありかといった「連絡先と所在」から。物の話は、そのあとで構いません。
親自身の終活としての片付けをどう始めるか、生前整理を何からやるかは、順番も考え方も別の話になります。そちらはこの記事では扱わないので、下の記事をご覧ください。
40代では急がなくていいこと|遺言書・お墓・本格的な生前整理

終活の記事を読み進めると、やることが際限なく増えていきます。ただ、40代のうちに手をつけても、その後の生活の変化で作り直しになるものは少なくありません。ここでは「知っておくだけで足りる」ものを整理します。
遺言書は「制度があることを知っておく」で足りる
法務局で自筆の遺言書を預かってもらう自筆証書遺言書保管制度という仕組みがあります。法務省が公開している手数料一覧では、遺言書の保管の申請が一件につき3,900円、遺言書の閲覧の請求がモニターで一回1,400円・原本で一回1,700円、遺言書情報証明書の交付請求が一通1,400円、遺言書保管事実証明書の交付請求が一通800円とされています。保管の申請の撤回および変更の届出については手数料はかかりません(いずれも2026年8月時点)。
費用の桁が分かれば、40代ではひとまず十分だと思います。何をどう書くか、そもそも書く必要があるかは、家族構成や財産の状況によって答えが変わる話です。判断が必要な段階になったら、弁護士・司法書士などの専門家や法務局の窓口へ相談してください。この記事では書き方には踏み込みません。
物を減らす話は、40代では順番が違うことが多い
「終活 40代」で調べると、断捨離やミニマリストという言葉が並びます。ただ、子どもがまだ育っていたり、仕事の道具が多かったりする時期に「減らすこと」を目標にすると、生活のほうが先に窮屈になります。
40代で価値があるのは、減らすことよりも、後から見る人が「これは何か」を判断できる状態にしておくことです。書類は種類ごとにまとめる、思い出の品は1か所に集める。この程度でも、後から向き合う人の負担はかなり変わります。
物との付き合い方そのものを考えたい方、生前整理と遺品整理の違いを整理したい方は、こちらもあわせてどうぞ。
独身・おひとりさまの40代が引っかかりやすいところ
独身の方や、子どもがいない方から多いのが「手続きをする人が思い浮かばない」という引っかかりです。これは終活のテクニックで解ける話ではなく、制度と窓口の話になります。
今の時点でできるのは、緊急時の連絡先を1人決めて本人に伝えておくこと、契約と書類の所在を紙1枚にまとめておくこと、そして判断が要る段階になったら自治体の福祉の相談窓口や弁護士会・司法書士会などの専門家の窓口に相談すること。40代でここまでできていれば、まず足ります。
40代の終活のよくある質問(FAQ)
※本記事は公的機関等が公開している制度の一般的な説明をまとめたもので、個別の法律・税務・保険の判断を示すものではありません。手数料・利用料・制度の内容は2026年8月時点の公開情報にもとづくもので、改定される場合があります。ご自身のケースについては、各制度の窓口や弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
まとめ
40代で終活という言葉に出会うのは、介護保険の第2号被保険者になる年齢であり、勤務先から介護と仕事の両立制度の情報提供が届く年度でもあるからです。制度が節目として扱っているだけで、今すぐ人生の締めくくりを準備しろという意味ではありません。
この年代でやる意味があるのは3つでした。スマホとパソコンのロックと契約の整理、口座・保険・ローンの所在を1枚にまとめること、そして親と連絡先や書類の場所を話すきっかけをつくること。いずれも一度やれば当分は書き換えが要らず、金額のように毎年変わるものを追いかけずに済みます。
遺言書もお墓も、本格的な生前整理も、40代では「制度と費用の桁を知っておく」で十分です。手を動かす段階になったら、専門家や自治体の窓口という頼れる先があります。焦らず、書き換えの要らないところから始めてください。