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お骨を分けて、一部を自宅に置きたい。実家の墓と嫁ぎ先の墓、両方に納めたい。あるいは、お寺から本山への納骨をすすめられた。理由はさまざまでも、「分骨」で検索した人がまず突き当たるのは、書類の話です。分骨証明書という名前は出てくるのに、どこでもらうのか、いくらかかるのか、もう納骨してしまった遺骨でも間に合うのかが、調べるほど食い違って見えてきます。
先にお伝えします。分骨で必要になる書類は1種類で、それをどこがくれるかは「いつ分けるか」だけで決まります。火葬の当日なら火葬場、納骨のあとなら墓地・納骨堂の管理者です。この2つの線引きは、墓地、埋葬等に関する法律の施行規則第五条がそのまま定めています。火葬は済んだがまだ納骨していない場合の窓口は条文になく、市区町村ごとの運用です。
この記事では、①法律は分骨を何と書いているのか ②分骨証明書はどこでもらうのか ③すでに納骨した遺骨を分けるとき改葬許可証が要るのか ④費用はいくらか ⑤手元供養だけなら書類は要るのか ⑥「分骨は良くない」に裏づけはあるのか ⑦後から分骨したい・戻したいときの相談先、を順に確かめます。e-Gov法令検索の条文、公益社団法人全日本墓園協会が公開している厚労科研費研究のFAQ、横浜市・千葉市・広島市など9市の案内、そして大谷本廟・東本願寺・永平寺という3つの本山の公開情報を、当メディア編集部が一つずつ調べて整理しました(※2026年8月時点)。
なお、この記事は法的な助言ではありません。分骨の作法は宗派や地域によって違い、編集部が「正しいやり方」を決められる話ではないため、どの機関がどう書いているかを示すところまでにとどめます。


【一言でいうと】分骨に要るのは「分骨証明書」1枚。改葬許可はいらないのか?
先に結論だけまとめます。分骨で用意するのは、分けた焼骨がどこの誰のものかを証明する書類が1枚だけで、市役所の許可を取り直す手続きではありません。これは、遺骨をまるごと別の墓に移す「改葬」とは別の扱いです。広島市は「墓地への納骨や改葬、分骨の手続き」の分骨の項で、すでに納骨されている遺骨を分ける場合について「本骨を移動させない限り、改葬の手続きは必要ありません。」と明記しています。
迷いやすいのは、書類をくれる相手が場面ごとに変わることです。火葬の当日に分けるなら火葬場(斎場)、すでにお墓や納骨堂に納めてあるなら、そこの管理者です。市営霊園なら市の窓口、寺院墓地なら寺院、民営霊園ならその管理事務所に頼むことになります。

| あなたのケース | 頼む先 | 受け取る書類の名前 | 手数料の実例 | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| これから火葬する(当日に分ける) | 火葬場(斎場)の受付 | 分骨証明書 | 横浜市=1枚300円/千葉市=分骨ごとに300円 | 当日申し出・金額=横浜市「斎場関係様式ダウンロード」注意事項/千葉市=「改葬(お墓の引越)、分骨について」2.分骨の項 |
| 火葬は済んだが、まだ納骨していない ※施行規則に定めはなく市区町村により異なる |
火葬した火葬場のある市区町村 | 分骨証明書 | 福井市=300円/佐世保市=1通300円 | 窓口の考え方・金額=福井市「分骨証明」/佐世保市「火葬証明書・分骨証明書・改葬許可証」2.の項 |
| すでにお墓・納骨堂に納めてある | その墓地・納骨堂の管理者 | 分骨証明書、または埋蔵証明書・収蔵証明書 | 千葉市営霊園=1件300円 | 書類名=広島市「墓地への納骨や改葬、分骨の手続き」分骨の手続きについて/金額=千葉市(同上) |
| 遺骨をまるごと別の墓へ移す(分骨ではない) | 今の墓地がある市区町村 | 改葬許可証 | 佐世保市=発行手数料はかからない | 改葬の定義・手数料=佐世保市(同上)3.の項 |
| 分けた遺骨を自宅に置くだけ | 納め先がないため提出先も生じない | 今回確認した資料に、自宅保管そのものに書類を求める記載なし | 今回確認した資料に記載なし | 条文の適用範囲=e-Gov法令検索 墓地、埋葬等に関する法律施行規則 第五条第二項(本文で詳述) |
表の「出典」欄は、その行のどの値をどの機関が書いているかを分けて示しています。手数料はいずれも各市の公開ページに記載された金額で、税の区分についてはどのページにも記載がありませんでした(※2026年8月時点)。金額と取り扱いは市区町村ごとに違うので、最後は自分の地域の窓口で確かめてください。
法律は分骨について何と書いているのか?

分骨の説明でよく見かけるのが「分骨証明書は法律で決まっている」という書き方です。ここは条文を直接見ておく価値があります。e-Gov法令検索で墓地、埋葬等に関する法律の本文を全文で検索すると、法律本体には「分骨」という語が一度も出てきません。出てくるのは、その下の墓地、埋葬等に関する法律施行規則のほうで、第五条に2回だけ登場します。
第五条第一項は、こう定めています。「墓地等の管理者は、他の墓地等に焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者の請求があつたときは、その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類を、これに交付しなければならない。」続く第二項は「焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者は、墓地等の管理者に、前項に規定する書類を提出しなければならない。」です。管理者には交付する義務があり、分ける側にはそれを納め先に出す義務がある、という一往復の関係になっています。
条文が求めているのは「証明書」ではなく「事実を証する書類」
ここで気づくのは名前です。条文の言い方は「その焼骨の埋蔵又は収蔵の事実を証する書類」であって、「分骨証明書」という言葉は、法律にも施行規則にも一度も出てきません。つまり、分骨証明書というのは現場で定着した呼び名のほうで、法令上の正式名称ではありません。
この点は、公益社団法人全日本墓園協会が公開している平成28年度厚労科研費研究の「墓地の経営・管理に関するFAQ」4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題のQ5が、はっきり書いています。分骨の手続きは施行規則に規定があるとしたうえで「必要な書類の様式は定められておりませんので、墓地等の管理者は、任意に、分骨すべき焼骨は、確かに当該墓地にあるという事実を証する書面を発行することが一般的です。」とし、この書類を分骨証明書または埋蔵証明書と称している、と説明しています。
だから、市によって書類の呼び名が違って見えます。横手市は申請書の名前を埋蔵証明・火葬証明申請書とし、千葉市は市営霊園から分けるときの書類を埋蔵・埋葬証明書と呼んでいます。広島市に至っては、分骨証明書または分骨であることを証する埋蔵証明書もしくは収蔵証明書、と3通りの言い方を並べています。名前が違っても、条文が求めている中身は同じ「そこにその焼骨があった事実の証明」です。窓口で「分骨証明書はありますか」と聞いて話が通じないときは、この言い換えを持ち出すと早く進みます。
火葬場でもらう場合は、条文の読み替えで説明されている
火葬の当日に分けるケースは、第五条第三項が受け持ちます。同項は「前二項の規定は、火葬場の管理者について準用する。」と定め、第一項の他の墓地等を墓地等に、埋蔵又は収蔵を火葬に読み替えると書いています。要するに、墓地の管理者について書いたルールを、火葬場にも当てはめる、という組み立てです。
もう一つ、頭の隅に置いておきたい条文があります。同法第四条第一項の「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」です。分けた遺骨をどこに納めるかを考えるときの外枠になります。庭に埋めるといった扱いは、この条文の外側に出てしまいます。納め先を決めてから分ける、という順番が結局は安全です。改葬(墓の引っ越し)の手続きと費用は、別の記事で流れを追っています。
分骨証明書はどこでもらう?火葬のときと、納骨のあとで窓口が変わる

実務の分かれ目を、いちばん短く言い切っているのが福井市です。「分骨証明」のページは「納骨をする前の焼骨を分骨する場合には、火葬した火葬場のある市区町村で発行します。納骨をした後に分骨をする場合は、現在埋蔵している墓地等の管理者にお問い合わせください。」と書いています。納骨したかどうかが、そのまま窓口の分かれ目です。
市区町村が出せる範囲にも線があります。佐世保市の「火葬証明書・分骨証明書・改葬許可証」は、市の火葬場で火葬したときと市民霊園に納骨してある遺骨の場合のみ交付できるとしたうえで、「市民霊園以外の墓地や納骨堂などに納骨をした後に分骨をする場合には、現在埋蔵している墓地や納骨堂などの管理者が発行します。」と案内しています。寺院墓地や民営霊園に納めてあるなら、役所ではなくそちらが相手だ、ということです。
1いつ分けるかを決める
火葬の当日か、火葬後で納骨前か、すでに納骨済みか。この3つのどれに当たるかで、次に連絡する先が決まります。横手市の「分骨の手続き方法」はこの3ケースをそのまま並べて窓口を書き分けており、市営墓園に納骨済みなら墓園所在地を管轄する窓口、火葬時に決まっているなら死亡届・火葬許可申請のときに一緒に申請、としています。
2分ける数だけ、入れ物を先に用意する
広島市は分骨の案内のなかで、火葬の際に申し出るよう書いたうえで「(分骨用の骨壷や骨袋等を準備してください。)」と添えています。入れ物は自分で持ち込む前提です。分ける数が決まっていないと申請の枚数も決まらないので、ここを先に決めます。
3申請書と、故人を特定できる書類をそろえる
福井市は、分骨証明申請書のほかに、死体(死胎)埋・火葬許可証またはその交付済証明書の写し、本人確認書類の写し、手数料300円を挙げています。加えて、火葬許可の申請者と分骨証明の申請者が違う場合は、続柄が分かる戸籍謄本の写しが必要だとしています。伊達市の「分骨証明書について」は、申請書・許可証の写し・斎場利用許可証の写しを挙げ、申請者と分骨埋蔵場所使用者(遺骨所有者)が異なる場合には同意書が必要だとしています(伊達市斎場で分骨する場合は不要)。
4交付までの日数を見込む
その場で受け取れるとは限りません。福井市は、窓口で申請した場合でも交付は後日郵送になると明記しています。伊達市は交付まで3日程度(閉庁日を除く)、玉野市の「分骨するとき」は証明書の発行に約1週間かかるとしています。法要の日程が決まっているなら、逆算して動くのが安全です。
5納め先に書類を提出する
施行規則第五条第二項が求めているのは、この提出です。新潟市の「改葬・分骨の手続きについて」も、火葬時なら火葬場へ事前申告して分骨用の証明を発行してもらい、納骨済みなら埋蔵先から埋蔵証明書を受け取る、という流れで案内しています。受け取った書類は、分けた遺骨と一緒に納め先へ渡します。
分骨する遺骨が2か所以上に分かれるなら、書類も分ける先の数だけ必要になります。千葉市が手数料を分骨ごとに300円と書いているのは、そういう意味です(※2026年8月時点)。
すでにお墓に納めた遺骨を分けるとき、改葬許可証はいるのか?

ここが、ネット上の説明でもっとも割れているところです。「一度お墓に納めた遺骨を取り出して分けるなら、先に改葬許可証を取る必要がある」という書き方をよく見かけます。ところが、自治体の公式ページに当たると、そう書いている市が見当たりませんでした。むしろ、複数の市が逆の整理を示しています。
広島市の「墓地への納骨や改葬、分骨の手続き」の分骨の手続きについての項は、すでに納められている遺骨を分骨する場合の手順を書いたあとに、括弧書きでこう添えています。「本骨を移動させない限り、改葬の手続きは必要ありません。」本骨、つまり大部分が今の墓に残るなら、それは墓の引っ越しではない、という整理です。
同じ線を、ほかの市も引いています。千葉市の「改葬(お墓の引越)、分骨について」は改葬を「お墓からお骨を分けずに別のお墓に移すこと」と定義し、佐世保市は「現在の墓地等から他の墓地等へ埋葬・火葬骨のすべてを移すことを改葬といいます。」としています。「分けずに」「すべてを」という言い方で、分骨を改葬の外に置いているわけです。法律の側もこれと矛盾しません。墓地、埋葬等に関する法律第二条第三項は改葬を「埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すこと」と定義しています。
ただし、取り出す作業そのものは管理者の了解が要る
手続きが要らない=勝手にやってよい、ではありません。全日本墓園協会のFAQ4.のQ5は、改葬について「場所的な移動を伴う概念とされております」と述べ、同一墓地内の別区画に移す場合でも改葬に当たるとしています。カロート(納骨室)を開ける作業は墓地の管理規則に沿って行うものですし、墓石を動かすなら石材店の手配も要ります。順番としては、市役所より先に、今の墓地の管理者に連絡するほうが話が早く進みます。
また、分骨した遺骨をさらに別の墓へ移す段になると、話は改葬に戻ります。広島市は「すでに、墓地や納骨堂に納められている分骨を他の墓地や納骨堂に移す場合は、現在分骨が納められている墓地又は納骨堂の管理者が交付する「埋蔵証明証」又は「収蔵証明書」が必要になります。」と続けています。分けた先での扱いまで見ておくと、あとで二度手間になりません。遺骨をどう扱うかの選択肢全体は、別の記事で並べています。
分骨にかかる費用はいくら?

費用は、大きく2つに分かれます。書類そのものの手数料と、分けた遺骨の納め先に納める額です。書類の手数料は、調べた5市とも300円でした。横浜市は「斎場関係様式ダウンロード」のページで「1枚につき300円の発行手数料がかかります」と書いており、千葉市・福井市・佐世保市・伊達市も同じ水準です。一方、納め先の額はけた違いに大きく、そちらが実質的な費用になります。
| 項目 | 金額 | 条件・注記 | 出典(公開ページ) |
|---|---|---|---|
| 分骨証明書の発行手数料 | 1枚300円 | 火葬当日の収骨時までに分骨した人に発行 | 横浜市「斎場関係様式ダウンロード」注意事項 |
| 分骨証明書の発行手数料 | 分骨ごとに300円 | 千葉市斎場で火葬する場合。事前に斎場へ申し出る | 千葉市「改葬(お墓の引越)、分骨について」2.分骨 |
| 埋蔵・埋葬証明書の交付 | 1件300円 | 千葉市の市営霊園に納骨済みの遺骨を分ける場合。墓地使用者以外の申請は承諾書が必要 | 千葉市(同上) |
| 分骨証明の手数料 | 300円 | 福井市の火葬場で火葬した納骨前の焼骨が対象。窓口申請でも交付は後日郵送 | 福井市「分骨証明」申請に必要なもの |
| 分骨証明書の発行手数料 | 1通300円 | 佐世保市の火葬場での火葬時、または市民霊園に納骨中の遺骨 | 佐世保市「火葬証明書・分骨証明書・改葬許可証」2. |
| 分骨証明書の交付手数料 | 300円 | 伊達市。交付まで3日程度(閉庁日を除く)の見込み | 伊達市「分骨証明書について」 |
| 火葬証明書の交付手数料 | 350円 | 広島市。分骨証明書ではなく、火葬許可証を紛失した場合の代用書類 | 広島市「墓地への納骨や改葬、分骨の手続き」 |
| 改葬許可証の発行手数料 | かからない | 佐世保市。遺骨のすべてを移す場合の書類 | 佐世保市(同上)3. |
| 分骨用の骨壷・骨袋 | 今回確認した資料に金額の記載なし | 広島市は火葬時に分骨する人へ、骨壷や骨袋等を準備するよう案内している | 広島市(同上)分骨の手続きについて |
| 本山納骨の懇志(大本山永平寺) | 一霊につき四万円以上 | 祠堂殿法要での納骨。分骨のみの受け付け。恩金目安は令和7年1月1日より改定と記載 | 大本山永平寺「永平寺の法要のご案内(納骨・供養)」恩金目安 |
| 本山納骨の懇志(大谷本廟・祖壇納骨) | 小型容器で納骨・一座経3万円以上/納骨・永代経6万円以上 | 小型容器より大きい場合は5万円以上/8万円以上。改葬の場合は大きい場合の扱い | 大谷本廟「祖壇納骨」納骨懇志 |
| 本山納骨の懇志(東本願寺) | 真宗本廟収骨12万円以上/大谷祖廟2万円以上 | 真宗本廟で遺骨の一部を納め、残りを大谷祖廟へ納める方法も案内されている | 真宗大谷派(東本願寺)「納骨する(収骨・納骨)」よくあるご質問 |
| 墓石・カロートの開閉作業費、閉眼供養のお布施 | 今回確認した資料に記載なし | 納骨済みの遺骨を分ける場合に生じうる費用。今回確認した17件の公開資料に金額の記載がなかった | ― |
表のどの金額にも、出典ページに税の区分(税込・税抜)の記載がありませんでした。そのため税表記なしのまま転記しています。金額はいずれも執筆時点で各公開ページに掲載されていたもので、改定されることがあります(※2026年8月時点)。骨壷そのもののサイズや、空になった骨壷をどうするかは、別の記事でまとめています。
手元供養で自宅に置くだけなら、分骨証明書はいらないのか?

小さな骨壷に入れて仏壇のそばに置く、いわゆる手元供養を選ぶ人が増えています。この場合に書類が要るのかは、条文の主語を読むとある程度まで見えてきます。施行規則第五条第二項が書類の提出を求めている相手は「焼骨の分骨を埋蔵し、又はその収蔵を委託しようとする者」です。墓に埋蔵する人、納骨堂に預ける人が名指しされていて、自宅に置く人は文言の上では出てきません。
自治体の書きぶりも、それと矛盾しない範囲に収まっています。千葉市は分骨そのものを「焼骨の一部を別のお墓に埋蔵したり手元供養したりするため分けること」と定義し、手元供養を分骨の一形態として扱ったうえで、証明書をもらう場面としては火葬時と市営霊園からの分骨の2つを挙げています。ただし、自宅保管には書類が不要だと明記した記載は、今回確認した9市のページのいずれにも見当たりませんでした。不要だと確認できたのではなく、その場面についての記述がなかった、という意味です。
納め先が墓や納骨堂でないときは、そもそも許可証が出ない
関連して、全日本墓園協会のFAQ4.埋蔵・分骨・改葬などを中心とした問題のQ5には踏み込んだ記述があります。自宅に安置したい、あるいは散骨したいという理由で今の墳墓から焼骨を取り出すケースについて「墓埋法が想定していない焼骨の持ち出しになりますので、改葬に該当しない行為になります。」とし、続けて「したがって改葬先が、墳墓、納骨堂以外の場合は、改葬許可証を交付することはできません。」と書いています。行き先が家である以上、改葬許可証という枠には入らない、ということです。
実務で気をつけたいのは、そのあとです。同協会は同FAQ 10.墓埋法に係わるその他の問題のQ1で「改葬を目的としない焼骨の持ち出し」について、記録も手続きもないまま取り出しを認めると後々トラブルになりうるとして、霊園によっては遺骨引取申請書を提出させ、遺骨引渡証明書を発行して持ち帰りを認めている例を挙げています。書類の名前が違うだけで、いつ・誰が・どこから持ち出したかを残す発想は同じです。
そしてもう一つ。手元供養をいつまで続けられるかは、その時点では決まりません。将来、その遺骨をどこかの墓や納骨堂に納めることになれば、そのときには第五条第二項が言う提出が必要になります。あとから同じ書類をもらい直せるかどうかは市によって違うので(次の章で触れます)、分けた時点で1枚もらっておくと、選択肢が減りません。ここは条文の当てはまりを編集部が断定できる範囲を超えるため、実際の判断はお住まいの市区町村の担当窓口や、納め先の管理者にご確認ください。散骨を考える場合の費用と法的な整理は、別の記事に分けています。
「分骨は良くない・成仏できない」に、資料の裏づけはあるのか?

検索候補には「分骨 良くない」「分骨 縁起が悪い」「分骨 ダメな理由」が並びます。親族の反対にあって手が止まる人も少なくありません。そこで、この記事で引用している資料をすべて全文検索してみました。法令2件と、公的機関・自治体・本山の資料15件、合わせて17件のどこにも、「成仏」「縁起」「迷信」という語自体がありませんでした。分骨を戒める記述も、勧める記述も、行政の資料には出てきません。
検索したのは、墓地、埋葬等に関する法律と同施行規則、全日本墓園協会のFAQ2ページ、横浜市・千葉市・広島市・福井市・佐世保市・伊達市・玉野市・横手市・新潟市の案内、大谷本廟の2ページ、東本願寺、永平寺の各ページです。これらは手続きと費用を書いた資料なので、宗教的な良し悪しに触れていないのは当然とも言えます。行政の資料に載っていないことは、「そう決まっている」の根拠にも、「迷信だ」の根拠にもなりません。
本山側の案内は、分骨を前提に組まれている
むしろ手がかりになるのは、実際に遺骨を受け入れている本山の書きぶりです。曹洞宗大本山永平寺の「永平寺の法要のご案内(納骨・供養)」は、祠堂殿法要の恩金目安として「ご納骨は、一霊につき 四万円以上、(分骨のみの受け付け)となります。」と書いています。全部を納めることは受け付けず、分骨だけを受け付ける、という案内です。あわせて、納めた骨は寂光苑納骨堂で合祀されるため返せないとも記されています。
浄土真宗本願寺派の大谷本廟「祖壇納骨」のページは、祖壇について「親鸞聖人のご遺徳を慕い、お側にありたいとの願いから、年間約12,000件もの納骨が行われ」ていると記し、必要書類の欄を「ご遺骨の一部をご納骨される方」「ご遺骨の全てをご納骨される方」「他の墓所から改葬をされる方」の3つに分けています。一部を納めることが、最初から選択肢の一つとして立っています。
真宗大谷派(東本願寺)の「納骨する(収骨・納骨)」も、真宗本廟収骨と大谷祖廟納骨の両方に納められるかという問いに「可能です。真宗本廟で7cm四方の桐箱にご遺骨の一部をお収めし、残りのご遺骨を大谷祖廟へお納めされる方もおられます。」と答えています。3つの本山がそろって、遺骨を分けて納める前提の案内を出しています。
とはいえ、これで「分骨は問題ない」と編集部が言い切れるわけではありません。作法は宗派によって違い、同じ宗派でも地域や寺院で扱いが分かれます。上に挙げたのは、あくまでその3か所がそう案内している、という事実です。ご自身の家の考え方については、菩提寺や所属寺にお尋ねください。分けた遺骨の納め先として永代供養を検討する場合の考え方は、別の記事で整理しています。
後から分骨したい・分けた遺骨を戻したいときは、どこに相談するのか?

「火葬のときに言い忘れた」という相談は多いのですが、ここで市によって扱いが真っ二つに分かれます。横浜市は、後から出すことはできないと明記しています。「斎場関係様式ダウンロード」の注意事項は「分骨をご希望の場合は、火葬当日の収骨時までに限り可能です」としたうえで、「なお、火葬当日に分骨をされなかった場合は、後日、斎場にて分骨証明書の発行を行うことはできません、ご承知おきください。」と書いています。
一方で、福井市は納骨前の焼骨について市区町村が発行すると案内し、伊達市は火葬後に自宅で保管している遺骨を納骨するときの分骨についても交付するとしています。玉野市も、自宅保管の遺骨を納骨するときの分骨を交付できるケースに挙げています。同じ「火葬後に分けたい」でも、住んでいる市によって答えが変わるということです。まずは火葬した斎場を持つ市区町村に電話して、自分のケースが出せる側かを確かめてください(※2026年8月時点)。
納め先が求める書類を、分ける前に確かめておく
書類は、もらう側だけでなく受け取る側の条件もあります。ここは同じ本山の中でも書きぶりが違っていました。大谷本廟の「祖壇納骨」ページの必要書類欄では、遺骨の一部を納める人に求められているのは納骨届のみで、全部を納める人には火葬許可証、改葬の人には改葬許可証が併記されています。ところが同じサイトの「よくあるご質問」の必要書類についての項は、お骨を証明する書類とは何かという問いに「火葬許可証・分骨証明書・改葬許可証のいずれかです。」と答えています。どちらが自分のケースに当たるかは、ページを読み比べても決まりません。納め先に直接確認するのが確実です。
分けた遺骨を元に戻したい、という相談もあります。全日本墓園協会のFAQ 10.の項は、埋蔵した焼骨の持ち出しについて、何の記録も手続きもないまま認めることが後日のトラブルにつながるとして、霊園によっては遺骨引取申請書と遺骨引渡証明書でやり取りを残している例を挙げています。戻す側も受ける側も管理者ですから、まず今の管理者に相談する、という順番は変わりません。
そして、分骨の話が出るときは、たいてい墓じまいや実家の片づけが同時に動いています。遺品整理を業者に頼むなら、不用品を運び出す一般廃棄物収集運搬業の許可(市区町村ごとに出るもの)と、買い取りを伴う場合の古物商許可を、見積もりの前に確認してください。許可の有無が確かめられない相手に任せると、処分先が不透明なまま運ばれてしまいます。複数社の見積もりを比べたい場合は、下記のような比較サービスから条件を確かめる方法があります。
分骨についてよくある質問(FAQ)
※この記事は、e-Gov法令検索で確認できる墓地、埋葬等に関する法律および同施行規則の条文と、公益社団法人全日本墓園協会が公開する厚労科研費研究のFAQ、横浜市・千葉市・広島市・福井市・佐世保市・伊達市・玉野市・横手市・新潟市の案内、大谷本廟・東本願寺・大本山永平寺の公開情報をもとに、2026年8月時点で編集部が整理したものです。法令の解釈や個別の事案についての助言ではありません。分骨の作法は宗派・地域・寺院によって異なるため、正しい作法を示すものでもありません。手数料や懇志の額、交付の可否は市区町村・納め先ごとに異なり、変更されることがあります。実際の手続きは、お住まいの市区町村の担当窓口、今の墓地・納骨堂の管理者、菩提寺にご確認ください。
まとめ|分骨は「どの時点で分けるか」で窓口が決まる
順番をもう一度たどると、①火葬当日か、納骨前か、納骨後かを決める ②その時点に応じて、火葬場か墓地・納骨堂の管理者に書類を頼む ③分ける数だけ入れ物と書類を用意する ④交付までの日数を見込む ⑤納め先に書類を提出する、の5つです。書類の手数料は、調べた5市とも300円でした。
法律の面では、墓地、埋葬等に関する法律の本体に「分骨」の語はなく、同施行規則の第五条が「事実を証する書類」の交付と提出を定めているだけです。分骨証明書という名前も、決められた様式も、法令には存在しません。そして広島市が書いているとおり、本骨を移動させない限り改葬の手続きは必要ありません。ネット上で割れて見える説明の多くは、この線引きを混ぜてしまったところから来ています(※2026年8月時点)。迷ったときは、条文ではなく、今の遺骨を預かっている管理者に最初の電話をかけてください。