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四十九日を終えたあと、あるいは実家の片付けを始めたときに、仏間や押し入れから出てきた遺影の前で手が止まってしまう——そんな声は少なくありません。故人の顔がこちらを見ている写真を、ごみ袋に入れてよいものかどうか。決まりが分からないまま、何年も押し入れに置いたままになっている、というご家庭もあります。
この記事では、遺影とはどういうものか、いつまで飾るものとされているのかを整理したうえで、①自分で自治体のごみに出す ②お焚き上げ・供養に出す ③葬儀社や仏具店に相談する ④遺品整理・不用品回収業者にまとめて頼むという4つの方法を、費用と手間の違いで比べられるようにまとめました。
特に迷いやすいのが、額縁のガラスと木枠、写真本体をどう分けるかという分別の部分です。ここは自治体によってルールが本当に違うため、名古屋市・世田谷区・大阪市の公式ページの記載を並べて確認できるようにしています。当メディア編集部が、各自治体と環境省の公式ページ、お焚き上げを受け付けている寺院の公式ページ、国民生活センターの公表資料を調査してまとめました(2026年8月時点)。


遺影の処分方法4つの比較早見表
遺影を手放す方法は、大きく4つに分けられます。「気持ちの区切りをどうつけたいか」と「他にも片付けたい遺品があるか」の2点で選ぶと迷いにくくなります。まずは全体像を確認してください。

| 方法 | 費用の目安(2026年8月時点) | 手間 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ①自分で自治体のごみに出す | 30センチ角以下なら通常の家庭ごみの範囲。粗大ごみになると手数料(名古屋市は250円・500円・1000円・1500円のいずれか) | 額縁を分解して素材ごとに分ける | 費用をかけず、自分の手で見送りたい人 |
| ②お焚き上げ・供養に出す | 寺社・サービスごとに設定が異なる(名古屋市の妙行寺は写真・手紙など1,000円〜) | 持ち込みか郵送。事前の電話予約が要る場合あり | そのまま捨てることに抵抗がある人 |
| ③葬儀社・仏具店・写真店に相談する | 相談は無料の会社が多い。引き取りや額装の作り替えは有料 | 電話・来店で相談する | 葬儀を頼んだ会社があり、窓口が分からない人 |
| ④遺品整理・不用品回収業者に頼む | 作業の範囲と量で変わるため、複数社の見積もりで比べる | 見積もり依頼と作業日の立ち会い | 実家に遺品がまとめて残っている人 |
※粗大ごみ手数料は各自治体が公表している額をそのまま記載しています(税の区分は示されていません)。寺社の供養料・初穂料は、公表ページに税込・税別の表記がないためそのまま転記しました。いずれも2026年8月時点の公表内容です。
①は費用がほとんどかからない一方で、額縁を自分で分解する作業が必要です。②は気持ちの面での納得感が得やすく、③は葬儀を担当した会社に聞けるという安心感があります。④は遺影1点だけだと割高になりやすいので、他の遺品とまとめて依頼できるときに向いている方法だと考えてください。
【一言でいうと】遺影とは?いつまで飾るものなのか

遺影とは、葬儀の祭壇に飾ったり、その後も自宅で故人をしのぶために飾ったりする、故人の姿を写した写真のことです。四つ切りやA4程度に引き伸ばし、木製や樹脂製の額縁に入れて、黒や淡い色のリボンを添える形が広く見られます。近年はモニターに映す形式や、リビングに置きやすい小さめのサイズを選ぶ方も増えています。
飾る期間について、葬儀を手がける株式会社公益社は公式サイトの解説で、四十九日までは仏壇の近くに後飾りの棚を設置してその上に遺影を飾り、四十九日の後は仏間や床の間などに飾るのが一般的だと説明しています。あわせて「特に宗教的な意味はないため、取り扱いに関してあまり神経質に考えなくてもよいでしょう」とも記しています。
つまり「何年で処分する」という全国共通の決まりがあるわけではありません。実際には四十九日・一周忌・三回忌といった法要の区切りや、仏壇じまい・実家じまいのタイミングで手放す方が多くみられます。ただし考え方は宗派や地域、ご家庭によって異なりますので、気になる場合は菩提寺やお近くの寺社にたずねてみてください。
方法①自分で自治体のごみに出す|フレーム(額縁)とガラス・写真の分け方

遺影を自分で手放す場合、「額縁(フレーム)」「ガラスまたはアクリル板」「写真本体」「リボン・金具」の4つに分けてから、それぞれの区分で出すのが基本の考え方です。一体のまま出すと収集してもらえないことがあり、割れたガラスは収集作業員のけがにもつながります。
フレーム(額縁)はサイズと素材で区分が変わる
額縁の分別は、自治体によって考え方が本当に異なります。実際に3つの自治体の公式ページを見比べると、違いがはっきり分かります。
| 自治体 | 公式ページに書かれている内容(2026年8月時点) |
|---|---|
| 名古屋市 | 品目「額縁」は粗大ごみ【事前申込制】。「30センチメートル角以下のものは、金属製なら不燃ごみ、木製なら可燃ごみに出してください。30センチメートル角を超える大型ごみは、粗大ごみ受付センターへお申し込みください」 |
| 世田谷区 | 50音順の一覧に「額縁」の項目はなく、「ガラス製品」は不燃ごみ(紙に包んで「われもの」と表示)、「鏡(姿見除く)」は不燃ごみ。判断に迷うものは清掃事務所等に問い合わせる案内 |
| 大阪市 | 普通ごみは「台所ごみなどのほか、最大の辺又は径が30センチメートル以内のもの」。粗大ごみは「最大の辺または径が30センチメートルを超えるもの」 |
同じ額縁でも、名古屋市では素材で可燃・不燃が分かれ、大阪市では大きさだけで普通ごみか粗大ごみかが決まります。世田谷区のように品目一覧に「額縁」が載っていない自治体もあります。お手元の遺影がどれに当たるかは、お住まいの自治体のごみ分別検索で「額縁」「ガラス」と調べるのが確実です。
なお名古屋市の粗大ごみ手数料は、大きさや種類によって250円・500円・1000円・1500円に分かれます。遺影用の額縁は一辺が30センチメートルを超えるものも多いので、大きめの額を持っている方は事前申し込みが必要になる可能性を見ておくと安心です。
ガラス・アクリル板の外し方と出し方(けがを防ぐ手順)
額縁の前面には、ガラスかアクリル板が入っています。厚みがあり角が鋭いので、作業は必ず軍手をつけ、新聞紙や厚紙を敷いた平らな場所で行ってください。裏板の金具(トンボ)を起こして裏板を外し、写真、マット、前面板の順に取り出します。
取り出したガラスは、割れていなくてもそのままごみ袋に入れず、厚紙や新聞紙で包んでからテープで留めます。世田谷区の一覧は「ガラス製品」について不燃ごみとしたうえで、「紙に包んで『われもの』と表示」と案内しています。表示の要否は自治体で異なりますが、書いておいて困ることはありません。
アクリル板の場合は割れる心配は小さいものの、区分がガラスと変わる自治体があります。透明な板を見ただけでは判断しにくいときは、端をたたいたときの音や重さで見分けるか、迷ったまま出さずに自治体の窓口に確認するのが安全です。
リボン・ひも・金具・写真本体の分け方
額に添えられている黒いリボンや飾りひも、吊り下げ用のひもは布や樹脂でできており、金属の留め具やフックとは素材が違います。リボン類と金具は外して、それぞれの素材の区分で出すと分別に迷いません。リボンを付けるかどうかに宗教上の決まりがあるわけではないとされているので、外すこと自体をためらう必要はありません。
写真本体は、多くの自治体で可燃ごみの区分に当たります。ただし故人の顔と名前が分かる状態のものなので、透明・半透明の指定袋を使う自治体では、外から見えないよう紙で包んでから入れるといった配慮をされる方もいます。裏面に氏名や日付を書き込んでいる場合も同じです。
アルバムや写真が大量に残っている場合は、金具付き台紙の分別など別の判断が必要になります。写真・アルバムの分け方とデータ化については、こちらの記事で詳しくまとめています。
方法②お焚き上げ・供養に出す(寺社・郵送での受付)

「そのままごみに出すのはどうしても気が進まない」という場合、寺社や供養サービスにお焚き上げを依頼するという選択肢があります。お焚き上げは遺影を手放すときに必ず行わなければならないものではなく、気持ちの区切りをつけるための方法のひとつと考えてください。
依頼先の一例として、名古屋市中村区の日蓮宗 妙行寺は、お焚き上げ供養の対象品に「写真、アルバム、プリクラ、証明写真、遺影、似顔絵、絵画」を挙げています。供養料は公式ページで「写真・手紙など 1000円〜」と示されており、位牌は3000円〜、仏具・神具は5000円〜と品目ごとに分かれています(税込・税別の表記はなし/2026年8月時点)。遠方の場合は郵送での受け付けにも対応しており、供養料は振込・現金書留・定額小為替で納める案内になっています。
金額の設定は寺社やサービスによってまったく異なり、額縁ごと受け付けるところ、写真だけを取り出して持参するよう求めるところがあります。持ち込みの前に、対象品・料金・予約の要否を電話で確かめておくと行き違いが起きません。菩提寺があるご家庭なら、まずそちらに相談するのが自然な流れです。
なお、遺影とあわせて位牌や仏壇も手元に残っている場合は、それぞれ扱いが異なります。位牌や仏壇本体の手放し方は、別の記事で整理しています。
方法③葬儀社・仏具店・写真店に相談する

どこに頼めばよいか見当がつかないときは、葬儀を担当した会社に電話で聞いてみるのが最も早い方法です。葬儀社によっては提携する寺院での合同供養を案内していたり、遺影の引き取りに応じていたりします。時間が経っていても、当時の担当がいなくても、会社として問い合わせを受けてくれるのが一般的です。
仏具店では、仏壇の買い替えや処分の相談のなかで遺影の扱いもあわせて相談できることがあります。写真店に持ち込めば、大きな額から小さなフレームへ入れ替える、写真を複製して兄弟姉妹で分ける、といった「手放さない選択」も検討できます。
いずれの場合も、費用は依頼内容によって変わります。引き取りだけなのか、供養まで含むのか、額縁も一緒に預かってもらえるのかを最初に確認しておくと、あとで金額の食い違いが起きにくくなります。当メディア編集部では特定の会社を順位付けして紹介することはしていません。お住まいの地域で実際に相談できるところを、複数当たって比べてみてください。
方法④遺品整理・不用品回収業者にまとめて頼む

実家じまいや遺品整理の途中で遺影が出てきた、というケースでは、遺影だけを切り離して考えるより、家財ごとまとめて業者に依頼したほうが結果的に手間も費用も抑えられることがあります。供養の取り次ぎに対応している遺品整理業者もあり、その場合は遺影・位牌・人形などをまとめて預けられます。
ここで必ず確かめていただきたいのが許可です。環境省は公式ページで、「ご家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の『一般廃棄物処理業許可』や委託が必要です。『産業廃棄物処理業の許可』や『古物商の許可』では回収できません」と明記しています。産業廃棄物処理業許可は工場や企業の廃棄物のための許可、古物商の許可は中古品の売買のための許可であり、どちらも家庭から出る遺品を運ぶ根拠にはなりません。
そしてこの許可は市区町村ごとに出されるものです。「全国対応」とうたっていても、実家のある市の許可を持っているとは限りません。遺影や仏具の一部を買い取ってもらう話が出たときは、古物商許可の番号(都道府県公安委員会の許可番号)が公式サイトに表示されているかもあわせて見ておきましょう。個別の業者について許可の有無をこちらから断定することはできませんので、見積もりの段階で書面と番号を見せてもらう、というのが現実的な確認方法です。
国民生活センターは2022年11月に、不用品回収サービスのトラブルについて注意喚起を公表しています。PIO-NETに寄せられた相談件数は2018年度1,354件、2019年度1,457件、2020年度1,788件、2021年度2,231件と推移しており、広告と実際の請求額が大きく違ったという相談も同センターは挙げています。作業前に総額を書面で示してもらい、金額に納得してから作業を始めてもらう——この順番を崩さないことが、遺品整理でも同じように大切です。
依頼先を選ぶときは、1社だけで決めずに複数社の見積もりを比べると、作業範囲と金額の違いが見えてきます。遺品整理業者を無料で相見積もりできるサービスもあります。
なお「遺品整理士」は一般財団法人遺品整理士認定協会が認定している民間の資格で、公的な営業許可とは別のものです。資格の有無と許可の有無は分けて確認してください。自分たちで進める場合の手順や、捨てる前に立ち止まりたい品については、こちらもあわせてご覧ください。
仏間や実家に残った遺影はどうする?飾る場所と保管の考え方

実家を片付けていると、祖父母・曽祖父母の代のものまで含めて、鴨居や仏間に何枚も遺影が並んでいることがあります。全部を引き取るのも、全部を手放すのも決めきれない——そんなときは、次の4つの選択肢を家族で並べて話すと整理しやすくなります。
- そのまま飾り続ける:飾る場所に決まりはありません。仏間や床の間のほか、リビングの棚に置くご家庭もあります
- サイズを小さくして持ち帰る:大きな額から小さなフレームへ入れ替えれば、集合住宅でも置き場所を作りやすくなります
- 額から出して保管する:写真を桐箱や書類ケースに平らに入れ、直射日光と湿気を避けて保管する方法です
- データ化してから手放す:スマートフォンで撮影するかスキャンして残し、現物は分別または供養に回します
実家の遺影は、あなた1人のものではないという点にも注意が必要です。兄弟姉妹や親族に一言も相談せずに処分すると、後から「なぜ捨てたのか」という話になりやすいものです。写真をデータ化して共有し、「現物はこうする」と決めてから動くと、あとに残るしこりが小さくなります。写真の残し方については、アルバムの記事でも触れています。
仏壇そのものを閉じる方向で検討している場合は、遺影の扱いだけでなく、閉眼供養や引き取りの段取りも関わってきます。仏壇じまいの流れは別の記事で解説しています。
遺影の処分で「タブー」と言われることと注意点

遺影の処分については「こうするとタブー」といった言い方が広まっていますが、その多くは宗教上の規則ではなく、地域やご家庭の慣習に由来するものです。ここでは、慣習の話と、実際に守るべき決まりの話を分けて整理します。
まず、はっきりと守っていただきたいのが焼却です。庭やベランダで遺影を燃やすのは避けてください。廃棄物の焼却は廃棄物の処理及び清掃に関する法律第16条の2で「何人も、次に掲げる方法による場合を除き、廃棄物を焼却してはならない」と定められており、みよし広域連合の解説ページも、例外は基準に従った焼却や他の法令に基づく焼却、どんど焼きなどの地域行事といった限られたものだと説明しています。「祈りながら自分で燃やしたい」という気持ちがある場合は、その役割を担っているのがお焚き上げだと考えて、寺社に相談するのが安全です。
次に、慣習として語られることの扱いです。「塩で清めてから出す」「白い布に包む」「感謝を伝えてから外す」といった作法を大切にされる方は多くいますが、これらは行わなければならないものではなく、行っても差し支えないものです。宗派や地域によって考え方が異なりますので、迷う場合は菩提寺やお近くの寺社にご相談ください。
そのほか、実務的に気をつけたい点をまとめます。
- 親族への相談を先に:形見として引き取りたい人がいないかを確かめてから作業に入ります
- ガラスは必ず包んでから:収集作業員のけがを防ぐため、紙に包み「われもの」と分かるようにします
- 個人情報としての配慮:氏名や日付を書き込んだ写真は、外から見えない形で出す工夫を
- 回収を持ちかけられても即決しない:訪問や電話で「まとめて引き取る」と言われても、許可と書面の見積もりを確認してから判断します
人形やぬいぐるみが一緒に出てきた場合も、遺影と似た迷いが生まれます。品目ごとの扱いは別の記事にまとめています。
遺影の処分でよくある質問(FAQ)
※本記事の分別区分・手数料・供養料は、2026年8月時点で各自治体・寺院・公的機関の公式ページに掲載されていた内容です。ごみの区分や料金は改定されることがあり、供養の考え方は宗派・地域によって異なります。最新の情報と個別の可否は、お住まいの自治体および依頼先へ直接お問い合わせください。
まとめ
遺影を手放す方法は、①自分で自治体のごみに出す、②お焚き上げ・供養に出す、③葬儀社・仏具店・写真店に相談する、④遺品整理・不用品回収業者にまとめて頼む、の4つです。遺影そのものに宗教的な決まりはないとされており、費用をかけずに自分で分別しても差し支えありません。額縁・ガラス・写真・リボンを分けたうえで、名古屋市のように素材とサイズで区分が変わる自治体もあれば、大阪市のように大きさだけで決まる自治体もあるため、必ずご自身の市区町村のルールを調べてから出してください。
そのまま捨てることに抵抗があるなら、お焚き上げは有力な選択肢です。妙行寺のように写真・遺影を対象品に明記し、郵送でも受け付けている寺院があります。実家に遺品がまとめて残っているなら、市区町村の一般廃棄物収集運搬業の許可(または委託)を確認したうえで、複数社の見積もりを比べて依頼しましょう。業者選びの確認項目は、こちらの記事でも詳しくまとめています。