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賃貸の部屋でエアコンをつけた瞬間、カビのようなにおいが降ってくる。フィルターを洗っても改善せず、内部の洗浄を頼みたいけれど、備え付けのエアコンに勝手に手を入れていいのか分からない——そんなところで止まっている方は多いはずです。
賃貸のエアコンクリーニングでつまずくのは、料金よりも「誰に言えばいいのか」「費用は自分持ちになるのか」という手前の部分です。しかもこの答えは、そのエアコンが貸主の設備なのか、前の入居者が残していったものなのか、自分で買って付けたものなのかで考え方が変わります。
この記事では、当メディア編集部が国土交通省と独立行政法人国民生活センターの公開資料を調査し、費用負担をめぐる一般的な考え方と、管理会社へ連絡するときの具体的な進め方を整理しました。個別の請求が妥当かどうかを判定するものではありませんが、連絡する前に開いておくと、話が早くなるはずです。


【一言でいうと】賃貸のエアコンクリーニングは誰が払う?

先に結論をお伝えすると、最初にやることは業者探しではなく、管理会社(不在なら貸主)への連絡です。費用を誰が負担するかは契約の内容や設備の状況によって変わるため、連絡と確認を飛ばして手配すると、あとから負担の話が振り出しに戻ってしまいます。
考え方の目安としては、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)が参考になります。同ガイドライン第1章の別表1では、エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)が、賃貸人の負担となるものの例として挙げられています。ただしこれはあくまで例示であり、契約書の特約や設備の状況によって実際の扱いは変わります。
状況別・最初にすることの早見表
「今どの段階にいるか」で、最初の一手は変わります。自分に近い行から読み進めてください。
| 今の状況 | 最初にすること | あわせて確認したいこと |
|---|---|---|
| 入居前・入居直後ににおいやカビが気になる | 仲介・管理会社へ状況を伝える | 入居前の清掃がどこまで行われたか、動作に問題がないか |
| 入居中、汚れやにおいが気になる(不具合はない) | 管理会社へ連絡し、手配の主体と費用の扱いを聞く | 契約書に清掃・修繕に関する取り決めがあるか |
| 水漏れ・異音・冷えないなどの不具合がある | すぐに管理会社・貸主へ連絡する | 症状が出た時期と、放置による被害が広がっていないか |
| 前の入居者が残していったエアコン(残置物) | 設備か残置物かを管理会社に確認する | 故障時と清掃時の扱いが契約でどう決まっているか |
| 自分で買って設置したエアコン | 自分で手配できるが、作業の連絡は入れておく | 退去時に外して持ち出すのか、置いていけるのか |
| 退去時にクリーニング代を請求された | 費用の明細と、その根拠になる契約条項を確認する | 入居時に同じ名目の費用を払っていないか |
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)/独立行政法人国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」(2026年2月17日公表)をもとに当メディア編集部が作成(2026年8月時点)
エアコンが「誰のもの」かで考え方が変わる|設備・残置物・持ち込み

賃貸のエアコンは、見た目が同じでも立場が3通りに分かれます。貸主が備え付けた設備、前の入居者などが置いていったいわゆる残置物、そして入居者が自分で購入して設置したものです。この違いが、清掃や修理を誰が担うかという話の土台になります。

ガイドラインの別表1にも、この考え方が読み取れる記載があります。賃借人の負担となるものの例として挙げられている「クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食」した場合について、クーラーの保守は所有者が実施すべきものという前提を置いたうえで、貸主所有であっても水漏れを放置したり手入れを怠った場合は通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い、と説明されています。
裏を返せば、保守そのものは所有者側の役割として整理されている一方、気づいた不具合を放置した結果まで貸主が引き受けるわけではない、ということです。連絡が早いほど、話がこじれにくい理由がここにあります。
契約書のどこを見れば「設備」かどうか分かるか
国土交通省は、賃貸借契約をめぐる紛争を防ぐためのひな形として「賃貸住宅標準契約書」を公表しています。このひな形の頭書には物件の「設備等」を記入する欄があり、トイレや浴室、給湯設備などと並んで「冷暖房設備」の有無を記載する形になっています。
標準契約書は使用が法令で義務づけられたものではないため、実際の契約書の様式は物件ごとに異なります。それでも、設備の一覧・重要事項説明書・入居時に受け取った物件状況の確認リストのどこかに、エアコンが貸主の設備として書かれているかどうかは確認できるはずです。
「残置物」と呼ばれるエアコンで気をつけること
前の入居者が置いていった家電などは、実務上「残置物」と呼ばれることがあります。これは公的なガイドラインに定義がある区分ではなく、契約書の設備欄に記載がないまま部屋に残っている、という状態を指す言い方です。
記載がない以上、清掃や故障時の対応をどう扱うかは契約の内容や当事者の取り決めによって変わります。「残置物だから貸主は何もしてくれない」とも「設備と同じように直してもらえる」とも、一般論では言えません。エアコンに手を入れる前に、設備なのか残置物なのかを管理会社に確認しておくのが、いちばん確実な順序です。
国土交通省ガイドラインでのエアコン内部洗浄の位置づけ

ガイドラインは、退去時の原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐため、賃貸住宅標準契約書の考え方・裁判例・取引の実務等を考慮して、費用負担のあり方について妥当と考えられる一般的な基準をまとめたものです。エアコンについても、いくつかの項目が例示されています。
| ガイドラインの記載 | どちらの負担の例か | 示されている考え方 |
|---|---|---|
| エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合) | 賃貸人の負担となるものの例 | 喫煙等による臭い等が付着していない限り、通常の生活において必ず行うとまでは言い切れず、賃借人の管理の範囲を超えていると説明されている |
| 専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合) | 賃貸人の負担となるものの例 | 次の入居者を確保するためのものと整理されている |
| タバコ等のヤニ・臭い(喫煙等によりクロス等が変色したり、臭いが付着している場合) | 賃借人の負担となるものの例 | 通常の使用を超える使用による損耗等として扱われている |
| クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食 | 賃借人の負担となるものの例 | 保守は所有者が行うものとしつつ、放置や手入れ不足は通常の損耗を超えると判断されることが多いとされている |
| エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡 | 賃貸人の負担となるものの例 | エアコンは生活の必需品になっており、設置によって生じたビス穴等は通常の損耗と考えられる、と説明されている |
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)第1章 別表1(2026年8月時点)
もうひとつ押さえておきたいのが、「書かれていないこと」です。別表2では賃借人の原状回復義務として「通常の清掃」の中身が示されており、そこに挙がっているのはゴミ撤去、掃き掃除、拭き掃除、水回り清掃、換気扇やレンジ回りの油汚れの除去です。エアコンの内部洗浄はこの一覧には含まれていません。
なお同じ別表2では、設備の耐用年数の例として、冷房用・暖房用機器(エアコン、ルームクーラー、ストーブ等)が耐用年数6年のものに区分されています。これは負担が生じる場合の割合を算定するための考え方で、清掃の頻度を定めたものではない点に注意してください。
ガイドラインは「法律」ではなく一般的な基準
ここを取り違えると、話し合いが噛み合わなくなります。ガイドラインは費用負担について妥当と考えられる一般的な基準を示したものであって、契約の内容を直接上書きする法律ではありません。公式ページの「利用にあたって」にも、賃貸借契約締結時に参考にしてもらうものであると書かれています。
すでに契約している場合については、一応現在の契約書が有効なものと考えられるため契約内容に沿った取扱いが原則とされ、契約書の条文があいまいな場合や契約締結時に何らかの問題があるような場合に、ガイドラインを参考にしながら話し合うよう案内されています。つまり、最初に開くのは記事でも国の資料でもなく、手元の契約書です。
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(2026年8月時点)
判断が分かれるケース|クリーニング特約と入居中の依頼

賃貸のエアコンクリーニング代でもめやすいのが、契約書に付いているクリーニング特約です。ガイドラインのQ&Aでは、クリーニング特約について、賃借人が負担すべき内容・範囲が示されているか、本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させる趣旨とその具体的範囲が明記または口頭で説明されているか、費用として妥当か、といった点から有効・無効が判断されると説明されています。
同Q&Aでは、契約時に特約の内容が説明されていたことなどから有効と判断された裁判例と、ルームクリーニング費用を借主負担とする定めについて通常損耗まで負担させる特約とは言えないと判断された裁判例の、両方が紹介されています。特約があるから必ず全額を払うとも、特約は無効だから払わなくてよいとも、一般論では決められないということです。
実際の相談も寄せられています。独立行政法人国民生活センターが2026年2月17日に公表した「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」には、賃貸マンションを退去した後に原状回復費用としてエアコンクリーニング費用を請求されたが、入居時にも初期費用としてエアコンクリーニング代を支払っていたため納得できない、という相談事例が掲載されています(2025年10月受付)。
これは相談事例の紹介であって、その請求が妥当かどうかを示したものではありません。ただ、入居時と退去時で同じ名目の費用を払っていないかを見直すという視点は、多くの人に当てはまります。退去時の原状回復や敷金精算の全体像は、別の記事で扱っています。
勝手に業者を呼ぶ前に|管理会社へ連絡するときの手順

入居中のエアコンについて、独立行政法人国民生活センターは前述の資料の中で、エアコンや給湯器などの入居時に設置されていた機器に不具合や故障が起こった場合はすぐに貸主側に連絡して相談すること、賃貸住宅の使用のために必要な修繕は原則として貸主側に修繕の義務があること、そして貸主側に無断で修繕を行うと退去時の原状回復の際にトラブルになる可能性があることを挙げています。
ガイドラインのQ&Aにも近い説明があります。物件や設備が壊れて修繕が必要になった場合、賃貸人に修繕する義務がある一方、賃借人には賃貸人に通知する必要があるとされ、通知を怠って被害が生じた場合には損害賠償を求められる可能性もある、という記載です。連絡は自分を守る手続きでもあります。
1症状といつからかを記録する
においや水滴、異音、効きの悪さなど、気になっている状態を写真や短い動画で残します。いつごろから続いているかをメモしておくと、連絡のときに説明が一度で済みます。
2契約書と重要事項説明書の該当箇所を探す
設備の一覧にエアコンの記載があるか、清掃や修繕の負担について書かれた条項や特約があるかを確認します。見つからないときは「記載が見当たらない」ことも情報として伝えます。
3管理会社(不在なら貸主)へ連絡する
電話で話した場合も、内容をメールやアプリのメッセージで送り直して記録に残しておくと安心です。不具合がある場合は、その旨をはっきり伝えます。
4手配する人と費用の扱いを確認する
貸主側が業者を手配するのか、自分で手配してよいのか。費用はどちらが負担するのか。この2点を、口頭ではなく文面で残る形で確認します。
5自分で手配してよい場合は条件も文面で残す
業者の指定があるか、作業範囲はどこまでか、万一の水漏れや破損が起きたときはどこへ連絡するか。返信をそのまま保存しておけば、退去時の説明材料になります。
参考までに、国土交通省の賃貸住宅標準契約書のひな形では、借主が貸主の承諾を得ずに自分の負担で行える修繕として、ヒューズや蛇口のパッキン、電球・蛍光灯の取替えといった費用が軽微なものが例示されているにとどまります。エアコンの内部洗浄はここに挙げられていません。自己判断で進めるより、確認を挟むほうが結果的に早道です。
出典:独立行政法人国民生活センター「賃貸住宅の原状回復トラブルにご注意!」/国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)のQ&A/国土交通省『賃貸住宅標準契約書』について(2026年8月時点)
自分で手配してよいことになったら|賃貸で確認する5つのこと

「自分で頼んでいいですよ」と返事をもらえたら、そこから業者選びです。持ち家と違って賃貸では、部屋も設備も借りているものなので、確認する項目が少し増えます。
- 作業範囲……どこまで分解して洗うのか、室外機や防カビ処理は別料金かを見積もりの段階で書面で確認する
- 機種の申告……お掃除機能付きかどうかで作業時間と料金が変わるため、型番を伝えてから見積もりをもらう
- 損害賠償保険……作業中の破損や水漏れに備えた保険に加入しているか、加入している場合の連絡手順
- 養生と後片付け……壁・床・家具の養生方法と、排水の処理をどこで行うか(洗浄には相応の水を使います)
- 作業前後の記録……作業前と作業後の写真を残し、管理会社にも共有しておく
料金は、壁掛けタイプかお掃除機能付きか、台数は何台かといった条件で変わります。条件ごとの目安と、追加料金が発生する条件は別の記事にまとめました。
依頼する前に自分でできることもあります。フィルターの取り外しと洗浄、吹き出し口まわりの拭き取りといった範囲であれば、電源プラグを抜く(抜けない場合はブレーカーを落とす)ところから始めれば、日常の手入れとして無理なく続けられます。取扱説明書に記載のない部品まで外そうとしないでください。
一方、内部の分解を伴う洗浄は業者の作業です。感電や電装基板の故障、冷媒の配管や水漏れの危険があり、賃貸では破損させた場合の負担という問題も加わります。市販の洗浄スプレーの使い方や、においとカビの原因については、それぞれ別の記事で詳しく扱っています。
退去時にエアコンクリーニング代を請求されたときの進め方

退去の精算書にエアコンクリーニング代が並んでいた場合も、順番は同じです。まず内訳を確認します。ガイドラインのQ&Aでは、賃貸人には敷金から差し引く原状回復費用について説明義務があり、賃借人は明細を請求して説明を求めることができると説明されています。
明細が届いたら、その費用の根拠になっている契約条項を照らし合わせます。契約書や重要事項説明書にクリーニングに関する定めがあるか、入居時にも同じ名目の費用を負担していないか、金額の内訳がどうなっているか。この3点をそろえてから話をするほうが、感情論になりにくくなります。
話し合いが進まないときの窓口は公的なものがあります。消費者庁の消費者ホットラインは全国共通の電話番号「188」で、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内する仕組みです。地域の窓口は、独立行政法人国民生活センターの全国の消費生活センター等のページからも探せます。
なお、家賃の滞納が理由で契約を解除され、明け渡しを求められる場面は、ここまでの精算の話とは別の手続きです。仕組みを知っておきたい方はこちらもどうぞ。
賃貸のエアコンクリーニングについてよくある質問(FAQ)
※本記事は2026年8月時点で公開されている国土交通省・独立行政法人国民生活センター・消費者庁の資料にもとづく一般的な考え方の解説であり、個別の事案について費用負担の有無や請求の適否を判断するものではありません。実際の取扱いは契約内容・特約・設備の状況によって異なります。
まとめ|まず管理会社、次に契約書、それから業者
賃貸のエアコンクリーニングは、業者を探すところから始めると遠回りになります。ガイドラインの別表1ではエアコンの内部洗浄が賃貸人の負担となるものの例に挙げられている一方で、実際の扱いは契約の特約や設備の状況で変わるためです。順番は、管理会社への連絡、契約書の確認、それから業者の手配です。
連絡のときは、症状といつからかを記録し、手配する人と費用の扱いを文面で残す。この2つを押さえておけば、入居中の話し合いも退去時の精算も、根拠のある形で進められます。請求に納得できないときは、明細の説明を求めたうえで、消費者ホットライン「188」から身近な相談窓口につないでもらう方法があります。
料金の目安、自分でできる範囲の掃除、退去全体の原状回復については、それぞれの記事で詳しく扱っています。ご自身の状況に近いものから読んでみてください。