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玄関の前まで来て、ポケットにも鞄の中にも鍵がない——。賃貸に住んでいると、この瞬間に頭をよぎるのは「今夜どうやって部屋に入るのか」と「これ、いくら請求されるんだろう」の2つではないでしょうか。しかも夜だと管理会社は営業時間外で、検索結果には「解錠2,000円〜」といった広告が並びます。
ただ、賃貸の鍵は自分の持ち物であって自分だけのものではありません。玄関の錠は建物に付いた設備なので、勝手に鍵を交換したり、管理会社に黙って業者を手配したりすると、あとの話がこじれやすくなります。独立行政法人国民生活センターにも、広告の金額と実際の請求が大きく離れた解錠サービスの相談が寄せられています。
この記事では、当メディア編集部が公的機関の公表資料・錠前メーカーの案内・複数社の公開料金表を調査し、連絡の順番、警察への遺失届、業者に頼むときの料金の見方、そして費用負担の考え方を順に整理しました。焦っている状態でも判断を間違えないための手順としてお使いください。


【一言でいうと】賃貸で鍵をなくしたら、まず管理会社・大家へ連絡する
賃貸で鍵を紛失したときの原則は、自分で鍵を交換しない・自分だけの判断で業者を手配しない・まず管理会社か大家へ連絡する、の3つです。玄関の錠は建物側の設備なので、交換するかどうか、どの鍵に替えるか、どこに頼むかは貸主側が決める領域にあります。
とはいえ、深夜で連絡がつかない、目の前で締め出されているといった状況もあります。下の早見表で、いまの自分がどの状況にいるかを先に確かめてください。

| いまの状況 | まずやること | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 部屋には入れる(スペアキーがある) | 管理会社・大家へ連絡し、警察へ遺失届を出す | 入れているからと放置しない。落とした鍵は他人の手にある可能性がある |
| 部屋に入れない(日中) | 管理会社・大家へ電話し、スペアキーの預かりがあるか確認する | 連絡前に解錠業者を呼ぶと、交換の手配が二度手間になることがある |
| 部屋に入れない(夜間・休日) | 緊急連絡先の有無を契約書類で確認し、つながらなければ身の安全を優先する | その場で契約する解錠は料金が読みにくい。総額を先に確認する |
| オートロックの内側から締め出された | 管理会社へ連絡し、共用部の扱いを含めて指示を受ける | 共用部の鍵は住戸の鍵と扱いが異なる場合がある |
| 退去の直前・退去後に気づいた | 隠さず管理会社へ申告する | 返却できない本数を含めて早めに伝えるほど段取りが取りやすい |
賃貸の鍵紛失でやってはいけない5つのこと

ここを外すと、鍵そのものより後始末のほうが高くつきます。順に見ていきます。
1カードや工具でこじ開けようとする
ドアや錠を傷めると、鍵の費用に加えてドア本体や錠前の修理費が乗ってきます。賃貸では建物側の設備を壊したことになるため、原状回復の負担が増える方向に働きます。
2ピッキングの道具に手を出す
ピッキング用具の所持は「特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律」(平成15年法律第65号)により、業務その他正当な理由による場合を除いて禁止されています。一般の人が備えておく前提の道具ではありません。
3管理会社に黙って自分で鍵を交換する
玄関の錠は建物の設備です。無断で替えると、鍵の種類が管理台帳と合わなくなったり、退去時に元の状態へ戻す費用が発生したりすることがあります。交換するかどうかも、どの鍵に替えるかも、先に管理会社・大家へ相談する事柄です。
4広告の「◯◯円〜」だけを見て即決する
国民生活センターは、必要な作業は一様ではなく、時間帯や現場の状況次第では必ずしもインターネット広告に記載された料金で依頼できるとは限らないとして、安価な金額表示をうのみにしないよう呼びかけています。出張料やキャンセルした場合の金額も合わせて確認する、とされています。
5納得できない請求をその場で払ってしまう
同センターは、料金や作業内容に納得できない場合は、後日納得した金額で支払う意思があることを示しつつ、その場での支払いはきっぱり断るよう案内しています。深夜にひとりで対応するのが不安なときほど、この一線が効いてきます。
出典:独立行政法人国民生活センター「【広告より高額!?】出張解錠サービスの料金トラブルに注意」(2024年11月19日公表)(2026年8月時点)
最初にやること|管理会社への連絡と、家に入れないときの選択肢

連絡の順番さえ守れば、あとは相手が段取りを持っています。次の順に進めてください。
1立ち止まって、直近の行動をたどる
最後に鍵を使った場所、そのあと立ち寄った店や乗り物を順に思い出します。慌てて業者を呼んだあとに鞄の底から出てくる、という展開は珍しくありません。
2契約書類から緊急連絡先を探す
賃貸借契約書や入居のしおりに、管理会社の受付時間と時間外の緊急連絡先が書かれていることがあります。スマホで撮って保存してある人はその画像を確認します。
3管理会社・大家へ連絡して指示を受ける
「鍵を紛失した」「いま部屋に入れるか入れないか」の2点を先に伝えます。スペアキーを預かっているか、指定の鍵業者があるか、交換はどう進めるかは管理会社によって違いますので、こちらで決めずに聞きます。
4その場で解錠が必要かどうかを整理する
今夜どうしても部屋に入る必要があるのか、翌朝まで待てるのかで打ち手が変わります。待てるなら、営業時間内に管理会社経由で手配してもらうほうが話は単純です。
5連絡がつかない夜間は、身の安全を先に確保する
つながらないまま屋外で長時間過ごすのは避けます。頼れる相手のところへ移動する、宿泊できる場所を確保するなど、いったん安全な場所に入ってから翌朝あらためて連絡する、という選択肢も持っておきます。
管理会社に連絡しても自分で手配することになる場合がある
警察への遺失届|どこに出すか、出しておく意味

鍵をなくしたことに気づいたら、警察への遺失届も出しておきます。落とし物として届けられたときに連絡が来る道をつくる手続きです。
警察庁の「落とし物の届出・検索」のページでは、遺失したと思われる場所または居住している場所の都道府県警察を選んで届け出る形が案内されています。オンラインでの届出に対応している都道府県と、リンク先の設定がなくオンラインでは届出ができない都道府県があり、後者は最寄りの警察署または交番等へ届け出るとされています。
また同ページには、オンラインで遺失届を受け付けたあと受理するまでに時間を要する場合があり、急ぐ場合は最寄りの警察署または交番等に直接届出を行うよう記載があります。届出の様式や必要なものは各都道府県警察の案内に従ってください。
遺失届は、あくまで「見つかったときに連絡が来るようにする」ための手続きです。届けたから鍵が安全になるわけではありません。錠前メーカーの美和ロック株式会社は、鍵を紛失した場合はシリンダー(鍵穴)を交換するよう案内しており、とくに住所が特定できるものと一緒に紛失した場合は早急な交換をすすめています。拾われた鍵と住所が結び付く状況では、見つかるかどうかとは別に交換の話が出てくると考えておくとよいでしょう。
出典:警察庁「落とし物の届出・検索」/美和ロック株式会社「合鍵を希望されるお客様へ」(2026年8月時点)
鍵開け・鍵交換を業者に頼むときの料金と、高額請求を避ける確認手順

管理会社の指示で自分が業者を手配することになった場合に備えて、料金の見方を押さえておきます。ここで挙げる社名は公開されている料金表の出典として示すもので、優劣や順位を示すものではありません。
公開されている料金表の例(2026年8月時点)
| 出典(公開料金表) | 鍵開け(解錠) | 鍵交換 | 表示されている条件 |
|---|---|---|---|
| 鍵のレスキュー 鍵の110番救急車「簡易料金表」 | 6,000円(税込6,600円)〜 | 6,000円(税込6,600円)〜 | 鍵交換は「部材費別」と明記。鍵製作・鍵取付は8,000円(税込8,800円)〜 |
| 鍵屋の鍵猿「料金」 | 8,800円(税込)〜 | 11,000円(税込)〜+部品代 | 出張費・見積もり料は0円、夜間早朝料金5,500円(税込・21時〜7時59分の作業時)と表示 |
| くらしのマーケット(玄関の鍵開けの相場記事) | 破壊しない解錠8,800円〜17,000円 | 破壊開錠+鍵交換は刻みキー19,000円〜30,000円、ディンプルキー25,000円〜35,000円 | 技術料・出張経費・深夜料金の内訳を提示。税込か税別かの表記はない |
出典:鍵のレスキュー 鍵の110番救急車「簡易料金表」/鍵屋の鍵猿「鍵交換・鍵修理・鍵開けの料金(相場)について」/くらしのマーケットマガジン「鍵開け料金の相場はいくら?」(いずれも2026年8月時点の表示。3社目は税の表記がないため、税込か税別かは見積もりで確認してください)
3つを並べると、金額そのものより何が別料金になっているかで総額が変わることが見えてきます。部材費・部品代、出張費、深夜早朝の割増、そして「開けるだけ」か「壊して開けてから交換する」かの違いです。同じ「鍵のトラブル」でも、この組み合わせで請求書の桁は変わります。
高額請求を避けるための確認手順
1電話の時点で、総額の見込みと内訳を聞く
作業料だけでなく、出張料、深夜早朝の割増、キャンセルした場合にいくらかかるのかまで聞きます。国民生活センターも、出張料やキャンセルした場合の金額を確認するよう案内しています。
2現地で金額が変わったら、作業前に止める
公表されている相談事例では、電話では基本料金8,000円と説明されたのに、現地で「特殊なオートロックキー」として基本料に約4万円が加算され、工賃や消費税を含め約5万円を支払ったというものがあります。金額が動くのは着手前です。
3納得できないまま作業させない・その場で払わない
別の相談事例では、「見積もりは無料」「解錠で2,000円〜」の表示を見て依頼したところ、事前に料金が知らされないまま作業が進み、終わってから約10万円を請求されています。納得できない場合は、後日納得した金額で支払う意思を示しつつ、その場での支払いは断ることが案内されています。
4トラブルになったら消費生活センターへ相談する
受け取った書面や契約の経緯を整理して、消費者ホットライン「188(いやや!)」から最寄りの消費生活センター等に相談できます。見積もりのために呼んだ事業者とその場で契約した場合や、広告などの表示額と実際の請求額が大きく異なる場合などは、特定商取引法の訪問販売によるクーリング・オフなどが適用できる可能性がある、とされています。
落ち着いているときにやっておくと効く
出典:日本ロックセキュリティ協同組合「全国加盟店検索」(2026年8月時点)
鍵交換の費用は誰が負担する?国土交通省ガイドラインの考え方

費用の話で参照されるのが、国土交通省住宅局が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」(平成23年8月)です。ここには鍵の扱いが3か所に出てきます。
| ガイドライン上の項目 | どこに載っているか | 示されている考え方 |
|---|---|---|
| 鍵の紛失、破損による取替え | 別表1(損耗・毀損の事例区分(部位別)一覧表)の区分B | 「鍵の紛失や不適切な使用による破損は、賃借人負担と判断される場合が多いものと考えられる」 |
| 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合) | 別表1の区分A | 「入居者の入れ替わりによる物件管理上の問題であり、賃貸人の負担とすることが妥当と考えられる」 |
| 鍵の負担単位 | 別表2(賃借人の原状回復義務等負担一覧表) | 賃借人の負担単位は「鍵:紛失の場合はシリンダーの交換」 |
| 経過年数の考慮 | 別表2 | 「鍵の紛失の場合は、経過年数は考慮しない。交換費用相当分を全額賃借人負担とする」 |
| 修繕分担表での並び | 別表3(契約書に添付する原状回復の条件に関する様式) | 賃貸人負担側に「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」、賃借人負担側に「鍵の紛失または破損による取替え」 |
出典:国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について/同ガイドライン(再改訂版)本文(PDF)(2026年8月時点)
読みどころは2つあります。ひとつは、同じ「鍵の取替え」でも、紛失があるかないかで置かれる欄が逆になること。もうひとつは、クロスや設備機器のように経過年数で負担割合を下げる考え方が、鍵の紛失には適用されない形で書かれていることです。「古い建物だから安くなるはず」という見込みは立てにくい、と読めます。
ただし、このガイドラインは法律ではなく、トラブルを未然に防ぐための一般的な考え方の目安として示されているものです。実際の負担は賃貸借契約書の内容、とくに特約の定めによって異なります。鍵の種類でも金額は動きます。ディンプルキー、カードキー、オートロックの共用部と連動する鍵などは、一般的なシリンダーより部材費が高くなる傾向があります。自分のケースがどちらの欄に当たるか、いくらになるかを自分で決めつけず、契約書を手元に置いたうえで管理会社に確認してください。
火災保険や家財保険で鍵の交換費用がまかなえないか、という点も気になるところですが、これは加入している保険の商品や特約によって扱いが分かれます。当メディアで可否を断定することはできませんので、保険証券を用意して保険会社・代理店に問い合わせてください。原状回復の考え方そのものをもう少し広く知りたい方は、退去時の掃除と負担の線引きをまとめた記事も合わせてどうぞ。
退去時に鍵を返せないときはどうなる?

ガイドラインの別表2では、賃借人の原状回復義務として「設備の補修」「通常の清掃」と並んで「鍵の返却」が挙げられています。退去は、部屋を空にして掃除をすれば終わりではなく、借りていた鍵を返すところまでが含まれている、という整理です。
だからこそ、返せない鍵があるなら早めに伝えたほうが動きやすくなります。入居時に受け取った本数は契約書類に記録されているのが一般的で、立会いのときには本数を数えます。1本だけの紛失でも、ふだん使っていないスペアキーの紛失でも、扱いは同じく「返却できない鍵がある」という申告です。黙っていて後から分かるより、こちらから先に言っておくほうが、交換の手配も精算の説明もまとめて進みます。
紛失したのが1本でもシリンダーごと交換になるのか、そのときの費用がいくらかは、契約の内容と鍵の種類によって変わります。ここで金額を当てはめて断定することはできません。請求の明細に納得できないときは、内訳を書面で示してもらったうえで、消費者ホットライン「188」から最寄りの消費生活センター等に相談する道があります。
解約の連絡から立会い、鍵の返却までの手続き全体の流れは、退去そのものを扱った記事で順を追って説明しています。契約の終了をめぐるトラブルの全体像を知りたい場合は、あわせてご覧ください。
もう一度なくさないための備え

国民生活センターは「日頃から備えておきたいことは?」として、緊急時に備えて持っている鍵の種類やメーカーなどを確認し、信頼のおける事業者の情報を調べておくと安心だとしています。あわせて、賃貸住宅の場合は大家や管理会社に、鍵の紛失時にどのような対応をしているか確認しましょうとも案内しています。
- 入居中に一度、管理会社へ「鍵をなくしたときはどう連絡すればよいか」を聞いて控えておく
- 時間外の緊急連絡先を、スマホのメモや連絡先に登録しておく
- 玄関の鍵のメーカー名と、鍵に刻印されている番号の有無を確認しておく
- 合鍵を作ってよいか、作った場合に退去時どうするかを契約書で確かめる
合鍵については、勝手に複製しないという前提を持っておくのが無難です。賃貸では貸し出された本数を管理している以上、複製の扱いが契約で定められている場合があります。技術的にも、美和ロック株式会社の案内では、純正キーの注文には鍵に刻印された鍵番号(キーナンバー)が必要で、セキュリティ認証IDシステム付きの鍵の場合はセキュリティカードに記載されたセキュリティ認証ID番号と鍵番号の2つがそろわないと複製の注文ができない仕組みだとされています。刻印がないもの、鍵番号が消えているもの、手元に鍵がない場合は注文できないとも案内されています。
裏を返せば、鍵番号は人目に触れないよう扱うものだということです。鍵をそのまま写した写真をSNSに上げる、鍵番号の見える状態で他人に預ける、といった扱いは避けてください。引越しにともなう手続きを整理しておくと、鍵の受け渡しでばたつく場面も減らせます。
賃貸の鍵の紛失についてよくある質問(FAQ)
※本記事は公的機関の公表資料・錠前メーカーの案内・各社の公開料金表をもとに、2026年8月時点で一般的な考え方を整理したものです。料金や制度の運用は変更される場合があります。個別の費用負担や請求の当否についての判断は行っていませんので、実際の対応は賃貸借契約書の内容を確認のうえ、管理会社・大家、または最寄りの消費生活センター等にご相談ください。
まとめ|「まず連絡、次に契約書、それから業者」の順で動く
賃貸で鍵をなくしたときは、順番がすべてです。管理会社・大家へ連絡し、警察へ遺失届を出し、業者が必要なら総額を先に確認してから作業に入ってもらう。この3手で、余計な出費と余計なもめごとの大半は避けられます。
費用負担については、国土交通省のガイドラインが「鍵の紛失または破損による取替え」と「鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)」を別の欄に置いている、という一般的な整理を頭に入れつつ、最終的には契約書の特約と鍵の種類で決まると考えてください。自分で結論を出そうとせず、契約書を開いて管理会社に確認する——それが結局いちばん早い道です。