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アブラムシ駆除は農薬以外もある?観葉植物と野菜で違うラベルの見方

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新芽をつまんでみたら、緑や黒の小さな粒がびっしり付いている。指でこすれば取れるけれど、数日でまた同じ場所に戻っている——アブラムシは、家庭菜園でも室内の鉢でも、いちばん相談の多い虫のひとつです。

結論からお伝えすると、アブラムシ対策で最初に決めるのは「何を使うか」ではなく、その手段が農薬取締法のどの枠に置かれているかです。防虫網や反射マルチのように「法に規定する農薬の定義に該当しないもの」として国が整理しているものもあれば、重曹や食酢のように指定はされているが殺菌の資材として扱われているものもあります。牛乳のように、どちらにも名前が出てこないものもあります。

この記事では、アブラムシへの手段を①農薬の定義に該当しないもの ②特定農薬に指定されたもの ③登録農薬 ④どれにも当たらないもの、の4つに仕分けました。そのうえで、家庭菜園と観葉植物ではラベルの見る欄が違うこと、部屋にある「観葉植物」の相当数が農薬の登録上は観葉植物ではないことまで整理しています。当メディア編集部が、農林水産省・環境省の告示と通知、農研機構の公開資料、福島県の病害虫資料、e-Govの現行条文を読んでまとめました(※2026年8月時点)。分量や薄め方、混ぜ方は書きません。体調に関わる判断もこの記事では扱いません。

読者
プランターのミニトマトと、部屋のパキラの両方にアブラムシが出ました。牛乳スプレーが効くと聞いたのですが、作って両方にかけてしまってよいですか。
編集部
その順番だと、あとで困ることになります。牛乳は国の資材の一覧に名前がなく、そもそもミニトマトとパキラでは、使える薬の探し方も違います。まず「その手段が制度のどこにあるか」を仕分けるところから始めましょう。

【一言でいうと】アブラムシ駆除は、何から手をつければいい?

アブラムシへの対処は、大きく4つの区分に分かれます。よく紹介される手段を並べただけでは、どれが国の制度に位置づけられていて、どれがそうでないのかが見えません。まず、この表で自分がやろうとしていることの居場所を確かめてください。

区分 あてはまる手段の例 制度上の位置づけ 効果についての公的な記載 出典(値ごと)
①農薬の定義に該当しないもの 防虫網・寒冷紗/反射マルチ/UV(紫外線)反射フィルム/粘着板・粘着シート/水(普通の水) 特定農薬の検討対象としない資材として、別表3に整理されている 反射資材は「飛来が抑制できる」(露地栽培の場合) 検討対象としない資材の通知 別表3(資材名・分類)/福島県「野菜・花の害虫(アブラムシ類)」ワタアブラムシの防除対策(飛来抑制)
②特定農薬に指定されたもの エチレン/次亜塩素酸水/重曹/食酢/天敵 登録を受けなくても農薬として使える。ただし天敵以外の4資材に殺虫剤の欄はない 重曹・食酢の参考対象はいずれも植物の病気(アブラムシの記載なし) 平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第一号(資材名・天敵の条件)/25消安第5776号 別紙1〜別紙4(種類欄・参考となる対象病害虫等)
③登録農薬 ラベルに「農林水産省登録第○号」がある殺虫剤 使用できる作物と使用方法が登録で決まっている 製品ごとにラベルの適用病害虫欄で示される 農林水産省「農薬を使用することができる作物群」(使用できる作物以外には使用できない旨・ラベルの位置づけ)
④どれにも当たらないもの 牛乳/コーヒー・コーヒーかす/片栗粉など 指定資材の告示にも、検討対象としない資材の別表1〜3にも牛乳の名前がない 今回確認した資料に記載なし 平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第一号(指定資材の一覧)/検討対象としない資材の通知 別表1〜別表3(資材名の一覧)

出典:農林水産省・環境省「特定農薬(特定防除資材)の検討対象としない資材について」(22消安第8101号・環水大土発第110204001号/平成23年2月4日)別記(分類の定義)/同 別表1〜別表3(資材名)/農林水産省「平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第一号(特定農薬を指定する件)」/農林水産省・環境省「特定農薬(特定防除資材)として指定された資材(天敵を除く。)の留意事項について」(25消安第5776号)別紙1〜別紙4/農林水産省「農薬を使用することができる作物群」/FAMIC「よくある質問(農薬)」A-4(いずれも2026年8月時点)。④の「効果」欄は、上記のいずれの資料にも該当する記載がなかったため、空欄にせず記載なしとしています。

アブラムシ対策は農薬取締法のどの枠かで仕分けるの図解
当メディア編集部作成

この記事の残りは、この4区分を順にほどいていく構成です。先に言ってしまうと、いちばん時間を取られやすいのは④で、いちばん見落とされているのが③のラベルの読み方です。

アブラムシは、汁を吸うだけの虫?

庭の手入れをする様子
写真はイメージです

汁を吸うのはアブラムシの被害の一部にすぎません。福島県が公開している野菜・花きの害虫資料は、アブラムシ類の被害を3段構えで説明しています。吸汁で葉が黄変・萎縮すること、排泄物による汚れ、そしてウイルス病の媒介です。

同資料は排泄物について「葉や果実についた排泄物(甘露)はススを発生させ、光合成を阻害し収量が低下、さらには収穫部位がススで汚れ商品価値が下がる。」と書いています。そして「これらの吸汁による直接的加害のほか、各種ウイルス病を媒介するため間接的な被害が発生する。」とも記されています(福島県「野菜・花の害虫(アブラムシ類)」総論(PDF)/2026年8月時点)。葉のべたつきや黒ずみが気になっていたなら、それは虫そのものではなく排泄物が呼んだ汚れかもしれません。

増え方と、翅のある個体の意味

同じ資料は増え方についても具体的です。「加害の主体となるのは胎生雌虫であり、単為生殖、卵胎生(胎生雌虫から産卵されるときに孵化するため胎生するように見える)で増殖する。」とされ、翅のある個体(有翅型)と翅のない個体(無翅型)が、個体群密度や栄養条件、気象条件などによって分かれると同資料は説明しています。

ここが実用的です。同資料は「移動力に富む有翅虫の発生がウイルス病の伝搬に重要であり、反対に無翅型や幼虫がウイルス病を伝搬する機会は極めて低い。」と書いています。つまり、鉢の上でじっとしている個体より、飛んで移ってくる個体のほうが病気の面では重い。防ぐ順番を考えるうえでの分かれ目になります。

種類も一つではありません。福島県の資料は、同県の野菜・花き類ではワタアブラムシとモモアカアブラムシが問題になることが多いとしたうえで、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、ダイコンアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、マメアブラムシ、ネギアブラムシなど多くの種が確認されるとしています。同資料はワタアブラムシの無翅胎生雌虫について、体長1.2〜1.7mmで、色は黒色に近い暗緑色から緑色、黄色に近い個体まで変異があるとしています。色だけで「これはアブラムシではない」と判断しないほうが安全です。葉に丸い食べ跡が残っていて、星のある甲虫が付いている場合は、別の虫の可能性があります。

「見つけたらすぐ薬をまけば、病気も防げる」と言える?

防護具を着けた清掃作業の様子
写真はイメージです

アブラムシがウイルスを運ぶと聞くと、「では早く薬でたたけばよい」と考えたくなります。ところが、この点について公的な資料ははっきり別のことを書いています。

農研機構の遺伝資源研究センターが公開している微生物遺伝資源利用マニュアル「植物ウイルスの特性とその利用(Ⅰ)」は、アブラムシによるウイルスの伝搬を、媒介できる期間の長さで非永続伝搬・半永続伝搬・永続伝搬に分けています。そのうえで「一方,非永続伝搬性のウイルスではアブラムシが作物に飛来して一度でも吸汁するとウイルスが伝搬されることになるため,作物に薬剤を散布しておいても,薬剤がアブラムシに効く前に,ウイルスが口針から離れてしまい,ウイルスの伝搬は完全には防止できない.」と述べています(農研機構 遺伝資源研究センター「微生物遺伝資源利用マニュアル(46)植物ウイルスの特性とその利用(Ⅰ)」5.植物ウイルスの伝染 3)ウイルスを運ぶ生物(1)昆虫(PDF)/2026年8月時点)。

虫を減らすことと、病気を防ぐことは、同じ作業ではないということです。同じ資料は、永続伝搬されるウイルスについては「アブラムシの飛来防止と防除が有効な対策である」としており、伝搬様式によって打てる手が変わると整理しています。

伝搬様式 媒介しうる期間 代表ウイルス 主な発生作物 出典(値ごと)
非永続伝搬 1日くらいまで キュウリモザイクウイルス(CMV) 多くの野菜・花き 農研機構 遺伝資源研究センター(期間の区分・表3の代表ウイルス・発生作物)
半永続伝搬 1日以上だが長くても2〜3日まで ビート萎黄ウイルス(BYV) テンサイ 農研機構 遺伝資源研究センター(期間の区分・表3の代表ウイルス・発生作物)
永続伝搬・循環型 それ以上長い期間 ダイズわい化ウイルス(SDV) ダイズ 農研機構 遺伝資源研究センター(期間の区分・表3の代表ウイルス・発生作物)
永続伝搬・増殖型 それ以上長い期間(虫体内で増殖) Lettuce necrotic yellows virus (LNYV) 日本では未発生 農研機構 遺伝資源研究センター(期間の区分・表3の代表ウイルス・発生の有無)
家庭の鉢・プランターでの発生頻度 今回確認した資料に記載なし 今回確認した資料に記載なし 今回確認した資料に記載なし 農研機構 遺伝資源研究センター(同マニュアルは農業生産の場面を前提に記述されており、家庭の鉢・プランターについての記載なし)

出典:農研機構 遺伝資源研究センター「微生物遺伝資源利用マニュアル(46)」表3 代表的なアブラムシ伝搬性ウイルス(PDF)(2026年8月時点)。

同マニュアルは、CMVについて「1,000種を超える作物に感染する」ほど宿主域が広く、「80種以上のアブラムシで伝搬されることが確認されており」と記しています。だからこそ、この記事では「すぐに薬をまく」ではなく、飛んでくる個体を減らす物理的な手当てを先に置きます。ウイルス病そのものについては、葉の症状から素人が種類を確定できるものではないので、疑わしい株の扱いは次の章以降の相談先に委ねてください。

牛乳・重曹・酢は「効く農薬」と言えるのか?

食器を洗い整理する様子
写真はイメージです

「家にあるもので」と検索したときに必ず出てくるのが、牛乳・重曹・酢の3つです。制度の側から見ると、この3つは同じ場所にいません。

まず、登録を受けなくても農薬として使える例外が特定農薬(特定防除資材)です。平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第一号を見ると、天敵以外で挙がっているのは「エチレン、次亜塩素酸水(塩酸又は塩化カリウム水溶液を電気分解して得られるものに限る。)、重曹及び食酢」の4つだけです(農林水産省「平成15年3月4日農林水産省・環境省告示第一号(特定農薬を指定する件)」二 一以外のもの/2026年8月時点)。この一覧に牛乳はありません。

重曹と食酢が指定された理由そのものを読む

ここがハダニなど他の虫の記事と最も違うところです。アブラムシは害虫、つまり殺虫の対象ですが、重曹と食酢が特定農薬に指定された理由は殺虫ではありません。農林水産省の解説は、審議会の答申の経緯を説明する箇所で「まずはその時点において殺菌効果を持つことが明らかであった重曹と食酢、及び地場で生息する天敵について特定農薬に指定することが適当であるとの結論が得られ」と書いています(農林水産省「特定農薬とは?」どのようなものが特定農薬になるのですか?/2026年8月時点)。指定の根拠になったのは殺菌効果であって、虫に対する効果ではなかったということです。

指定後に出された留意事項通知(25消安第5776号/平成26年3月28日)を見ると、その整理はさらにはっきりします。同通知の別紙1から別紙4には、資材ごとに「種類」の欄があります。エチレンは「発芽抑制剤及び成長促進剤」、次亜塩素酸水と重曹は「殺菌剤(散布用)」、食酢は「殺菌剤(種子消毒用)」です(農林水産省・環境省「特定農薬(特定防除資材)として指定された資材(天敵を除く。)の留意事項について」別紙1〜別紙4の「種類」欄(PDF)/2026年8月時点)。

天敵を除いた4資材のうち、殺虫剤として位置づけられているものは一つもありません。参考として挙げられた薬効の対象も、重曹が「野菜類、ばら、ホップの灰色かび病」「野菜類、ばら、ホップのうどんこ病」「野菜類のさび病」、食酢が「稲のもみ枯細菌病、ばか苗病、ごま葉枯病」で、いずれも植物の病気です。アブラムシは入っていません。同通知には、重曹をにがうりに使った場合に特定の品種で薬害が生じた事例がある旨も添えられています。

牛乳や、コーヒーかす・中性洗剤はどう扱われているか

牛乳については、指定資材の一覧に無いだけでなく、農林水産省と環境省が「検討対象としない資材」として整理した通知の別表1(名称から資材が特定できないもの)・別表2(資材の原材料に照らし使用量や濃度によっては農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがあるもの)・別表3(法に規定する農薬の定義に該当しないもの)のいずれにも名前が出てきません(農林水産省・環境省「特定農薬(特定防除資材)の検討対象としない資材について」(22消安第8101号)別表1〜別表3(PDF)/2026年8月時点)。指定もされていなければ、検討対象から明示的に外されてもいない、という位置です。

そのうえで、牛乳をアブラムシにかけると膜で窒息するという説明の効果を確かめた公的な資料は、当メディア編集部が今回この記事で引用した農林水産省・環境省・農研機構・福島県・FAMICの資料を全文検索した範囲では、見当たりませんでした。効くとも効かないとも書かない、というのが2026年8月時点で言える正確なところです。

なお、指定が保留されている資材の扱いについて、農林水産省は「農薬かどうか判断が保留されたものは、農薬効果を謳って販売することは従来どおり取り締まりますが、効果は分からないものの、使用者が自分の判断と責任で使うことは可能です。」と説明しています。使うこと自体が禁じられているわけではありません。ただし、同じ通知は別表1・別表2の資材について、農林水産大臣の登録を受けなければ農薬として使ってはならないという扱いを示しており、別表3とは書き分けられています。中性洗剤は別表1に載っているので、防除の目的で植物にかける話としては、コーヒーかすと同じ棚には置けません。コーヒー・コーヒーかす・片栗粉は、別表1から別表3のいずれにも名前がありません。同じ農薬取締法の枠組みでハダニを整理した記事もあわせてどうぞ。

この記事が分量・薄め方・混ぜ方を書かない理由


アブラムシへの効果が公的に確認されていない資材について、薄め方や1回にかける量を書くと、確認されていない効果を保証したことになります。また、家にあるものを2つ以上組み合わせる使い方は、何が起きるかを確かめた資料が見当たりません。登録農薬についても、希釈倍数と使用量はラベルの記載で製品ごとに違います。この記事で書けるのは制度上の位置づけまでで、量の話はあなたの手元のラベルが正本です。

農薬を使わない手として、公的資料は何を挙げている?

集合住宅の外観
写真はイメージです

ここが、この記事でいちばん先に手をつけてほしい区分です。国は、そもそも農薬ではない資材を明示的にリスト化しています。前掲の「検討対象としない資材」の通知(22消安第8101号)の別表3は「法に規定する農薬の定義に該当しないもの」という分類で、そこに次のものが並んでいます。

  • 防虫網・寒冷紗/防虫袋(果実袋)
  • 反射マルチ/UV(紫外線)反射フィルム/UVカットフィルム
  • 粘着板・粘着シート
  • 水(普通の水)/熱湯/水蒸気
  • 昆虫行動制御灯(黄色蛍光灯)/誘蛾灯/電撃殺虫器
  • アイガモ、アヒル、コイなどの生きもの/マリーゴールドなどの植物

アルミホイルを鉢の根元に敷くという広く知られたやり方は、この「反射マルチ」の考え方に当たります。効果の保証ではなく、少なくとも農薬の枠の外にある手当てとして国が整理している、という意味です。

実際の効き方については、福島県の資料に具体的な記載があります。ワタアブラムシの防除対策として、施設栽培では開口部に1mm目合い以下の防虫ネットを張って飛来を防ぐこと、そして露地栽培については「露地栽培では、シルバーマルチやシルバーテープの利用により、飛来が抑制できる。」と同資料は書いています。UVカットフィルムについては、アブラムシ類やアザミウマ類の侵入を抑制できるとしたうえで、ミツバチの訪花活動に支障をきたし、作物によっては花・果実の着色不良をおこすので注意が必要だとも付記されています。

同時に、同じ資料はこうも書いています。「アブラムシ類は増殖能力が高いため、物理的防除対策を取っていても化学的防除(農薬による防除)が必要になることが多い。」物理的な手当てだけで終わる前提では書かれていません。ダイコンアブラムシについては、ほ場周囲のアブラナ科の作物残渣や雑草の除去などのほ場管理の徹底が重要とされ、同資料はべた掛け資材を用いた被覆栽培を挙げています。ベランダなら、鉢のすき間に置きっぱなしの枯れ葉と、隣に置いた別の鉢が同じ役割を果たします。

国の通知も、順番としては同じ考え方です。住宅地等における農薬使用についての通知(25消安第175号)の別紙のうち、市民農園や家庭菜園を含む農地を対象にした「2 住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項」の(1)は、薬剤を選ぶ話ではありません。求めているのは「病害虫に強い作物や品種の栽培、病害虫の発生しにくい適切な土づくりや施肥の実施、人手による害虫の捕殺、防虫網の設置、機械除草等の物理的防除の活用等により、農薬使用の回数及び量を削減すること」です(農林水産省・環境省「住宅地等における農薬使用について」(25消安第175号)別紙の2「住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項」(1)/2026年8月時点)。花壇や家庭菜園で見かける別の生きものの扱いは、次の記事でも触れています。

テントウムシを捕まえて放せば足りる?

庭の手入れをする様子
写真はイメージです

「アブラムシ 駆除 天敵」「てんとう虫」は実際によく検索される組み合わせです。ここには、制度の話と実務の話が両方あります。

制度の話から。農薬取締法第2条第2項は「前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。」と定めています(e-Gov法令検索 農薬取締法 第2条第2項/2026年8月時点)。虫を放してアブラムシを減らそうとする行為は、法律の上では農薬の使用に当たります。

そのうえで、特定農薬に指定されている天敵には条件が付いています。前掲の告示は「昆虫綱及びクモ綱に属する動物(人畜に有害な毒素を産生するものを除く。)であって、使用場所と同一の都道府県内(中略)で採取されたもの」としています。理由もはっきりしています。農林水産省と環境省が出した天敵の留意事項通知に添えられた別添は「採取された場所と異なる都道府県で使用された場合に自然環境や生態系に対して有害な影響をもたらす可能性が否定できないことから、告示において特定農薬の範囲について、使用場所と同一の都道府県内で採取されたものに限っている。」と説明しています(農林水産省・環境省「特定農薬(特定防除資材)として指定された天敵の留意事項に係る通知の発出の経緯について」別添 2 留意事項通知の発出の経緯(PDF)/2026年8月時点)。よその土地で採ってきた個体を持ち込む前提では組まれていない、ということです。

放しても、そこにいてくれるとは限らない

実務の話はもっと単純です。農研機構は、アブラムシの天敵を使った防除法を紹介する記事のなかで、ナミテントウについて「1頭で1日100頭以上のアブラムシを食べる能力を持つ」としながら、続けて「施設内に放飼しても飛び去ってしまい定着しにくいという問題がありました」と書いています。この課題を解決するために、農研機構は自然界の個体から飛翔能力の低いものを探して交配し、遺伝的に飛翔能力を欠くナミテントウを育成しました(農研機構「旬」の話題「天敵でアブラムシ退治」生物農薬「飛ばないナミテントウ」販売開始(情報公開日:2014年6月18日)/2026年8月時点)。

専門機関が品種を育成してまで解こうとした課題が「飛んでいってしまう」ことだった、という事実は、庭で捕まえた1匹を鉢に置く手当ての限界をそのまま示しています。同じ記事は、施設内に麦類を植えてムギクビレアブラムシを放し、そこに天敵のコレマンアブラバチを住まわせておく「バンカー法」も紹介しています。天敵を働かせるには、天敵が住み続けられる仕掛けのほうが要る、という組み立てです。

ベランダや室内でできることに引き直すと、テントウムシを見つけたら追い払わない、という程度になります。数を当てにする話ではありません。

家庭菜園では、ラベルのどこを見る?

スマホ・パソコンを操作する様子
写真はイメージです

登録農薬を使う場面になったら、見るのは製品の人気でも価格でもなく、ラベルの適用作物の欄です。農林水産省は、農薬は使用できる作物と使用してよい方法を決めて登録しており、使用できる作物以外の作物には使用できないと説明しています(農林水産省「農薬を使用することができる作物群」/2026年8月時点)。

家庭菜園も例外ではありません。前掲の25消安第175号は、対象を「学校、保育所、病院、公園等の公共施設内の植物、街路樹並びに住宅地に近接する農地(市民農園や家庭菜園を含む。)及び森林等」と書いています。ベランダのプランターも、この通知が想定している場面のひとつです。家庭菜園に係る別紙の2は、農薬を使う場合について「農薬を使用する場合には、農薬取締法に基づいて登録された、当該農作物に適用のある農薬を、ラベルに記載されている使用方法(使用回数、使用量、使用濃度等)及び使用上の注意事項を守って使用すること」と定めています。

散布のしかたについても、同じ別紙の2に具体的な項目が並びます。粒剤・微粒剤等の飛散が少ない形状の農薬を使うか、液体なら飛散低減ノズルの使用に努めること。無風または風が弱いときに行うなど近隣に影響が少ない天候の日や時間帯を選ぶこと。事前に周辺住民へ、農薬使用の目的、散布日時、使用農薬の種類、農薬使用者等の連絡先を十分な時間的余裕をもって幅広く周知すること。使用した年月日・場所・対象農作物・農薬の種類または名称・使用量または希釈倍数を記録し一定期間保管すること。集合住宅のベランダは隣戸の洗濯物が至近距離にあるので、この4つはそのまま自分の作業手順に置き換わります。

同じ通知でも、別紙の1と2で書いてあることが違う

ひとつ注意点があります。この通知の別紙は、「1 公園、街路樹等における病害虫防除に当たっての遵守事項」と「2 住宅地周辺の農地における病害虫防除に当たっての遵守事項」に分かれていて、内容が同じではありません。

たとえば薬剤を混ぜて使うことについての明文は、別紙の1にしかありません。別紙の1の(5)は、公園や街路樹等での病害虫防除ではやむを得ず使用することが原則で複数の病害虫に同時に使用する状況はあまり想定されないとしたうえで「このような現地混用は行わないこと」とし、さらに「有機リン系農薬同士の混用は、混用によって毒性影響が相加的に強まることを示唆する知見もあることから、決して行わないこと」と書いています。家庭菜園を含む別紙の2には、混用についての同じ記載は置かれていません。書かれていないことを「だから混ぜてよい」と読むのは危険なので、本記事はどちらの場面でも混ぜ方を書きません。この書き分けを確かめずに「通知で混用は禁止されている」と書くと、対象の取り違えになります。

ラベルを外れて使うと何が起きるか

農薬取締法第25条第1項は、農林水産大臣と環境大臣が農薬を使用する者の遵守すべき基準を定めることとし、同条第3項は「農薬使用者は、第一項の基準(前項の規定により当該基準が変更された場合には、その変更後の基準)に違反して、農薬を使用してはならない。」と定めています。これに違反した場合は第47条の罰則の対象で、「三年以下の拘禁刑若しくは百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。」と規定されています(e-Gov法令検索 農薬取締法 第25条・第47条/2026年8月時点)。プロかどうか、面積が広いかどうかで線が引かれているわけではありません。

「よく効いた薬」を使い続けてよいか

もうひとつ、アブラムシ特有の事情があります。福島県の資料は、ワタアブラムシについて「近年、宮崎県や大分県のピーマンから、本種のネオニコチノイド系剤に対する抵抗性系統が見つかっているため、同系統薬剤の連用はしないなど薬剤選択に注意する必要がある。」と記しています。モモアカアブラムシについても同資料は「有機リン剤や合成ピレスロイド剤に対する抵抗性が発達していることが知られている。」と記しています。

対処のしかたも同資料が示しています。モモアカアブラムシの防除対策として「薬剤感受性の低下が懸念されるので、防除薬剤散布後、数日おいて効果確認をおこない、効果が見られない場合には系統の異なる薬剤を選択する。」とあります。効かなかったときに量を増やすのではなく、数日おいて効果を確かめ、系統の違うものに替えるという順番です。この記事で実名の薬剤ランキングを作らないのは、順位を付けた瞬間に「これを買い続ければよい」という読み方を招くからです。同じ家庭菜園の害虫について、木酢液の位置づけを整理した記事もあります。

観葉植物は「花き類・観葉植物」でいい?

リビングでくつろぐ家族
写真はイメージです

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。室内の鉢にアブラムシが出たとき、多くの方は「観葉植物に使える」と書かれた製品を探します。ところが農薬の登録では、部屋で観葉植物と呼んでいる植物の相当数が「花き類・観葉植物」ではなく「樹木類」に分類されています。

根拠は、農薬の適用作物名を定めた通知(平成31年3月29日付け30消安第6281号、最終改正令和6年4月1日)の別紙 表2「適用農作物のうち食用又は飼料用に利用されない農作物等」です。この表で、大グループ「花き類・観葉植物」と大グループ「樹木類」は別に立てられています。

部屋にある植物の例 登録上の大グループ 中グループ ラベルで探す語 出典(値ごと)
ポトス/モンステラ/サンセベリア/スパティフィラム/アンスリウム/フィロデンドロン/ディフェンバキア/ヘデラ/アジアンタム 花き類・観葉植物 —(中グループの区分なし) 花き類・観葉植物 30消安第6281号 別紙 表2(大グループ「花き類・観葉植物」の作物名)
ガジュマル/パキラ/ドラセナ/シェフレラ/ゴムノキ/ベンジャミン/コルディリネ/クロトン/ユッカ/とっくりらん 樹木類 —(中グループの区分なし) 樹木類 30消安第6281号 別紙 表2(大グループ「樹木類」の作物名)
テーブルヤシ/アレカヤシ/シュロチク/かんのんちく/ケンチャヤシ 樹木類 ヤシ類 樹木類(またはヤシ類) 30消安第6281号 別紙 表2(中グループ「ヤシ類」の作物名)
ばら/ぼたん/シクラメン 花き類・観葉植物 —(中グループの区分なし) 花き類・観葉植物 30消安第6281号 別紙 表2(大グループ「花き類・観葉植物」の作物名)
ミニトマト/なす/きゅうりなど食べる植物 表2ではなく表1(食用又は飼料用に利用される農作物) 作物ごとに異なる 作物名そのもの(トマト・ミニトマト等) 30消安第6281号 別紙 表1(表の対象範囲・作物名)

出典:農林水産省消費・安全局農産安全管理課長通知「農薬の適用病害虫の範囲及び使用方法に係る適用農作物等の名称について」(30消安第6281号・最終改正令和6年4月1日)別紙 表1・表2(PDF)(2026年8月時点)。上表の植物名は同表2に掲載されている作物名の一部を抜き出したものです。個々の製品でどの区分に登録があるかは、その製品のラベルで確認してください。

つまり、同じ「観葉植物」の棚に並んでいても、ポトスとパキラでは見るべきラベルの欄が違います。「花き類・観葉植物」にしか登録のない製品を、樹木類に分類されるガジュマルやドラセナに使うことはできません。

逆向きも同じです。独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)は、農薬の使用についての質問のB-12で、農薬登録の作物分類では花き類は野菜類に含まれず、野菜類に登録があっても花き類には使用できないと回答しています(FAMIC「農薬の使用についての質問」B-12/2026年8月時点)。プランターのミニトマトに使った製品が、そのまま部屋のポトスに使えるとは限らない、ということです。

もうひとつ、食べる植物には収穫前日数(使用時期)と総使用回数という考え方が付きます。観葉植物にはその発想がありませんが、代わりに室内で薬剤を扱うことになります。屋内での使用可否や換気の条件は製品ごとの注意事項に書かれているので、鉢を屋外に出せるかどうかも含めて、散布の前に読んでおいてください。

手に負えないときは、どこに相談する?

調べ物をして検討する女性
写真はイメージです

育てている植物に使える製品が見つからない、ラベルの読み方が分からない、去年と同じ薬が効かない——このあたりで止まったら、自分で判断を重ねるより相談したほうが早いです。

都道府県には病害虫防除所が置かれており、農林水産省の植物防疫所がその一覧を公開しています(農林水産省 植物防疫所「リンク集」都道府県(病害虫防除所)の節/2026年8月時点)。名称は都道府県によって異なり、農業試験場や農林水産研究センターの一部門として置かれているところもあります。植物の種類、症状が出た時期、鉢か地植えか、これまでに何を使ったかを整理して問い合わせると話が早く進みます。

相談すること自体が、法律の想定でもあります。農薬取締法第27条は、農薬使用者について、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努めるとともに、普及指導員や病害虫防除員などの指導を受けるように努めるものとする、と定めています。

製品を自分で調べたい場合は、農林水産省の農薬登録情報提供システムで、作物名・農薬名・病害虫名から検索できます(農林水産省 農薬登録情報提供システム/2026年8月時点)。FAMICもB-1で、このシステムで該当農薬の種類・使用時期・使用方法を表示できると案内しています。検索するときは、作物名の欄に「観葉植物」ではなく、前の章で確かめた区分(花き類・観葉植物、または樹木類)を入れてください。庭木や屋外の樹木で高所の作業が必要な場合など、民間の業者に頼む選択肢もあります。見積もりで何を確認すればよいかは別記事にまとめています。

アブラムシの駆除についてよくある質問(FAQ)

Qアブラムシを水で流したり、テープで取ったりするのは問題ありませんか

A制度の面では、農林水産省・環境省の通知(22消安第8101号)は、水(普通の水)も粘着板・粘着シートも、別表3「法に規定する農薬の定義に該当しないもの」に挙げています。農薬としての手続きが必要な行為ではありません。ただし、これらでアブラムシが減ると確かめた公的な試験結果は、今回この記事で引用した資料を調べた範囲では見当たりませんでした。新芽や花芽は強い水流で傷むことがあるので、量や勢いは植物の状態を見て加減してください(2026年8月時点)。

Q鉢の根元にアルミホイルを敷くのは効きますか

A反射させて飛来を抑えるという考え方は、別表3にある「反射マルチ」「UV(紫外線)反射フィルム」と同じ枠にあります。福島県の資料も、露地栽培についてシルバーマルチやシルバーテープの利用により飛来が抑制できるとしています。ただし同じ資料は、アブラムシ類は増殖能力が高いため物理的防除対策を取っていても化学的防除が必要になることが多いとも書いています。すでに葉に付いている個体を減らす手当てとは別ものとお考えください(2026年8月時点)。

Q重曹スプレーや酢のスプレーは、アブラムシに使ってはいけないのですか

A禁じられているわけではありません。重曹と食酢は特定農薬に指定されていますが、指定の理由は殺菌効果が明らかだったことで、留意事項通知の種類欄も殺菌剤です。参考として挙げられた対象も灰色かび病・うどんこ病・さび病、稲のもみ枯細菌病などの病気で、アブラムシは入っていません。アブラムシに対する効果は公的には確認されていない状態で、この記事では分量も書きません(2026年8月時点)。

Q部屋の観葉植物に、家庭菜園で使っている薬をそのまま使えますか

A使えるとは限りません。FAMICは、農薬登録の作物分類では花き類は野菜類に含まれず、野菜類に登録があっても花き類には使用できないと回答しています。さらに、ガジュマルやパキラ、ドラセナ、シェフレラのように、部屋で観葉植物と呼ばれている植物が登録上は「樹木類」に分類されている例も少なくありません。手元の製品のラベルの適用作物欄に、その区分が入っているかを先に確かめてください(2026年8月時点)。

Q一度減らしても、また同じ場所に付くのはなぜですか

A福島県の資料は、アブラムシは胎生雌虫が単為生殖・卵胎生で増殖し、密度や栄養条件、気象条件によって翅のある個体が現れて分散すると説明しています。ワタアブラムシは梅雨明け後に急激に増殖し、9月末までさまざまな作物で寄生が見られるとも記されています。増える力そのものが強く、飛んでくる経路も残っているため、1回の作業で終わる前提には立たないほうが現実的です(2026年8月時点)。

※本記事は、2026年8月時点で公開されている告示・通知・条文と、農研機構および福島県、独立行政法人農林水産消費安全技術センター(FAMIC)の公開資料に記載されている内容を、制度上の位置づけという観点から整理したものです。牛乳・重曹・食酢・コーヒーかす・中性洗剤・水・反射資材のいずれについても、アブラムシへの効き目を保証する趣旨はなく、効き目がないと述べる趣旨もありません。育てている植物にどの薬剤を使えるかは、その製品のラベル表示と、その植物が農薬登録上どの区分に当たるかによって決まります。作物分類の通知は改正されることがあり、本記事は令和6年4月1日改正版に基づいています。植物の種類、鉢か地植えか、季節によって取るべき手当ては変わりますので、迷ったときは自己判断で薬剤の量を増やさず、都道府県の病害虫防除所にご相談ください。なお本記事は健康に関する助言を行うものではありません。

まとめ|アブラムシ駆除は「効く薬探し」より先に仕分ける

アブラムシへの手段は、①農薬の定義に該当しないもの(防虫網・反射マルチ・粘着シート・水)②特定農薬に指定されたもの(エチレン・次亜塩素酸水・重曹・食酢・天敵)③登録農薬 ④どれにも当たらないもの(牛乳・コーヒーかす・片栗粉など)の4つに分かれます。①から順に手をつけて、③に進むときにラベルを読む、というのが遠回りに見えていちばん短い道です。

覚えて帰っていただきたいのは3つです。重曹と食酢が特定農薬に指定された理由は殺菌効果であって、天敵を除く4資材に殺虫剤の欄は一つもないこと。テントウムシは法律上「農薬とみなす」対象で、しかも農研機構「旬」の話題「天敵でアブラムシ退治」が解こうとした課題が「飛び去ってしまい定着しにくい」ことだったこと。そして、部屋のガジュマルやパキラ、ドラセナ、テーブルヤシは、農薬の登録上は「観葉植物」ではなく「樹木類」だということです。

ウイルス病については、薬をまいても非永続伝搬は完全には防止できないと農研機構の資料が書いています。だからこそ、飛んでくる個体を減らす手当てが先に来ます。判断に迷ったら、都道府県の病害虫防除所という相談先があります。庭の雑草に除草剤を使う場面でも、使える場所が法律で決まっているという同じ構図があるので、あわせて確認しておくと迷いが減ります。

-カメムシ・その他害虫対策, 害虫駆除
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