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衣替えでセーターを出したら小さな穴が開いていた、洗面所の壁を2〜3mmの黒っぽい虫がゆっくり歩いていた、掃除機をかけたら毛の生えた小さなイモムシが出てきた——カツオブシムシではないかと思ったとき、まっさきに浮かぶのは「1匹いるということは、見えていないだけで他にもたくさんいるのだろうか」という不安ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、「1匹いたら◯匹いる」という数字を示した公的機関の資料は、編集部が調べた範囲では見当たりませんでした。公的資料がはっきり書いているのは数ではなく、見つけたものが成虫か、幼虫か、抜け殻かで意味がまったく変わるということです。京都市衛生環境研究所は成虫について「成虫は約10日間,その場で交尾して30~60個の産卵を終えた後,明るいところを好んで外に出てきます」と書いています。
この記事では虫の実物写真をいっさい使わず、線画の図解と公的資料の数値だけで、見つけたものを3つに振り分けられるように整理しました。当メディア編集部が、名古屋市衛生研究所・さいたま市健康科学研究センター・埼玉県衛生研究所・京都市衛生環境研究所・農研機構・東京文化財研究所が公開している解説を種ごとにあたって作成しています(2026年8月時点)。なお、刺された・かゆいといった体の症状については医学的な判断ができないため、この記事では扱いません。


- 01【一言でいうと】カツオブシムシが一匹いたら、何匹いると考えればいい?
- 02見つけた1匹は成虫?幼虫?——服を食べるのはどちら?
- 03毛が生えた小さいイモムシなら?カツオブシムシの幼虫の体長と色
- 04体が白くて毛がない幼虫なら?イガの幼虫と分かれる
- 05成虫の大きさと模様は?ヒメマルとヒメカツオブシムシの違い
- 06「白い洗濯物について入ってくる」は本当?公的資料を当たった
- 07発生源はクローゼットとは限らない?公的資料が挙げる場所
- 08いつ出る?成虫は4〜5月、幼虫は300日ほど
- 09一匹見つけたあと、今日できることは?
- 10カツオブシムシについてよくある質問(FAQ)
- 11まとめ|カツオブシムシは「成虫・幼虫・抜け殻」で見る場所が変わる
【一言でいうと】カツオブシムシが一匹いたら、何匹いると考えればいい?
「1匹いたら何匹」と数で答えられる公的資料は見当たりませんでした。編集部が確認した名古屋市衛生研究所・さいたま市健康科学研究センター・埼玉県衛生研究所・京都市衛生環境研究所・農研機構・東京文化財研究所の解説をテキストにして全文検索しましたが、この虫について「1匹=N匹」に相当する記載はどこにもありません(2026年8月時点)。
代わりに手がかりになるのが、京都市衛生環境研究所「衛生動物だより」No.048「ヒメマルカツオブシムシ」の記述です。同号は「ヒメマルカツオブシムシの特徴」の節で「成虫は約10日間,その場で交尾して30~60個の産卵を終えた後,明るいところを好んで外に出てきます」と説明し、自室で成虫を見つけた自らの経験について「成虫が外に出てきたとなると,すでに産卵していることになります」と結論しています。
つまり「何匹いるか」ではなく、「その1匹が成虫なら、屋内で産卵が済んでいる可能性がある」と読み替えるほうが、次の行動が決まります。まずは下の3分岐で、自分が見たものを振り分けてください。

| 見つけたもの | 公的資料に書かれていること | 次に確かめる場所 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 成虫(2〜5mmほどの甲虫) | 屋内でその場で交尾・産卵を終えてから、明るいほうを好んで外へ出てくる | 産卵先になりうるウール・絹の衣類、動物質の乾物、床や収納にたまったホコリ | 京都市衛生環境研究所「衛生動物だより」No.048(成虫の行動) |
| 幼虫(毛の生えたイモムシ状) | 加害するステージは幼虫と明記されている | その虫がいた衣類・乾物そのもの。被害はいま進行中と考える | 東京文化財研究所 文化財害虫検索「ヒメマルカツオブシムシ」【加害するステージ】 |
| 抜け殻(脱皮殻)だけ | タンスの中や長期保存の乾燥食品から幼虫や脱皮殻が見つかる/ホコリにまみれて落ちていることが多い | タンスの底、収納の隅、ホコリのたまり場 | さいたま市健康科学研究センター「カツオブシムシ類」(脱皮殻の見つかる場所)/東京文化財研究所「ヒメマルカツオブシムシ」【生態・加害の特徴】(抜け殻の状態) |
※本記事の数値・引用はすべて2026年8月時点で各機関の公開ページを確認したものです。
見つけた1匹は成虫?幼虫?——服を食べるのはどちら?

繊維を食べるのは幼虫のほうです。京都市衛生環境研究所「衛生動物だより」No.016「ヒメマルカツオブシムシ」は「食品害虫」の節で幼虫の食性を説明したうえで、末尾に「なお,成虫は,繊維を食害することはありません」と書き添えています。東京文化財研究所 文化財害虫検索「ヒメマルカツオブシムシ」も、【加害するステージ】の欄を「幼虫」の一語で示しています。
では成虫は何を食べているのかというと、屋外の花粉です。名古屋市衛生研究所 web昆虫図鑑「カツオブシムシ類」のヒメマルカツオブシムシの項は「成虫は、屋外に出てマーガレットなどの花に集まり花粉を食べる」とし、農研機構 食品害虫サイト 図鑑「ヒメマルカツオブシムシ」も生態の欄で「春期、成虫はヒメジョオンなどの花に群がる」と記しています。
この違いは、見つけたあとの行動を分けます。成虫を1匹つぶしても、すでに産み付けられた卵や、どこかで育っている幼虫には届きません。逆に幼虫を見つけたのなら、その虫がいた衣類や乾物が、いままさに食べられているものだということになります。成虫なら「産卵先になりそうな場所」を、幼虫なら「その虫がいたもの」を先に見る、という順番です。
毛が生えた小さいイモムシなら?カツオブシムシの幼虫の体長と色

幼虫の見た目は「毛」で決まります。農研機構 食品害虫サイト 図鑑「ヒメマルカツオブシムシ」は形態の欄で幼虫を「茶褐色で長毛を密生する」と書き、同図鑑「ヒメカツオブシムシ」も幼虫をまったく同じ表現で説明しています。東京文化財研究所はもう少し細かく、ヒメマルカツオブシムシの幼虫を「褐色と白の縞模様で毛に覆われている。腹部末端に毛束がある」、ヒメカツオブシムシの幼虫を「茶色いっぽく細長い。腹部末端に多数の毛がついている」としています。
体長を数値で書いている公的資料もあります。さいたま市健康科学研究センターのサイエンスなび「衣類や食品を食べる害虫『カツオブシムシ類』」は、種ごとに幼虫の成熟時の体長と成虫の体長を並べて示しています。ヒメマルカツオブシムシの幼虫が約4mm、ヒメカツオブシムシの幼虫が約9mmで、幼虫のほうが成虫より大きくなる点が、この虫の分かりにくさの一因です。幼虫の体色は、同センターの別ページ「この虫をみかけたら要注意 食品・衣類の虫食いを防ぎましょう」の「衣類に穴をあける虫」の表にあります。同表は、ヒメマルカツオブシムシの幼虫を「背面は黄褐色または暗褐色」、ヒメカツオブシムシの幼虫を「赤褐色」としています。
| 種名 | 幼虫の体長(成熟時) | 成虫の体長 | 幼虫の色・形の記載 | 出典(値ごと) |
|---|---|---|---|---|
| ヒメマルカツオブシムシ | 約4ミリメートル | 1.7〜3.2ミリメートル | 背面は黄褐色または暗褐色/褐色と白の縞模様で毛に覆われ、腹部末端に毛束がある | さいたま市「カツオブシムシ類」(幼虫・成虫の体長)/さいたま市「この虫をみかけたら要注意」(幼虫の体色)/東京文化財研究所(縞模様と毛束) |
| ヒメカツオブシムシ | 約9ミリメートル | 2.8〜5.3ミリメートル | 赤褐色/茶色いっぽく細長く、腹部末端に多数の毛がつく | さいたま市「カツオブシムシ類」(幼虫・成虫の体長)/さいたま市「この虫をみかけたら要注意」(幼虫の体色)/東京文化財研究所(体形と毛) |
| ハラジロカツオブシムシ | 約15ミリメートル | 5.5〜10ミリメートル | 今回確認した資料に記載なし | さいたま市「カツオブシムシ類」(幼虫・成虫の体長) |
さいたま市の同ページは、家屋内で被害をもたらすカツオブシムシ類が「日本でも20種以上知られており」と書いています。ただし屋内で実際に見つかる種はごく限られ、名古屋市衛生研究所は「名古屋市内ではヒメマルカツオブシムシ、ヒメカツオブシムシ、カドマルカツオブシムシなどがよく見られる」としています。家の中で毛の生えたイモムシ状の幼虫を見たなら、まずは前の2種を候補に置けば足ります。
体が白くて毛がない幼虫なら?イガの幼虫と分かれる
「衣類についていた白い幼虫はカツオブシムシ」と書かれているのをよく見かけますが、公的資料の記載を並べると、白いだけでは決まりません。東京文化財研究所 文化財害虫検索「イガ」は、衣類を食べる蛾であるイガの幼虫を「細長いイモムシ。体は白く頭が褐色。食害する材料で蓑を作るため、ほとんどの場合蓑をかぶって生活している」と説明しています。体全体が白くて毛がなく、頭だけが褐色なら、同研究所の記載ではイガの幼虫の特徴に当てはまります。

もうひとつの決め手が「蓑(みの)」です。名古屋市衛生研究所 web昆虫図鑑「ヒロズコガ類」のイガの項は「幼虫は繊維の小片を綴り合わせて扁平な筒状の巣を作って中に潜んでいる。筒の大きさは7-8mmになり、巣の中で蛹化する」と書いています。服の上に小さな筒やチューブ状のものが乗っていたら、その中身はカツオブシムシではなく蛾の幼虫です。
この2つは発生の回数も違います。同じ名古屋市のページはイガについて「1年に2-3世代を経る」としており、後述するようにカツオブシムシは年1世代です。どちらなのかで、対策を続ける期間の考え方も変わります。なお、本や衣類のまわりで見かける銀色の虫はさらに別の候補になります。
成虫の大きさと模様は?ヒメマルとヒメカツオブシムシの違い

成虫を種まで分けるなら、まず見るのは大きさではなく模様です。名古屋市衛生研究所 web昆虫図鑑「カツオブシムシ類」はヒメマルカツオブシムシを「小型の種で体長約2-3mm。黒褐色で、背面は黄色や灰白色の鱗片でおおわれている」、ヒメカツオブシムシを「成虫は体長3-5mm。全体黒褐色で、光沢がある」と書き分けています。東京文化財研究所も前者を「黒の下地に橙や白の模様が入りまだらに見える」、後者を「黒色で楕円形な見た目」としています。まだらに見えるならヒメマル、単色で光沢のある黒ならヒメ、という順で見ると迷いません。
体長の数値は、資料によって1mm前後ずれます。下は同じ2種について4つの公的機関の記載を並べたものです。
| 資料 | ヒメマルカツオブシムシ(成虫) | ヒメカツオブシムシ(成虫) |
|---|---|---|
| 名古屋市衛生研究所「カツオブシムシ類」 | 約2-3mm | 3-5mm |
| 農研機構 食品害虫サイト 図鑑 | 2-3mm | 3.5-5mm |
| さいたま市健康科学研究センター「カツオブシムシ類」 | 1.7〜3.2mm | 2.8〜5.3mm |
| 東京文化財研究所 文化財害虫検索 | 2〜3mmほど | 4-6mmほど |
下限で1.7mm、上限で6mmまで幅があるので、定規を当てて種を決めるのは現実的ではありません。京都市衛生環境研究所の「衛生動物だより」No.016 も、保健所からの鑑別依頼が少ない理由として「ヒメマルカツオブシムシは,翅(はね)の模様が特徴的なことから,比較的鑑別が容易です」と書いています。数値より模様、というのは実務の側からも同じです。
同号にはもうひとつ、実物を見るときに役立つ観察が載っています。カツオブシムシ科は本来「上から見ても,頭部は胸部の下に隠れて見えないグループです」が、送られてきた個体は頭部がはっきり見えた——その理由について同号は「生きているときには,頭部が前方に出ていることを初めて知りました」と書いています。動いている個体と死んだ個体で見え方が変わるということです。飛んでいる小さい虫全般の振り分けは、別の記事に分けています。
「白い洗濯物について入ってくる」は本当?公的資料を当たった

ネット上でよく見かける話ですが、これは裏づけのあるほうでした。埼玉県衛生研究所「甲虫のなかま」のヒメマルカツオブシムシの項は「白いものに誘引され、洗濯物に着いている時などに一緒に取り込まれてしまい、屋内でも産卵します」と明記しています。東京文化財研究所も【生態・加害の特徴】の欄で「成虫は白い物に集まる習性があり、白い服を着ていると体について屋内に入ってきてしまう」と書いています。
京都市衛生環境研究所の「衛生動物だより」No.048 も、対策の項で「ヒメマルカツオブシムシは,外に干している白い洗濯物などに付いて室内に侵入します。そして,餌となるウールなどに卵を産み付けます」としています。同号は、研究室の白い琺瑯(ほうろう)製バットの上で7〜8匹の成虫を見つけた経験について「白い琺瑯製バットで多く発見したのは,花の色と勘違いしたためかもしれません」と推測しており、白いものに寄る性質を自分の目で確かめた記録になっています。
もとをたどると、成虫の餌が白い花の花粉だという生態に行き着きます。同研究所の No.016 は、玄関のプランターに植えたキク科のノースポールを観察して「たくさんのヒメマルカツオブシムシが飛来してきていました。10数匹が確認できました」と書き、「5月から8月ころまで訪花が続きます」としています。名古屋市の「マーガレットなどの花に集まり」、農研機構の「ヒメジョオンなどの花に群がる」という記載とも一致します。
対策として埼玉県衛生研究所が挙げているのは、ごく簡単なことです。「洗濯物の取り込み時によく確認し、払ってから取り込みましょう」。東京文化財研究所も、収蔵庫を守る側の注意として「白い服を着てきたときは部屋に入る前に体につけてしまっていないかチェックする」と書いています。
発生源はクローゼットとは限らない?公的資料が挙げる場所

ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。公的機関が発生源として挙げている場所は、クローゼットの衣類だけではありません。名古屋市衛生研究所 web昆虫図鑑「カツオブシムシ類」はヒメマルカツオブシムシについて「照明器具内の昆虫死骸も発生源となる」と書いています。同じページのヒメカツオブシムシの項には「学校などで大量発生した事例があるが、床材の継ぎ目にたまった毛糸くずなどのほこりが発生源と考えられる」という記載もあります。
京都市衛生環境研究所の「衛生動物だより」No.048 が報告しているのは、さらに意外な例です。研究室で成虫が続けて見つかったため机上の昆虫標本と床を調べたが見当たらず、上を見たところ「陳列していたキイロスズメバチの巣の一つにヒメマルカツオブシムシが大発生していたのです」。同号は原因を「おそらく巣に残っていた幼虫の残骸やフンに発生したのでしょう」と推測しています。動物質の乾いたものであれば、衣類でなくても餌になるということです。
東京文化財研究所が【予防と管理上の注意点】に挙げているのも、衣類の管理ではなく清掃です。「害虫の死骸などを食べるため清掃をして害虫の死骸が床などに落ちていないようにする」「トラップの放置をしない」。これは博物館や収蔵庫を前提にした記載ですが、家庭でも読み替えられます。
- 照明器具のカバーの内側にたまった虫の死骸(名古屋市衛生研究所)
- 床材の継ぎ目やカーペットの縁にたまった毛糸くず・ホコリ(名古屋市衛生研究所)
- タンスや押入れの中にたまった毛くず(さいたま市健康科学研究センター)
- 飾ってある昆虫標本・はく製・ハチの巣などの乾いた動物質(京都市衛生環境研究所 No.048)
- 長く置いたままの虫とりトラップ、床に落ちたままの虫の死骸(東京文化財研究所)
服だけを洗っても収まらないと感じるときは、この5つのうち手をつけていない場所が残っていないかを見てみてください。乾物側で似た虫が出ているなら、発生源の探し方をまとめた記事もあります。
いつ出る?成虫は4〜5月、幼虫は300日ほど

京都市衛生環境研究所「衛生動物だより」No.016は「ヒメマルカツオブシムシのライフサイクル」の節で「ヒメマルカツオブシムシは,年間1世代です」とし、「成虫の京都市域での出現時期は,4月中旬です」と書いています。No.048 はさらに具体的で、「この虫は,300日ほどを幼虫で過ごして3~4月にサナギになり4~5月に成虫になります」としています。1年の大半、およそ300日を幼虫として過ごす虫だということです。
幼虫期の長さは埼玉県衛生研究所「甲虫のなかま」の記載とも合います。同研究所は「幼虫の期間も300日程度と長く、翌年の春に羽化して成虫になります」と書いています。さいたま市健康科学研究センターも「幼虫や成虫が家屋内で越冬するため、タンスの中や長期間保存している乾燥食品から、カツオブシムシ類の幼虫や脱皮殻が見つかることがあります」としており、冬に見つかること自体は不思議ではありません。
| 時期 | その時期にいる姿 | 出典 |
|---|---|---|
| 4月中旬〜5月 | 成虫が出現する(京都市域での記載)。羽化後は約10日、その場で交尾・産卵 | 京都市衛生環境研究所 No.016(出現時期)/No.048(成虫の期間と産卵数) |
| 5月〜8月ごろ | 屋外に出た成虫が白い花に訪花し、花粉を食べる | 京都市衛生環境研究所 No.016(訪花の期間) |
| 産卵の約1か月後〜翌年3月 | 卵が孵化して幼虫になり、繊維質を食べながら成長。幼虫期は300日程度 | 京都市衛生環境研究所 No.016(孵化までの期間)/埼玉県衛生研究所(幼虫期300日程度) |
| 3〜4月 | 幼虫がサナギになる | 京都市衛生環境研究所 No.048(蛹化の時期) |
ここで注意したいのは、この時期がすべて京都市域での記載だという点です。地域によって前後する可能性があり、全国一律の日付ではありません。それでも「成虫を見かけなくなったから終わった」と考えないほうがよいことは、300日という幼虫期の長さから読み取れます。No.016 は成虫について「羽化したのち,交尾,産卵し,屋外に飛び出し,再び産卵することは,ないそうです」とも書いており、姿が見えなくなったあとに残っているのは卵と幼虫のほうです。
一匹見つけたあと、今日できることは?

さいたま市健康科学研究センターが「予防のポイント」として挙げているのは、衣類と食品それぞれについての基本的な手当てです。特別な道具は要りません。
1長期保管の前に洗ってから収納する
同センターは「食べ物や汗などが付着した衣類は食べられやすいため、長期間保管する前にはきれいに洗濯をします」としています。着てから一度も洗わずにしまった衣類がないか、まず確認します。
2収納の中にたまった毛くず・ホコリを取り除く
同センターは「タンスや押入れの中にたまった毛くずなどはエサになりやすいため、定期的に清掃します」と書いています。名古屋市衛生研究所が挙げる床材の継ぎ目や照明器具の内側も、同じ理由で見ておく場所です。
3定期的に虫干しをする
同センターは「幼虫は風通しの悪い場所にいることが多いため、定期的に衣類の虫干しを行います」としています。しまいっぱなしの箱の中身を、一度広げて見る機会をつくるという意味でも有効です。
4乾物は硬い密閉容器に移す
食品側の対策として同センターは「ビニール袋の包装などは容易に食い破られるため、プラスチックや金属製などのしっかりした密閉容器に入れ、高温・多湿を避けて保管します」としています。かつお節や煮干しは、この虫の名前のもとになった餌です。
5防虫剤は種類を確かめてから足す
全国クリーニング生活衛生同業組合連合会「衣類を守るための防虫剤の基礎知識」は、防虫剤には「(1)ピレスロイド系、(2)パラジクロルベンゼン、(3)ナフタリン、(4)しょうのう、の主に4種類があります」とし、「(1)ピレスロイド系は他の薬剤と併用できますが、(2)~(4)は違う種類の薬剤と併用すると、衣類にシミが付いたり、変色する場合があります」と説明しています。いま入っているものが何系かを確かめずに別の種類を足さないでください。
防虫剤の置き方について同連合会は「防虫剤は上から下に拡がるので、衣類の一番上に置くと効果的です」とも書いています。使用量や使用期間は製品ごとに違うため、必ず製品の表示と使用方法に従ってください。なお、同連合会はこのページについて、製品メーカーの協力を得て作成した旨を明記しています。本記事では特定の製品名や順位付けは扱いません。粉物や乾物の側で白い小さな虫が出ている場合は、別の虫の可能性もあります。
カツオブシムシについてよくある質問(FAQ)
※2026年8月時点。本記事の体長・時期・産卵数などの数値は、各機関が公開しているページおよびPDFの記載をそのまま転記したもので、2026年8月時点の内容です。同じ種でも資料によって数値が異なるため、記事内では機関ごとに併記しています。京都市衛生環境研究所の記載は京都市域での観察に基づくもので、地域によって時期は前後します。写真を使わない性質上、この記事だけで種を確定することはできません。確定が必要な場合は、お住まいの自治体の窓口にご相談ください。体の症状に関する判断は行っていません。
まとめ|カツオブシムシは「成虫・幼虫・抜け殻」で見る場所が変わる
カツオブシムシが一匹いたら何匹いるのか——その数字を示した公的資料は見当たりませんでした。代わりに分かったのは、成虫を見たなら屋内での産卵が済んでいる可能性があること(京都市衛生環境研究所 No.048)、繊維を食べるのは幼虫で成虫は花粉を食べること(同 No.016・名古屋市衛生研究所)、そして発生源は衣類だけでなく照明器具内の虫の死骸や床の継ぎ目のホコリにもなること(名古屋市衛生研究所)の3点です。
幼虫の体長はヒメマルで約4mm、ヒメで約9mm(さいたま市健康科学研究センター)。毛が密生していればカツオブシムシ、体が白く頭が褐色で筒状の蓑を背負っていればイガ(東京文化財研究所)。まずは見つけたものが3つのどれだったかを決めて、そこから探す場所を1つに絞ってください。それが、服を全部出す前にできることです。