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離れて暮らしていた家族が一人で亡くなり、警察から連絡が入った。葬儀の段取りと並行して、部屋をどうするかという話が持ち上がる。管理会社からは早めの対応を求められ、親族とも連絡を取り合わなければならない。何から手をつければよいのか、判断がつかないまま日が過ぎていく——そんな状況で検索されているのが「孤独死 遺品整理」という言葉です。
このとき最初に必要なのは、金額の目安ではなく手をつけてよい順番です。警察の手続きが終わるまでは部屋の物を動かせませんし、賃貸なら管理会社や貸主との調整が先に立ちます。相続の話し合いがついていないうちに片付けてしまうと、あとから困ることもあります。
この記事では、当メディア編集部が警察庁・国土交通省・法務省・裁判所・独立行政法人国民生活センターの公表資料と、遺品整理の事業者が公開している情報を調査し、孤独死のあとの遺品整理を進める順番と、段階ごとの連絡先・確認事項を整理しました。清掃そのものの工程や費用の相場は別の記事にまとめてあり、本記事ではその手前の「どう進めるか」に絞っています。


【一言でいうと】孤独死の部屋の遺品整理は「順番」で決まる
結論として、孤独死のあとの遺品整理は①警察の手続きの終了を待つ→②賃貸なら管理会社・貸主へ連絡→③相続の意思を確認する→④清掃が必要かを見極める→⑤遺品整理という順番で進めます。この順番を飛ばして片付けから始めてしまうと、あとから戻せない判断をしてしまうことがあります。
とくに③は重要です。相続放棄を考えている方がいる場合、遺品に手をつける前に弁護士・司法書士へ相談してください。理由はこの記事の後半で説明します。

| 段階 | この段階ですること | 主な連絡先・相談先 |
|---|---|---|
| ①警察の手続き | 部屋の物を動かさず、指示を待つ | 連絡をくれた警察署 |
| ②賃貸の場合 | 契約の扱いと今後の段取りを相談する | 管理会社・貸主(公営住宅は事業主体の窓口) |
| ③相続の意思 | 相続するか放棄するかの方針を確認する | 弁護士・司法書士・家庭裁判所の手続案内 |
| ④清掃の要否 | 特殊清掃が必要な状態かを見てもらう | 特殊清掃を扱う事業者 |
| ⑤遺品整理 | 残す物と処分する物を分けて作業する | 遺品整理を扱う事業者・親族 |
※公的機関の公表資料と各社の公開情報をもとにした一般的な流れです(2026年8月時点)。状況により前後することがあります。
遺品整理を始められるのは、警察の手続きが終わってから

自宅で亡くなった方が発見された場合、まず警察が手続きを行います。警察庁が公開している「警察における死体取扱いの流れ」には、警察への届出・死体発見の報告から始まり、死体の区分に応じて検視や調査が行われ、必要に応じて検査や解剖が実施されたのち、遺族等への死体の引き渡しに至るという流れが図で示されています。
遺族の立場で押さえておきたいのは、この一連の手続きが終わるまで、部屋の中の物を動かしたり持ち出したりはできないという点です。室内が現場として扱われている間は、鍵を預かっていても自由に出入りできるわけではありません。
手続きにどれくらいの日数がかかるかは、公表資料に一律の目安が示されているわけではありません。ここで日数を当て推量で見積もると段取りが崩れますので、連絡をくれた警察署に、いつごろ部屋を使える見込みかを直接確認するのが確実です。そのうえで葬儀の日程と、部屋の対応の日程を並べて考えていきます。
「孤独死」という言葉の意味や、国内でどのくらい起きているのかといった全体像は別の記事にまとめています。落ち着いてからで構いませんので、必要な方はそちらもご覧ください。
賃貸なら、次に動くのは管理会社・貸主への連絡

住まいが賃貸だった場合、警察の手続きと並行して、あるいは終わり次第すぐに、管理会社または貸主へ連絡します。賃貸借契約をどう終わらせるか、室内の家財をいつ運び出すか、原状回復をどう進めるかは、いずれも当事者だけでは決められないためです。
ここで知っておくと話がかみ合いやすいのが、室内に残された家財(残置物)を、貸主の判断だけで処分できるわけではないという点です。国土交通省と法務省は、この問題に対応するために「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定しています。国土交通省の令和3年6月7日の報道発表では、相続人の有無や所在が分からない場合に賃貸借契約の解除や残置物の処理が困難になることがあり、特に単身高齢者に対して賃貸人が建物を貸すことを躊躇する問題が生じている、という背景が説明されています。
この仕組みは、賃借人が生前に受任者と契約を結んでおくもので、賃借人の死亡後に賃貸借契約を解除する代理権を受任者に授与する部分と、残置物の廃棄や指定先への送付を委任する部分の2つで構成されています。国土交通省が公開している同モデル契約条項に係るQ&A(令和7年10月)には、受任者はまずは賃借人の推定相続人のいずれかとするのが望ましいとされ、それが困難な場合には居住支援法人や管理業者などの第三者を受任者とすることを想定していると記されています。同じQ&Aでは、家賃債務保証業者を受任者とした場合、公序良俗に反して無効と判断される可能性もある、との考え方も示されています。
もう一つ、遺族にとって意味が大きい記載があります。同Q&Aでは、残置物の廃棄または換価は、原則として委任者が死亡してから3か月等の一定期間が経過した後に行うこととされていると説明されています。また、契約解除や残置物処理の事務委任契約は賃借人の相続人に承継されるとも書かれています。つまりこの契約があったとしても、家財がすぐに片付けられるわけではなく、相続人の存在が前提に置かれているということです。
「早く片付けてほしい」と言われたときの受け止め方
管理会社や貸主から早めの対応を求められることはあります。次の入居者の募集や、建物全体の管理に関わるためで、無理のない要望であることも多いものです。ただ、こちらにも警察の手続きや相続の話し合いという事情があります。
その場で日程を約束せず、「警察の手続きの状況」と「相続についての親族間の方針」の2点が決まり次第、こちらから連絡しますと伝えるだけでも、話が整理されます。原状回復の費用を誰がどこまで負担するかは契約内容や個別の事情によって変わるため、その場で結論を出さず、契約書と保険の内容を確認したうえで改めて相談してください。
手を付ける前に|相続の意思が決まっていないなら遺品に触らない

この記事でもっともお伝えしたいのがこの節です。相続放棄を検討している方が一人でもいる場合、遺品に手をつける前に弁護士・司法書士へ相談してください。片付けや処分の行為が、相続の判断に影響することがあるためです。
根拠となる条文だけを紹介します。e-Gov法令検索で確認できる民法の第921条は「法定単純承認」という見出しの条文で、その第1号は「相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき」に単純承認をしたものとみなす、と定めています。ただし書きでは、保存行為および第602条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでないとされています。
また同法第915条第1項は、相続人は自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について単純若しくは限定の承認または放棄をしなければならないと定めています。ただしこの期間は、利害関係人または検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができるとも書かれています。
ここで大切なのは、ある片付けの行為が条文でいう「処分」にあたるのか「保存行為」にあたるのかを、当メディアが判断することはできないという点です。物の種類、金銭的な価値、片付けた目的、時期など、個別の事情によって評価が変わり得るためです。だからこそ「迷ったら触る前に相談」が安全側の進め方になります。
相続放棄そのものの手続きについては、裁判所の「相続の放棄の申述」のページに、申述先が被相続人の最後の住所地の家庭裁判所であること、費用が申述人1人につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手であること、必要書類が案内されています。手続きの流れや、放棄したあとに残る責任の話は、ゴミ屋敷状態の住まいを例に別の記事で詳しく扱っていますので、そちらを先に読んでいただくのが早いと思います。
部屋から出てくるもののうち、先に扱いを決めるもの

警察の手続きが終わって室内に入れるようになったら、まとめて袋に入れる前に、扱いを先に決めておきたい物があります。あとから探しても見つからない、という事態を避けるためです。
とくに注意したいのが遺言書です。裁判所の「遺言書の検認」のページには、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人等の立会いの上で開封しなければならないと案内されています。同じページでは、検認が相続人に対し遺言の存在および内容を知らせるとともに、遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名などを明確にして偽造・変造を防止するための手続であり、遺言の有効・無効を判断する手続ではないことも説明されています。
検認の申立人は遺言書の保管者および遺言書を発見した相続人で、申立先は遺言者の最後の住所地の家庭裁判所、費用は遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円分と連絡用の郵便切手とされています。なお同ページには、公正証書による遺言のほか、法務局において保管されている自筆証書遺言に関して交付される「遺言書情報証明書」は検認の必要はない、とも記載されています。
遺言書以外にも、先に分けておきたい物があります。以下は一般的な例で、必要な物は状況によって変わります。
- 封筒や封書に入った書面(開封の可否が分からないものは、そのまま保管して専門家に確認する)
- 預貯金の通帳・キャッシュカード・印鑑
- 保険証券、年金や医療・介護に関する書類
- 賃貸借契約書、公共料金やサブスクリプションの契約書類
- 不動産の権利に関する書類、自動車の車検証
- スマートフォン・パソコンなど、契約情報が残っている機器
- 現金、貴金属、骨とう品など金銭的な価値のありそうな物
このうち現金や貴金属のように価値のある物は相続財産にあたります。持ち帰る・売る・分けるといった判断は、前の節の話に戻って、相続の方針が決まってからにしてください。分けずに保管しておくだけなら、あとからどうにでもなります。
特殊清掃と遺品整理はどちらが先か

順番を尋ねられることの多い組み合わせです。ひとことで言えば、室内に汚損があって特殊清掃が必要な状態なら清掃が先、そうでなければ遺品整理から進めるのが基本的な考え方になります。汚損が残ったままでは、室内で遺品を一つずつ確認していく作業に取りかかりにくいためです。
ただし実際には、きれいに二分できるわけではありません。汚損のある範囲が限られていれば、その周辺だけ先に処置して、離れた部屋の遺品整理は並行して進めるという組み立てもあります。逆に、貴重品の捜索を先に済ませてから清掃に入る段取りを取る事業者もあります。どちらが先になるかは室内の状態と事業者の作業計画で変わるため、見積もりの段階で順番と作業範囲を確認するのが確実です。
依頼先についても、清掃と整理の両方を一社で引き受ける事業者と、清掃を専門にしていて整理は別の事業者に引き継ぐ事業者があります。どちらが良いという話ではなく、どこまでを誰がやるのかが見積書で分かれているかを見てください。境目があいまいなまま作業が始まると、あとから追加の請求になりやすい部分です。
清掃で実際に何をするのか、費用がどのくらいの幅になるのかは、それぞれ専用の記事にまとめてあります。本記事では順番の話に絞っていますので、中身が知りたい方はこちらへどうぞ。
依頼先の分け方と、見積もりの前に確認する許可

遺品整理を頼むとき、事業者が「清掃」「片付けと運搬」「買取」のどこまでを自社で行うのかによって、確認する許可が変わります。独立行政法人国民生活センターが2025年10月30日に公表した見守り新鮮情報 第525号「遺品整理を頼むときは、事業者選びは慎重に」には、遺族から寄せられた事例と、確認すべき点が具体的に書かれています。
一般廃棄物処理業の許可(または市町村の委託)
同資料には、遺品や住まいの不用品を廃棄物として収集・運搬する事業者は、市町村からの委託業者であるか、市町村長から「一般廃棄物処理業の許可」を受けている必要があると明記されています。さらに、無許可事業者による不用品の処分は法律違反となり、不法投棄などに繋がりかねないこと、お住まいの市町村の窓口に照会するなどして事業者選びは慎重にすることが案内されています。
家庭から出る不用品は、産業廃棄物収集運搬業の許可や古物商許可では運べません。この点は電話口では分かりにくいので、市町村の窓口に問い合わせるのがいちばん確実です。個別の事業者について当メディアが許可の有無を判断することはできませんので、確認は必ずご自身で行ってください。
買取を伴うなら古物商許可
同じ資料には、遺品を買い取る事業者は「古物商の許可」が必要であり、買い取ってもらう際には「古物商許可証」や「行商従業者証」を確認することが案内されています。作業当日に「これは買い取れます」と口頭で提案される場面がありますが、その場で決める必要はありません。品目と金額を書面に残してもらってから判断してください。
遺品整理士は民間資格
遺品整理の事業者が掲げていることのある「遺品整理士」は、一般財団法人遺品整理士認定協会が認定する民間の資格です。国家資格ではありませんので、資格の有無だけで判断せず、前の2つの許可とあわせて見てください。
そのうえで、第525号には契約時の確認事項も挙げられています。作業内容や料金は事業者によって様々であるため必ず複数の事業者から見積もりをとって契約内容や料金を比較すること、契約の際には作業日・具体的な作業内容・料金・支払方法・解約料などを確認すること、作業時には思いがけない追加料金を請求されることもあるので事前に確認しておくこと、という3点です。困ったときの相談先として、消費者ホットライン188も案内されています。
業者選びで見るべき項目をもっと細かく知りたい場合は、確認項目を1つずつ解説した記事を用意しています。
作業日までに遺族側でやっておくこと

依頼先が決まったら、作業日までに遺族側で決めておくと当日が滞りません。国民生活センターの第525号でも、残しておく遺品と処分する遺品を明確に分け、作業時はできるだけ立ち会うようにと案内されています。実際、当日いちばん時間を取られるのは「これは残すのか」という確認のやり取りです。
1残す物のリストを親族間で共有しておく
写真・アルバム・手紙・仏具・形見にしたい物など、残したい物を先に言葉にして共有します。当日は判断が難しくなりますので、事前に決めておくほど気持ちの負担が減ります。
2立ち会う人と時間帯を決める
全日程に立ち会えない場合でも、仕分けが進む時間帯だけでも顔を出せると安心です。難しいときは、判断に迷った物は捨てずに残しておいてもらう取り決めを、事前に書面で交わしておきます。
3搬出の経路と近隣への配慮を確認する
集合住宅ではエレベーターの使用、養生、駐車場所などの調整が必要になることがあります。管理会社に作業日を伝え、必要な手続きがないか確認しておきます。
4見積書の内訳を作業前に確認する
作業範囲、追加料金が発生する条件、解約料、支払方法を、作業が始まる前にもう一度目で追います。当日の口頭のやり取りだけで進めないのが、あとで揉めないためのコツです。
なお、汚損がなく物量も多くない部屋であれば、親族だけで進めることもできます。その場合の手順や必要な道具は別の記事にまとめていますので、依頼するかどうかを決める前に一度目を通してみてください。無理をせず、途中から事業者に引き継ぐ形でも構いません。
作業や片付けの最中に体調の不安を感じたときは、我慢せず作業を中断し、医療機関にご相談ください。気持ちの面でつらいときも同じです。無理に一日で終わらせる必要はありません。
孤独死の遺品整理についてよくある質問(FAQ)
※本記事は公的機関の公表資料および各社の公開情報をもとにした一般的な整理であり、個別の事案についての法律上の判断や助言を行うものではありません。相続・賃貸借契約・費用負担については、弁護士・司法書士・管理会社・保険会社など、それぞれの窓口にご確認ください。記載内容は2026年8月時点のものです。
まとめ
孤独死のあとの遺品整理は、①警察の手続きの終了を待つ、②賃貸なら管理会社・貸主へ連絡する、③相続の意思を確認する、④清掃が必要かを見極める、⑤遺品整理、という順番で進みます。急かされる場面もありますが、順番を守ることが結果的にいちばん早い進め方になります。

依頼先を選ぶときは、廃棄物の収集・運搬について市町村からの委託業者か市町村長の「一般廃棄物処理業の許可」を受けているか、買取を伴うなら古物商許可があるかを確認し、複数社から同じ条件で見積もりを取ってください。残す物と処分する物を先に分け、できるだけ立ち会うことも、国民生活センターが案内している基本です。
最後にもう一度だけ。相続放棄を検討している方がいるなら、遺品に手をつける前に弁護士・司法書士へ相談してください。片付けは、方針が決まってからでも間に合います。