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夜、明かりを消して静かになった頃に、天井裏や軒下から「キー」という細い声や、何かがバタバタとぶつかるような音が聞こえてくる——。ネズミにしては音の場所が高い気がするし、かといって正体が分からないまま眠るのも落ち着かない、という方は少なくありません。
コウモリかどうかを確かめたいとき、いちばんの落とし穴は「音が小さいから、たいしたことはない」と判断してしまうことです。コウモリが飛びながら出している音の多くは超音波で、人の耳にはほとんど届かない音域にあります。この記事では、当メディア編集部が自治体・研究機関・法令の公開資料を調べ、鳴き声の記載・音がする時間帯と季節・他の動物との聞き分け・フンの位置という4つの手がかりから、天井裏の音の正体を絞り込む方法を整理しました。追い出しの手順や費用には踏み込まず、「確かめる」ところまでに絞ってお伝えします。


- 01【一言でいうと】コウモリの鳴き声は「キー・キー」、ただし多くは人に聞こえない
- 02コウモリの声は2種類|人に聞こえる鳴き声と、聞こえない超音波
- 03音がする時間帯と季節|日没後10〜30分と、冬に静かになる理由
- 04天井裏の音の聞き分け|ネズミ・イタチ・ハクビシンとの早見表
- 05鳴き声以外のサイン|フンが落ちている「位置」で見当がつく
- 06コウモリが来る家の共通点|ねぐらになる場所と、入り口になるすき間
- 07「天敵に追い払ってもらう」は現実的か
- 08確かめるときにやってはいけないこと|法律と安全の線引き
- 09正体が分かったあとにできること|自分の範囲と相談先
- 10コウモリの鳴き声についてよくある質問(FAQ)
- 11まとめ
【一言でいうと】コウモリの鳴き声は「キー・キー」、ただし多くは人に聞こえない

結論からお伝えすると、家屋で問題になるコウモリ(アブラコウモリ)について、行政の資料に載っている音の表現は「キー・キー鳴く、その鳴き声」と「バタバタと飛ぶ羽音」の2つです。群馬県前橋市が公開している案内が、生活被害の内容としてこの2つを挙げています。
一方で、コウモリが飛びながら発している超音波は、人の耳ではふつう聞き取れません。まずは「聞こえる音」と「聞こえない音」の区別から確認してみましょう。
| 音の種類 | 公開資料に載っている表現 | 気づきやすい場所 | 人に聞こえるか |
|---|---|---|---|
| 鳴き声 | 「(天井裏等で)キー・キー鳴く、その鳴き声」(前橋市) | 天井裏・戸袋・軒下 | 聞こえる |
| 羽音 | 「バタバタと飛ぶ羽音がうるさい」(前橋市) | 出入口の周辺・軒下 | 聞こえる |
| 超音波 | 「超音波(エコーロケーション・コール)を発し、その反響により…周囲の環境を認識」(前橋市) | 飛んでいる間ずっと | ふつうは聞こえない |
※音の記載は前橋市「コウモリについて 市街地にも姿を現します」によるもので、この音ならコウモリだと確定できるものではありません(2026年8月時点)。
コウモリの声は2種類|人に聞こえる鳴き声と、聞こえない超音波
「音が小さいから数は少ないはず」と考えたくなりますが、そこは切り分けが必要です。コウモリが暗闇を飛ぶために使っている音は、そもそも人の聴力の範囲の外側にあるからです。

人が聴ける範囲は20Hz〜20kHz、コウモリの探索音は40kHz付近
環境省が公開している低周波音の資料は、用語の定義として「一般に人が聴くことができる音の周波数範囲は20Hz~20kHzとされており」と説明しています(出典:環境省「低周波音防止対策事例集」)。この上限より高い音が、いわゆる超音波です。
コウモリ側の数字も見てみます。同志社大学生命医科学部の飛龍志津子氏による解説資料は、コウモリとイルカのセンシング信号について「超音波帯域(>20kHz)を用いている」と述べたうえで、日本で最もよく見られるアブラコウモリは数ミリ秒ほどの短い周波数変調音を口から発し、獲物を探索する際などには40kHz付近を中心とした比較的長い信号を発すると説明しています(出典:飛龍志津子「コウモリの生物ソナーに学ぶセンシング技術」)。人の耳の上限が20kHzで、探索音の中心が40kHz付近ですから、聞こえないのは当然ということになります。
静かになっても「いなくなった」とは限らない
この構造を知っておくと、判断を誤りにくくなります。人が耳で拾えるのは、天井裏で仲間とやり取りするときの声や、狭い場所を出入りするときの羽音といった、いわば副次的な音だけです。声が聞こえない日があっても、それはコウモリがいない証拠にはなりません。
逆に言えば、聞こえた音は貴重な手がかりです。何時ごろ、家のどのあたりから、どのくらいの長さで聞こえたのかをメモに残しておくと、あとで出入口を探すときにも、業者や自治体に相談するときにも役立ちます。スマートフォンの録音は、聞こえる音域の記録として使えます。
音がする時間帯と季節|日没後10〜30分と、冬に静かになる理由

音の正体を絞るうえで、鳴き声そのものより手堅い材料が「いつ聞こえるか」です。コウモリの行動時間には、資料に書かれた目安があります。
日没後10〜30分が、いちばん分かりやすい時間帯
国立研究開発法人 国立環境研究所の侵入生物データベースは、アブラコウモリの生態的特性として「夜行性.日没後10~30分後に採餌を行う」と記載しています。さらに「5~8月には日の出前にも採餌を行うが,10月は日没後のみ」とあり、季節によって出入りする時間帯そのものが変わることが分かります(出典:国立環境研究所 侵入生物データベース「アブラコウモリ」)。
つまり、確かめるなら日没から30分ほどの時間帯に、家から少し離れて外から様子を見るのが理にかなっています。夏に「明け方にも音がする」と感じるのは、この時期だけ日の出前にも餌を採りに出るという記載と符合します。
冬に音が止まるのは、いなくなったからとは限らない
前橋市の案内では、アブラコウモリの活動期間を「春~秋(夕暮れ)、冬は冬眠(11月頃~4月頃)」と整理しています。11月ごろから音が減り、春先に急に戻ってくるように感じるのは、この周期によるものと考えられます。
もうひとつ、季節の注意点があります。同じ資料は出産期を「初夏(7月頃)」、「1回に2~3頭出産」としています。初夏から夏にかけては、飛べない子が屋根裏に残っている可能性がある時期です。この時期に出入口をふさいでしまうと、中に取り残される事態を招きかねません。音の変化が気になっても、封鎖の判断は時期を踏まえて慎重に行う必要があります(具体的な作業の進め方は後述の関連記事をご覧ください)。
天井裏の音の聞き分け|ネズミ・イタチ・ハクビシンとの早見表

天井裏に入る動物はコウモリだけではありません。ここで大切なのは、鳴き声の擬音が公開資料に載っている動物は限られているという事実です。ネットで見かける擬音の多くは出典がはっきりしないため、ここでは行政資料に実際に書かれている表現だけを並べます。
| 動物 | 公開資料にある音の記載 | 体の大きさ・通れるすき間 | 出典 |
|---|---|---|---|
| コウモリ(アブラコウモリ) | 「キー・キー鳴く」「バタバタと飛ぶ羽音」 | 体長3〜5cm・体重5〜10g(成獣) | 前橋市 |
| ハクビシン | 「キーキーキーという鳴き声」 | 頭胴長48〜60cm・8cm四方程度のすき間をくぐり抜けられる | 西東京市 |
| アライグマ | 「キュルキュルキュルいう鳴き声」 | 頭胴長40〜60cm・体重5〜7kg程度 | 西東京市 |
| イタチ | 鳴き声の擬音は見当たらず「天井裏を走り回ってうるさい」と記載 | 体長30〜40cm・3cm足らずのすき間で侵入 | 北九州市 |
| ネズミ | 今回調べた公的資料では、鳴き声の擬音の記載を確認できなかった | — | — |
出典:前橋市/西東京市「アライグマ・ハクビシン防除マニュアル」(令和8年4月改定)/北九州市「よくある相談と対策【イタチ】」(いずれも2026年8月時点)
表を見比べると、コウモリと他の動物の差は擬音よりも体の大きさと音の重さに出ることが分かります。ハクビシンやアライグマは体重5〜7kg程度、イタチも体長30〜40cmですから、天井板を踏む「重さのある足音」として伝わります。手のひらに乗るコウモリの音は、走り回る足音というより、こすれる音や短い羽音として感じられる傾向があります。
それぞれの動物ごとの見分け方は、専用の記事で詳しく扱っています。音の印象が「重い」「走り回っている」と感じるなら、下の記事のほうが近いかもしれません。
鳴き声以外のサイン|フンが落ちている「位置」で見当がつく

音は毎晩聞こえるとは限らないため、確認の主役はむしろ物的なサインです。なかでもフンが落ちている場所は、出入口の真下を教えてくれる手がかりになります。
「軒先や屋根の下」に落ちているかどうか
公益社団法人東京都ペストコントロール協会は、コウモリとネズミの糞の違いを説明したページで、コウモリの糞について「5~10mmで夏期に軒先や屋根の下に落ちていることが多い」と記載しています。また「昆虫しか食べないためネズミの糞に比べてもろいのが特徴」ともされています(出典:公益社団法人東京都ペストコントロール協会「コウモリとネズミの糞の違い」)。
ここで注目したいのは「どこに落ちているか」です。屋内の食品まわりや配線の近くに散らばっているならネズミの可能性が上がり、玄関先・ベランダ・軒下といった外側の決まった一点に毎朝たまるのであれば、その真上にすき間がないかを見上げてみる価値があります。同協会のページは、住みつかれた場合に天井裏に糞尿が堆積し、多いときには100頭のコロニーになることもあると説明しています。
確認するときは素手で触らない
茨城県つくばみらい市は、野生のコウモリには寄生虫や感染症の原因となる菌やウイルスが付着している恐れがあるため、素手で触らないよう呼びかけています(出典:つくばみらい市「コウモリを見かけたら」)。前橋市も、国内でコウモリを直接的な原因として発症した事例は現在のところないとしたうえで、海外ではフンに含まれるカビ菌を吸い込んで感染したケースが報告されていると記しています。
確認の段階では、使い捨ての手袋とマスクを着け、量が多い場所には近づかない程度にとどめてください。体調に不安を感じたときは自己判断せず、医療機関にご相談ください。ベランダの汚れの落とし方は、下の記事で扱っています。
コウモリが来る家の共通点|ねぐらになる場所と、入り口になるすき間

「なぜうちなのか」という疑問には、資料に書かれた条件から答えられます。前橋市は、アブラコウモリの生息場所として屋根裏・戸袋・換気口・軒下・瓦の下・高架下・倉庫内を挙げています。音の出どころを探すときは、まずこの並びを疑うのが早道です。
同じ資料は、家に入り込むときのポイントとして「窓やドアの隙間」「換気口や通気(風)口」「エアコンと室外機を繋ぐ配管用の隙間」「屋根と壁の隙間」の4か所を挙げています。いずれも日常的に目が届きにくい場所で、シャッターの戸袋のようにふだん開け閉めしない部分ほど気づかれないまま使われていることがあります。
餌の条件も関係します。前橋市の資料では食べ物を「昆虫(カ・ユスリカ・ヨコバイ)など、一日(夜)に300~500匹捕食」と説明しており、国立環境研究所のデータベースは生息環境を「建造物や洞窟などをねぐらとし,公園・農地・河川・ため池など開けた場所で採餌」と整理しています。近くに川や池、まとまった緑地があれば、採餌の場所が近いということになります。
なお「夜間の照明に虫が集まるからコウモリが来る」という説明もよく見かけますが、今回調べた範囲では、これを裏づける自治体・研究機関の記載は見当たりませんでした。確実なのは、ねぐらになる場所とすき間が家側にあるかどうかです。
「天敵に追い払ってもらう」は現実的か

「コウモリの天敵」を調べる方が多いので、ここは正面からお答えします。天敵を利用して家からコウモリを追い払う方法について、その効果を確かめた公的機関・研究機関の資料は、今回の調査では見当たりませんでした。「フクロウを置けばよい」といった話は目にしますが、根拠となる公開資料にはたどり着けていません。
参考になるのは、行政が実際に何を挙げているかです。前橋市の資料でアブラコウモリの「嫌いなもの」として書かれているのは、光・ハッカ・トウガラシの3つで、天敵は挙げられていません。行政が住民に案内しているのは、追い払いと侵入予防という物理的な対処のほうです。
加えて、猛禽類やヘビといった野生動物を呼び寄せようとする発想には別の問題もあります。フクロウなどの鳥類は、コウモリと同じく鳥獣保護管理法の対象で、人が自由に扱える相手ではありません。家に置く模型についても、効果を示す公開資料は確認できませんでした。現実的な線は、次章以降の「確認して、追い出して、ふさぐ」という順番になります。
確かめるときにやってはいけないこと|法律と安全の線引き

正体を確かめようとして、かえって法律に触れてしまうことがあります。ここは先に押さえておきましょう。
コウモリは鳥獣保護管理法の対象で、捕獲は許可制
環境省は、鳥獣保護管理法でいう「鳥獣」を「鳥類又は哺乳類に属する野生動物」と定義しています。そのうえで、法の対象外となるのは、ニホンアシカ・アザラシ5種・ジュゴン以外の海棲哺乳類と、いえねずみ類3種だけだと説明しています(出典:環境省「鳥獣保護管理法の概要」)。哺乳類の野生動物であるコウモリは、この法律が守っている側にあたります。
捕獲についても、環境大臣または都道府県知事の許可を受けるか狩猟者登録による場合を除き、原則として禁止されています(出典:環境省「捕獲許可制度の概要」)。同法第83条は、罰則を「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」と定めています(出典:e-Gov法令検索「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」)。なお、自治体のページには法改正前の古い表記が残っている場合がありますが、現行の条文は拘禁刑です。
屋根に上らない、素手で触らない
法律とは別に、安全面の線引きもあります。つくばみらい市は、対策の説明の中で高所である場合には危険なので専門業者への依頼も検討するよう書き添えています。脚立で軒先をのぞき込む、屋根に上って探すといった行為は、転落の危険がある作業です。
確認の段階でできるのは、地上から見上げる・日没後に外から出入りを見る・フンの位置を記録する、というところまでです。捕まえる、たたく、袋に入れるといった行為には進まないでください。部屋に入り込んでしまった個体についても、つくばみらい市は素手で触らないよう案内しています。
正体が分かったあとにできること|自分の範囲と相談先

コウモリらしいと見当がついたら、次の一歩は限られています。つくばみらい市は、市では駆除や捕獲等を行っておらず、追い払いや侵入予防策は自身または業者などで対応してほしい、費用は自己負担になると案内しています。多くの自治体が同じ考え方で、捕獲は許可の話、追い出しと封鎖は住まい手側の作業という整理です。
具体的な追い出しの進め方、出入口のふさぎ方、業者に頼んだ場合の費用の目安については、下の記事にまとめています。本記事は「確かめる」段階までを担当しています。
- 出入口が高い場所にある・屋根に上らないと確認できない → 業者へ相談
- フンが屋根裏一面に広がっている・量が多い → 清掃も含めて業者へ相談
- 初夏から夏にかけてで、飛べない子がいる可能性がある → 時期の判断を含めて業者・自治体へ相談
- 捕まえる必要があると感じている → 自治体の担当窓口へ(許可の相談)
- 賃貸・分譲の集合住宅 → まず管理会社・管理組合へ連絡
相談の前に、次の3つを手元にそろえておくと話が早く進みます。①音が聞こえた時刻と日付のメモ、②フンが落ちている場所の写真、③外から見て気になったすき間の位置。どれも確認の段階で集められるもので、見積もりの精度にも関わります。
コウモリの鳴き声についてよくある質問(FAQ)
※本記事の鳴き声・生態・法令に関する記載は、各自治体・研究機関の公開資料および法令(2026年8月時点)に基づく一般的な情報です。音の聞こえ方には建物の構造や個人差があり、正体を断定するものではありません。捕獲の可否や個別の対応は、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。体調に不安がある場合は医療機関にご相談ください。
まとめ
天井裏の音がコウモリかどうかは、鳴き声だけでは決められません。最後に、確かめるための5つのポイントを振り返ります。
- 行政資料にある表現は「キー・キー鳴く」と「バタバタと飛ぶ羽音」。飛行中の超音波は人の可聴範囲(20Hz〜20kHz)の外側にある
- 確かめるなら日没後10〜30分。夏は明け方にも音がすることがあり、冬は冬眠期にあたる
- 他の動物との差は擬音より体の大きさと足音の重さに出る。重い足音ならハクビシン・アライグマ・イタチの可能性も
- フンが軒先や屋根の下の一点にたまるなら、その真上のすき間を疑う。素手では触らない
- コウモリは鳥獣保護管理法の対象で、捕獲は許可制。天敵で追い払う方法の効果を示す公的資料は見当たらなかった
正体の見当がついたら、次は追い出しと出入口をふさぐ段階です。時期の選び方や費用の目安は関連記事にまとめていますので、無理に自分で高い場所へ上がらず、安全を最優先に進めてください。