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久しぶりに実家へ帰省したら、廊下まで物があふれ、足の踏み場もない状態になっていた——。親の暮らす家が「ゴミ屋敷」と呼ばれるような状態になっているのを目にすると、驚きと心配、そして「どうしてこんなことに」という戸惑いが一度に押し寄せます。
「片付けてよ」と言えば親は怒り、かといって勝手に捨てるわけにもいかない。誰に相談すればいいのかも分からず、一人でストレスを抱えている方は少なくありません。
この記事では、当メディア編集部が環境省・厚生労働省・総務省・自治体の公的資料を調査したうえで、実家がゴミ屋敷になったときに子世代が取るべき対応を整理しました。親を責めない声かけのコツ、相談できる公的窓口、段階的な片付けの進め方まで、順を追って解説します。


【結論】実家がゴミ屋敷になったら|責めずに段階を踏んで進める
実家がゴミ屋敷になったときの対応は、「責めない・勝手に捨てない・一人で抱えない」の3原則が出発点です。この3つを守ったうえで、声かけで小さな合意を作り、公的な窓口に相談しながら、狭い範囲から一緒に片付けていくのが基本の流れになります。

| 場面 | やりたいこと | 避けたいこと |
|---|---|---|
| 声かけ | 安全や健康への「心配」を主語にして伝える | 責める・命令する・比較する |
| 片付け | 親と一緒に、玄関や廊下など狭い範囲から | 留守中に勝手に捨てる・一気に全部やろうとする |
| 困ったとき | 地域包括支援センターや自治体窓口に相談する | 家族だけで抱え込み、疲れ果ててしまう |
環境省が全国1,741市区町村に行った調査では、平成30年度〜令和4年度の5年間にごみ屋敷事案を認知していた市区町村は661(約38.0%)にのぼり、件数は5,224件と報告されています(出典:環境省「令和4年度『ごみ屋敷』に関する調査報告書」)。実家のゴミ屋敷は決して珍しい問題ではなく、あなたの家庭だけで起きていることでもありません。
同じ調査では、認知された事案のうち約49.5%が改善したことや、自治体がごみ屋敷を把握するきっかけとして「原因者の親族等からの相談」が上位に挙がっていることも示されています。家族が適切な窓口につながることが、解決に向けた現実的な入り口だといえます。
なぜ実家がゴミ屋敷になるのか|親を責める前に知りたい背景

「昔はきれい好きだったのに、だらしなくなった」と感じるかもしれませんが、家がため込まれていく背景には、本人の性格だけでは説明できない事情があることがほとんどです。加齢で体力や気力が落ちると、重いごみをまとめて集積所まで運ぶ作業そのものが大きな負担になります。配偶者との死別や退職で人との関わりが減り、家の中の変化に気づいてくれる人がいなくなることも影響します。
実際に、ごみ屋敷対策条例を持つ横浜市は、背景に「加齢や疾病による身体機能、判断能力の低下、経済的困窮、地域からの孤立など、様々な課題」があることを踏まえ、福祉的観点から寄り添った支援を行うことを条例の基本方針に掲げています(出典:横浜市「不良な生活環境の解消・発生防止」)。行政も「本人を叱って解決する問題」とは捉えていないのです。
また、総務省行政評価局の調査報告書(令和6年8月)には、健康や生活環境が悪化しても支援を受け入れることが難しい「セルフ・ネグレクト」の状態にある居住者の事例が報告されています(出典:総務省「『ごみ屋敷』対策に関する調査 結果報告書」)。物を捨てられない背景に「ためこみ症」と呼ばれる状態が関わるという指摘もありますが、いずれも家族が病名を当てはめて決めつけてよいものではありません。気になる場合は、後述する公的窓口や医療機関に相談してください。
ゴミ屋敷とためこみの背景、相談できる窓口については、次の記事で詳しく解説しています。
親を責めない声かけ・説得のコツ

最初の声かけで関係がこじれてしまうと、その後の片付けも相談もすべてが難しくなります。声かけの目的は「片付けさせること」ではなく、「一緒に考える入り口を作ること」だと捉え直してみてください。長年の暮らしぶりを否定される言葉は、親にとって人格を否定されたのと同じように響きます。
言い方を少し変えるだけで、親の受け取り方は大きく変わります。
- NG「なんでこんなに汚くしてるの」→ OK「久しぶりに来たら、ちょっと心配になったよ」
- NG「全部捨てるからね」→ OK「つまずくと危ないから、廊下だけ一緒に通れるようにしない?」
- NG「近所に恥ずかしいでしょ」→ OK「暑い時期だし、台所まわりだけきれいにしておこうか」
コツは3つあります。①「汚い」ではなく安全や健康への心配を主語にする、②「全部」ではなく廊下・台所など小さな範囲を具体的に提案する、③一度の会話で決めようとせず、帰省のたびに少しずつ話す。この3つを意識すると、対立ではなく相談の形に近づいていきます。
勝手に捨てるのはNG|片付けを強行しないほうがいい理由

「話しても無駄だから、親の留守中に業者を呼んで全部処分してしまおう」と考えたくなる気持ちは自然なものです。しかし、実家にある物の持ち主はあくまで親です。本人の了解なく処分すれば、たとえ家族でも深刻なもめごとに発展しかねません。トラブルになってしまった場合の対応は個別性が高いため、弁護士などの専門家に相談してください。
法律面を別にしても、強行には実害があります。信頼関係が壊れて以後の話し合いを一切拒まれてしまうこと、片付いても本人の納得がないため再び物がたまりやすいこと、そして通帳・権利証・形見の品など大切な物を誤って処分してしまう恐れがあることです。急がば回れで、合意を作りながら進めるほうが結果的に早く進みます。
親と相談しながら実家の物を整理していく基本的な進め方は、次の記事でまとめています。
一人で抱えない|地域包括支援センターなど相談できる窓口

実は、親の説得や片付けが進んでいなくても、先に相談してかまいません。親が65歳以上なら、第一の相談先は地域包括支援センターです。厚生労働省によると、地域包括支援センターは高齢者の総合相談や権利擁護、介護予防に必要な援助などを行って高齢者を包括的に支援する機関で、市町村が設置しており、全国に5,487か所あります(令和7年4月末現在。支所を含めると7,374か所)。厚生労働省のページには都道府県ごとのセンター一覧へのリンクも掲載されています(出典:厚生労働省「地域包括ケアシステム」)。
窓口は親の住まいのある市区町村側にあります。「実家の自治体名+地域包括支援センター」で検索するか、上記ページの一覧から探し、まずは電話で「親の家が物であふれていて心配」という状況を伝えてみてください。
ごみ屋敷の状態そのものについては、自治体が専用の窓口や支援制度を設けている場合があります。たとえば横浜市では条例に基づき、いわゆる「ごみ屋敷」状態に関する相談を各区の福祉保健課が受け付け、本人の同意のうえで市がごみの排出を支援する仕組みも用意されています。窓口の名称や支援の内容は自治体によって異なるため、「実家の自治体名+ごみ屋敷 相談」で確認するとスムーズです。
| 窓口 | 相談できることの例 |
|---|---|
| 地域包括支援センター | 高齢の親の暮らし全般の総合相談・介護予防に関する援助など |
| 自治体の福祉・環境部署 | ごみ屋敷状態に関する相談(支援の内容・窓口名は自治体により異なる) |
| 医療機関 | 親の心身の不調が心配なとき(家族で判断せず専門家へ) |
相談したからといって、すぐに行政が家に立ち入るわけではありません。「家族だけで抱えない体制」を作ることが、長丁場になりやすい実家の片付けを続けるいちばんの支えになります。
実家のゴミ屋敷を片付ける段階的な進め方

親との間に「少しなら一緒にやってもいい」という空気ができたら、いよいよ片付けです。ポイントは、一気に終わらせようとせず、親のペースに合わせて段階的に進めることです。
1親と一緒に家の中の危険を確認する
まずは片付けではなく「安全確認」から入ります。コンロまわりの燃えやすい物、玄関までの避難経路、つまずきやすい床の物を親と一緒に見て回りましょう。安全の話は親も同意しやすく、自然な出発点になります。
2玄関・廊下・水回りなど狭い範囲から始める
最初に手をつけるのは、玄関・廊下・台所などの生活と安全に直結する場所です。「今日はここだけ」と範囲を区切ると親の負担感が減り、暮らしが楽になる変化を実感してもらえます。
3明らかなゴミから袋へ、迷う物は親の判断を尊重する
空き容器や賞味期限切れの食品など、誰が見てもゴミと分かる物から袋に入れます。迷う物は無理に決めさせず「保留箱」へ。思い出の品への判断を急かさないことが、次回につながる信頼を守ります。
4ゴミ出しは実家の自治体ルールに合わせる
分別区分や粗大ごみの事前申込みの要否は、自分の住む街と実家とで異なることが多いものです。実家の自治体の公式サイトでルールを確認し、帰省の日程と収集日を合わせて計画的に出しましょう。
5片付けた後も「保てる仕組み」を作る
片付けはゴールではなく再スタートです。定期的な電話や帰省時の見直しに加え、自治体によっては高齢者向けのごみ出し支援制度もあります。人の関わりを増やすことが、再びため込まない環境づくりになります。
家族だけで難しいときは業者に相談する

物が天井近くまで積み上がっている、複数の部屋が埋まっている、害虫や悪臭が発生している、遠方で通いきれない、家の修繕や退去など期限が迫っている——。こうした状況では、家族の手だけで片付けるのは現実的ではありません。親の了解を得たうえで、専門業者に依頼することも前向きな選択肢です。
注意したいのが業者選びです。実家の片付けでは、離れて暮らす家族がネット広告や電話だけで手早く業者を決めてしまいがちですが、家庭から出るごみを有料で収集運搬できるのは、市区町村の一般廃棄物処理業の許可を受けた業者(または市区町村の委託先)に限られ、環境省も無許可の回収業者を利用しないよう呼びかけています(出典:環境省「廃棄物の処分に無許可の回収業者を利用しないでください!」)。契約前に、実家のある市区町村の公式サイトで許可業者の一覧を確かめる、業者に許可の有無と内容を尋ねる、というひと手間が、不法投棄や高額請求といったトラブルを避ける近道です。
費用は間取り・物の量・搬出のしやすさで大きく変わるため、複数社から見積もりを取って比べるのが前提になります。許可の確認方法を含めた業者の選び方と依頼の流れは、次の記事で詳しく解説しています。
親が施設に入居した後など、誰も住んでいない実家を片付ける場合は、空き家ならではの手順や注意点があります。こちらの記事を参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
※本記事で紹介した統計・制度・相談窓口の情報は、執筆時点(2026年7月)の各公的機関の公表資料に基づいています。支援の内容や窓口は自治体により異なるため、最新の情報は各公式サイト・窓口でご確認ください。
まとめ
実家がゴミ屋敷になったら、「責めない・勝手に捨てない・一人で抱えない」の3原則を思い出してください。家がため込まれる背景には、加齢や孤立などその人なりの事情があり、叱っても解決には近づきません。心配を主語にした声かけで小さな合意を作り、地域包括支援センターなどの窓口を味方につけながら、狭い範囲から一緒に片付けていきましょう。
今日できる一歩は、実家のある自治体の相談窓口を調べておくことと、次に会うときに「責める言葉」ではなく「心配している気持ち」を伝えることです。家族だけで難しいと感じたら、許可を確認したうえで専門業者の力を借りることも、親の暮らしを守る立派な選択です。